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素直になりたくて(8)
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「そして更に、グラハムに便宜を図っていた議員や軍の高官の身辺が洗われることになった」
「なりほど……今、王都の中央議会は大変な状態なんですね」
「ああ。裁判の際には、私達とギルドに預けているユーリ……、ユアンが証言者として出頭しなければならない」
「それで暗殺ですか」
「そう。私達に証言されると困る人間が必ず暗殺者を放つはずだ。第七師団所属の兵士は通常訓練を行っているが、告発者である私達聖騎士三名はしばらく身を隠すよう団長に指示された」
微笑みながら普通に話しているけど、ルービック達は物凄く危険な状況下に身を置いているのでは?
「あの……騎士団の団長は皆さんの味方なんですよね?」
不安になり口を挟んでしまった私へ、ルービックは力強く頷いた。
「団長なら大丈夫、信頼できるお方だ。彼も聖騎士で、かつて私を騎士団へスカウトした人物だ」
ああ、王都の(自称)自警団だったルービックを何度も補導した人か。
「副団長は聖騎士ではないが、彼も不正を憎む清廉な男だ。ここに居るマシューの叔父でもある」
「マシューさんの……。それは心強いですね!」
癖ッ毛の中隊長はニッコリ笑った。
「それで潜伏先に俺の実家を選んだんだ。エリアスさんのモルガナン家ほどじゃないけど、我がエディオンも軍人の家系でさ、それなりに強い私兵が大勢居るんだよ。もし居場所を知られて暗殺団が襲ってきても、返り討ちにしてやれるだけの武力が有る」
裁判が終わるまで注意が必要だが、聖騎士達は取り敢えず護られる環境に居るようで良かった。
「ルパート、いずれまた冒険者ギルドへ挨拶に出向くが、マスターのケイシー殿に今話したことを説明しておいてくれ」
「承知しました」
「それとなルパート、その堅っ苦しい喋り方はどうにかならんか?」
「はい?」
「聖騎士時代はもっと砕けた感じだっただろう? 私を兄のように慕ってくれていたじゃないか」
あ、やっぱりルービックはルパートのことを弟として見ていたか。
しかしルパートは頭を左右に振った。
「俺は同僚を殴り、大怪我をさせた罪で除名された身ですから」
まだ距離を置こうとする彼へ、ルービックは哀しい目を向けた。
「……私がおまえの立場でも同じことをしただろう。あの時は優秀な後輩を護ってやれなかったと、聖騎士全員が落ち込んだものだ」
エドガーも重々しく口を開いた。
「師団長の言う通りだ。私は当時別の師団に居たんだが、ルパートの悪評を人伝に聞いて愚かにも信じてしまった。それが彼を妬む者によるでっち上げだと知ったのは、ルパートが除名されて騎士団を去った後だった。己を恥じたよ。噂を鵜吞みにして、苦しんでいた後輩へ何もしてやれなかったんだからな」
マシューも真剣な表情で追随した。
「俺も当時はルパート先輩と面識が有りませんでしたけど、大まかな経緯を師団長から聞きました。殴った相手はあなたの親友でありながら酷い裏切り行為をした男ですよね? 怪我をさせて治療院送りにしたことは騎士の振る舞いに反する行為かもしれない……、だけど俺はルパート先輩を支持しますよ」
みんなの言葉を聞いて項垂れるルパートへ、ルービックは優しく声をかけた。
「八年前の事件だったが、おまえにとってはまだ解決していないことなのかもしれないな」
「………………」
キュッと口元を結んだルパート。図星だったのだろう。裏切ったのは幼馴染みと、結婚まで考えていた女性だったんだもん。
ルパートが元聖騎士だったことを長らく私達に隠していたのは、きっと過去を思い出したくなかったからなんだ。
ルービックが続けた。
「だがそれと私達の関係は別問題ではないかな? 一人っ子の私は、おまえが入団した時にヤンチャな弟ができたようでとても嬉しかった」
「師団長……」
エドガーがうんうん頷いていた。
「そういえばルパートは入団時、自信家で無鉄砲で師団長の若い頃にそっくりだと噂されていましたね。落ち着いた青年となったルパートとは違い、師団長は今もまだ無鉄砲なまますが」
「そこはいいからエドガー」
隣に座る側近を制してから、ルービックはルパートへ向き直った。
「おまえを弟と思う気持ちは今も変わらない。家族だと思っている」
エンもユーリを家族だと言った。キースも冒険者ギルドの仲間を大切にしている。命懸けの職場で働く仲間達には強い絆と情が生まれる。
「俺だって、ルパート先輩と兄弟のように接したいと思ってるんですよ~?」
「そうだな。ルパート、私一人では師団長とマシューの暴走を止めることがキツイ。ぜひおまえにも参加してもらいたい」
「エドガー、その言い方はどうかな」
「今朝だって街探索~とか言って、一人で出かけようとしましたよね? 単独行動は控えて下さいと何度もお願いしたというのに」
「いやあの、そのことは反省してるから、ここでは……」
ぷっと、ルパートが軽く噴き出した。聖騎士達の温かい雰囲気に当てられて少しだけ気が楽になったようだ。
漸く笑ってくれた彼を見て、同じテーブルを囲む私達も自然と頬が緩んだ。
「なりほど……今、王都の中央議会は大変な状態なんですね」
「ああ。裁判の際には、私達とギルドに預けているユーリ……、ユアンが証言者として出頭しなければならない」
「それで暗殺ですか」
「そう。私達に証言されると困る人間が必ず暗殺者を放つはずだ。第七師団所属の兵士は通常訓練を行っているが、告発者である私達聖騎士三名はしばらく身を隠すよう団長に指示された」
微笑みながら普通に話しているけど、ルービック達は物凄く危険な状況下に身を置いているのでは?
「あの……騎士団の団長は皆さんの味方なんですよね?」
不安になり口を挟んでしまった私へ、ルービックは力強く頷いた。
「団長なら大丈夫、信頼できるお方だ。彼も聖騎士で、かつて私を騎士団へスカウトした人物だ」
ああ、王都の(自称)自警団だったルービックを何度も補導した人か。
「副団長は聖騎士ではないが、彼も不正を憎む清廉な男だ。ここに居るマシューの叔父でもある」
「マシューさんの……。それは心強いですね!」
癖ッ毛の中隊長はニッコリ笑った。
「それで潜伏先に俺の実家を選んだんだ。エリアスさんのモルガナン家ほどじゃないけど、我がエディオンも軍人の家系でさ、それなりに強い私兵が大勢居るんだよ。もし居場所を知られて暗殺団が襲ってきても、返り討ちにしてやれるだけの武力が有る」
裁判が終わるまで注意が必要だが、聖騎士達は取り敢えず護られる環境に居るようで良かった。
「ルパート、いずれまた冒険者ギルドへ挨拶に出向くが、マスターのケイシー殿に今話したことを説明しておいてくれ」
「承知しました」
「それとなルパート、その堅っ苦しい喋り方はどうにかならんか?」
「はい?」
「聖騎士時代はもっと砕けた感じだっただろう? 私を兄のように慕ってくれていたじゃないか」
あ、やっぱりルービックはルパートのことを弟として見ていたか。
しかしルパートは頭を左右に振った。
「俺は同僚を殴り、大怪我をさせた罪で除名された身ですから」
まだ距離を置こうとする彼へ、ルービックは哀しい目を向けた。
「……私がおまえの立場でも同じことをしただろう。あの時は優秀な後輩を護ってやれなかったと、聖騎士全員が落ち込んだものだ」
エドガーも重々しく口を開いた。
「師団長の言う通りだ。私は当時別の師団に居たんだが、ルパートの悪評を人伝に聞いて愚かにも信じてしまった。それが彼を妬む者によるでっち上げだと知ったのは、ルパートが除名されて騎士団を去った後だった。己を恥じたよ。噂を鵜吞みにして、苦しんでいた後輩へ何もしてやれなかったんだからな」
マシューも真剣な表情で追随した。
「俺も当時はルパート先輩と面識が有りませんでしたけど、大まかな経緯を師団長から聞きました。殴った相手はあなたの親友でありながら酷い裏切り行為をした男ですよね? 怪我をさせて治療院送りにしたことは騎士の振る舞いに反する行為かもしれない……、だけど俺はルパート先輩を支持しますよ」
みんなの言葉を聞いて項垂れるルパートへ、ルービックは優しく声をかけた。
「八年前の事件だったが、おまえにとってはまだ解決していないことなのかもしれないな」
「………………」
キュッと口元を結んだルパート。図星だったのだろう。裏切ったのは幼馴染みと、結婚まで考えていた女性だったんだもん。
ルパートが元聖騎士だったことを長らく私達に隠していたのは、きっと過去を思い出したくなかったからなんだ。
ルービックが続けた。
「だがそれと私達の関係は別問題ではないかな? 一人っ子の私は、おまえが入団した時にヤンチャな弟ができたようでとても嬉しかった」
「師団長……」
エドガーがうんうん頷いていた。
「そういえばルパートは入団時、自信家で無鉄砲で師団長の若い頃にそっくりだと噂されていましたね。落ち着いた青年となったルパートとは違い、師団長は今もまだ無鉄砲なまますが」
「そこはいいからエドガー」
隣に座る側近を制してから、ルービックはルパートへ向き直った。
「おまえを弟と思う気持ちは今も変わらない。家族だと思っている」
エンもユーリを家族だと言った。キースも冒険者ギルドの仲間を大切にしている。命懸けの職場で働く仲間達には強い絆と情が生まれる。
「俺だって、ルパート先輩と兄弟のように接したいと思ってるんですよ~?」
「そうだな。ルパート、私一人では師団長とマシューの暴走を止めることがキツイ。ぜひおまえにも参加してもらいたい」
「エドガー、その言い方はどうかな」
「今朝だって街探索~とか言って、一人で出かけようとしましたよね? 単独行動は控えて下さいと何度もお願いしたというのに」
「いやあの、そのことは反省してるから、ここでは……」
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