184 / 291
素直になりたくて(7)
しおりを挟む
「説明をお願いします師団長。何をなさっているんですか?」
ルパートが憮然とした表情で質問を繰り返した。ルービックは気まずそうに答えた。
「あー……、別に意識してデートを覗こうとした訳じゃないぞ? 私とエドガーは昼飯のついでに、マシューに街を案内してもらっている最中だったんだ。おまえとロックウィーナにここで再会したのは完全に偶然だから。キスの瞬間に立ち会ってしまったのも。ちょっとした運命の悪戯というヤツだな」
ぎゃっはぁ! キスする直前ってバレてたぁ!!
デートを知り合いの誰かに見られる危険は覚悟していた。職業柄、私達はたくさんの冒険者達と顔馴染みになるから。でも聖騎士とエンカウントするとは予想していなかったよ。
私はあわあわして、ルパートは低い声で三度目の質問をした。
「……王都に戻ったはずの皆さんと、何故ここフィースノーの街で遭遇することになったのか、俺はそこをお聞きしたいんです」
「キスを邪魔したことに対しては怒ってないのか?」
「怒ってますよ。怒ってますけれど、まずは状況を確認したいので」
「私情よりも状況把握を優先させるか。流石だなルパート、私が目をかけた男だけのことはある」
「そういうのはいいんで、早く質問に答えて下さい」
「うむ、それがだな……」
ルービックは声を潜めはしたものの、あっけらかんと答えた。
「現在我々は暗殺者から逃亡中なんだ」
「は!?」
「いやまいったまいった、ホント大変」
本当に困ってます? 「ファンの女性にしつこく追っかけされてキッツ」みたいなノリで言ってるけど。
当然事態が掴めずに目をパチクリさせたルパートと私。
「あの、お話がまるで見えてこないのですが」
「ですよね~」
キスを邪魔した戦犯・マシューがヒョイと、ルービックとルパートの間に身体をねじ込ませた。
「詳しくご説明したいので、ルパート先輩とロックウィーナも一緒に食事しましょう。完全個室の落ち着いた店に予約を入れてあるんです。二人くらい増えても大丈夫ですから」
「いや、俺とコイツはさっき食ったばっかなので」
「ほう、混み合う前に済ませたか。無駄のない行動、流石だなルパート」
「師団長、いちいち褒めて下さらなくていいんで」
はは。ルービックはかなりルパートを気に入っているようだ。年の離れた弟みたいな感覚なのかな。
「ね、飲み物だけでも一緒に。ご相談したいことが有るんですよ~」
「すまない二人とも。数時間だけ付き合ってもらえないだろうか?」
マシューの背後からエドガーが一歩前に出てきた。真面目な彼にまで頼まれるとなると、事態はそれなりに緊迫しているのだろう。
ルパートと私は顔を見合わせた後に頷いて、聖騎士チームと行動を共にすることにした。デートはこれで終わりになりそうだな。楽しかっただけにちょっと残念……。
でも暗殺なんてワードを聞いたらそのままにしておけないよね。ルパートもそう考えたんだろう。
マシューに連れてこられた店は所謂高級レストランだった。普段の私なら絶対に立ち入らない店だ。柱も床も店内の装飾も立派なのだが、こういった空間に慣れていないせいか少し冷たいイメージを持った。
黒いベストを着た中年の従業員が恭しくお辞儀をした。
「マシュー様、お待ちしておりました」
「二人増えたんだけど、彼らの分も席を作ってもらえる?」
「はい。すぐにご用意致します」
従業員と顔見知りか。マシューはフィースノー地方を治める男爵の子供だったな。気さくな青年なので貴族ということを忘れそうになる。実家がこの街に在ると言っていたし、ここは彼の馴染みの店なんだろう。
広い個室へ案内されて私達は席に着いた。飲み物メニューを見ている私へマシューが声をかけた。
「ロックウィーナ、この店はデザートのケーキがとても美味しいんだよ。食べてみない?」
「うーん……私、オムライスとフルーツサンデーをカフェでガッツリ食べちゃったんですよ」
「もう入らない感じ?」
「ケーキくらいならいけそうですが、太りそうで」
会話を聞いたルパートが笑って否定した。
「おまえは毎日訓練して戦士としての身体を作っているから大丈夫、太りにくい体質だよ。ちょっとぐらい多めに食べても気にするな」
「俺もそう思うよ~。もし残したら俺が食べてあげるからさ」
「いや中隊長、その場合は俺が残りを引き受けますんで」
それだと公開間接キスになるじゃん。意地でも残さずに食べるわ。
それぞれオーダーを済ませた私達は、従業員が退室するのを待ってから本題に入った。
「師団長、先ほど話されていた暗殺者とは何のことです?」
切り出したルパートへ、ルービックは重い事実をさらりと打ち明けた。
「騎士団の団長と相談した上でな、私、エドガー、マシューの三人が連名で、アンダー・ドラゴンと繋がっていたグラハム・ロニックを告発したんだよ」
「ええっ、もう告発されたんですか!? 思い切りましたね!」
これには私も驚いた。いろいろと面倒なことになると以前ルービックが語っていたので、根回しに時間をかけると思っていた。
「逃げる隙を与えたくなかったんでね、速攻勝負に出た。それでグラハムと奴の側近は留置場へ送ることができたんだ」
グラハムざまぁ。凶悪犯罪組織に兵団の情報流して汚い報酬を貰っていた男だ。同情はしない。
ルパートが憮然とした表情で質問を繰り返した。ルービックは気まずそうに答えた。
「あー……、別に意識してデートを覗こうとした訳じゃないぞ? 私とエドガーは昼飯のついでに、マシューに街を案内してもらっている最中だったんだ。おまえとロックウィーナにここで再会したのは完全に偶然だから。キスの瞬間に立ち会ってしまったのも。ちょっとした運命の悪戯というヤツだな」
ぎゃっはぁ! キスする直前ってバレてたぁ!!
デートを知り合いの誰かに見られる危険は覚悟していた。職業柄、私達はたくさんの冒険者達と顔馴染みになるから。でも聖騎士とエンカウントするとは予想していなかったよ。
私はあわあわして、ルパートは低い声で三度目の質問をした。
「……王都に戻ったはずの皆さんと、何故ここフィースノーの街で遭遇することになったのか、俺はそこをお聞きしたいんです」
「キスを邪魔したことに対しては怒ってないのか?」
「怒ってますよ。怒ってますけれど、まずは状況を確認したいので」
「私情よりも状況把握を優先させるか。流石だなルパート、私が目をかけた男だけのことはある」
「そういうのはいいんで、早く質問に答えて下さい」
「うむ、それがだな……」
ルービックは声を潜めはしたものの、あっけらかんと答えた。
「現在我々は暗殺者から逃亡中なんだ」
「は!?」
「いやまいったまいった、ホント大変」
本当に困ってます? 「ファンの女性にしつこく追っかけされてキッツ」みたいなノリで言ってるけど。
当然事態が掴めずに目をパチクリさせたルパートと私。
「あの、お話がまるで見えてこないのですが」
「ですよね~」
キスを邪魔した戦犯・マシューがヒョイと、ルービックとルパートの間に身体をねじ込ませた。
「詳しくご説明したいので、ルパート先輩とロックウィーナも一緒に食事しましょう。完全個室の落ち着いた店に予約を入れてあるんです。二人くらい増えても大丈夫ですから」
「いや、俺とコイツはさっき食ったばっかなので」
「ほう、混み合う前に済ませたか。無駄のない行動、流石だなルパート」
「師団長、いちいち褒めて下さらなくていいんで」
はは。ルービックはかなりルパートを気に入っているようだ。年の離れた弟みたいな感覚なのかな。
「ね、飲み物だけでも一緒に。ご相談したいことが有るんですよ~」
「すまない二人とも。数時間だけ付き合ってもらえないだろうか?」
マシューの背後からエドガーが一歩前に出てきた。真面目な彼にまで頼まれるとなると、事態はそれなりに緊迫しているのだろう。
ルパートと私は顔を見合わせた後に頷いて、聖騎士チームと行動を共にすることにした。デートはこれで終わりになりそうだな。楽しかっただけにちょっと残念……。
でも暗殺なんてワードを聞いたらそのままにしておけないよね。ルパートもそう考えたんだろう。
マシューに連れてこられた店は所謂高級レストランだった。普段の私なら絶対に立ち入らない店だ。柱も床も店内の装飾も立派なのだが、こういった空間に慣れていないせいか少し冷たいイメージを持った。
黒いベストを着た中年の従業員が恭しくお辞儀をした。
「マシュー様、お待ちしておりました」
「二人増えたんだけど、彼らの分も席を作ってもらえる?」
「はい。すぐにご用意致します」
従業員と顔見知りか。マシューはフィースノー地方を治める男爵の子供だったな。気さくな青年なので貴族ということを忘れそうになる。実家がこの街に在ると言っていたし、ここは彼の馴染みの店なんだろう。
広い個室へ案内されて私達は席に着いた。飲み物メニューを見ている私へマシューが声をかけた。
「ロックウィーナ、この店はデザートのケーキがとても美味しいんだよ。食べてみない?」
「うーん……私、オムライスとフルーツサンデーをカフェでガッツリ食べちゃったんですよ」
「もう入らない感じ?」
「ケーキくらいならいけそうですが、太りそうで」
会話を聞いたルパートが笑って否定した。
「おまえは毎日訓練して戦士としての身体を作っているから大丈夫、太りにくい体質だよ。ちょっとぐらい多めに食べても気にするな」
「俺もそう思うよ~。もし残したら俺が食べてあげるからさ」
「いや中隊長、その場合は俺が残りを引き受けますんで」
それだと公開間接キスになるじゃん。意地でも残さずに食べるわ。
それぞれオーダーを済ませた私達は、従業員が退室するのを待ってから本題に入った。
「師団長、先ほど話されていた暗殺者とは何のことです?」
切り出したルパートへ、ルービックは重い事実をさらりと打ち明けた。
「騎士団の団長と相談した上でな、私、エドガー、マシューの三人が連名で、アンダー・ドラゴンと繋がっていたグラハム・ロニックを告発したんだよ」
「ええっ、もう告発されたんですか!? 思い切りましたね!」
これには私も驚いた。いろいろと面倒なことになると以前ルービックが語っていたので、根回しに時間をかけると思っていた。
「逃げる隙を与えたくなかったんでね、速攻勝負に出た。それでグラハムと奴の側近は留置場へ送ることができたんだ」
グラハムざまぁ。凶悪犯罪組織に兵団の情報流して汚い報酬を貰っていた男だ。同情はしない。
1
あなたにおすすめの小説
時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜
いろは
恋愛
20歳ラノベ好きの喪女の春香。いつもの週末の様にラノベを深夜まで読み寝落ちし目覚めたら森の中に。よく読むラノベの様な異世界に転移した。
突然狼に襲われ助けてくれたのは赤髪の超男前。
この男性は公爵家嫡男で公爵家に保護してもらい帰り方を探す事に。
転移した先は女神の嫉妬により男しか生まれない国。どうやら異世界から来た春香は”迷い人”と呼ばれこの国の王子が探しているらしい。”迷い人”である事を隠し困惑しながらも順応しようと奮闘する物語。
※”小説家になろう”で書いた話を改編・追記しました。あちらでは完結しています。よければ覗いてみて下さい
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる