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素直になりたくて(10)
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「よし、みんな食事に集中して一旦冷静になろう」
ルービックに言われて皆は自分の前に置かれた皿と向き合った。私もマシューに勧められて注文したショコラケーキを口に運んだ。
あ、カカオが濃厚で美味しい。甘さが心を落ち着けてくれる。こんなに美味しいのなら別のケーキも試したくなるな。ルパート曰く私は太りにくい体質らしいから、もう一つオーダーしておけば良かった。失敗した。
(……………………)
ふと、岩見鈴音のことを思い出した。あのコは逆に病気で太りやすい体質だ。カロリーの塊のようなこんなケーキはなかなか食べられないのかもしれない。
(健康で太りにくい私……。あの少女は私を理想だと言っていたけど、私のように元気に過ごしたいんだろうなぁ)
ケーキの最後の一口を、やけにほろ苦く感じた。
☆☆☆
食事を済ませて私達はレストランを出た。マシューが全員分を払ってくれようとしたが、私とルパートの飲食代はルパートが出した。お高い店だったが、頼んだのが幸い紅茶とケーキだけだったので、そんなに負担はかけていないはず。
しかしその前に立ち寄ったカフェも彼の奢りだった。
聖騎士達と別れた後、私はルパートへごちそうになったお礼を述べた。
「ありがとうございました先輩。今度食事した時は私がお返しに奢りますね」
「ああ、頼むな」
そう言って笑うルパートは、私がお金を出す次の機会にはたぶん安い店を選んで入りそうだ。
「……そろそろギルドへ戻らねぇとな」
「はい……」
まだ日は高い。14時になったばかりだ。だけどあまりにも長い時間、私とルパートが揃って冒険者ギルドを留守にしたら皆に怪しまれてしまう。名残惜しいがここいら辺が引き上げ時なんだろう。
私達は連れ立って歩き出した。
レストランは住宅街に在る隠れ家的なお店だったので、大通りと比べて路に人はあまり居ない。少し進んだ所でルパートがボソッと話しかけてきた。
「なぁ、さっきの話……」
「はい?」
「キスのこと……」
「………………」
恥ずかしい話題を蒸し返されて、私はルパートの方を見られなくなった。
「受け入れるつもりだったって……嫌じゃなかったって……、本当か?」
足元へ視線を定めているのに、足がもつれて歩調が乱れた。
「あの時は……そうでした」
「あの時は……か。今は?」
ルパートは私の肩を掴んで歩行を中断させた。
「!……」
反射的に見上げたルパートの顔は、私以上に緊張しているように見えた。
「今は、もう俺が嫌か……?」
「………………」
「答えてくれ、ロックウィーナ」
愛称ではなく正式名で呼ばれた。彼は本気だ。適当な誤魔化しはできない。
「判らない…………。先輩と居るとドキドキします。でもこれが恋なのかどうか、本当に判らないんです」
「それはまだいい。俺だってつい最近おまえへの気持ちに気づいて戸惑って、まだ心の整理がついていない状態なんだ」
私のことだけじゃなく、昔の恋人と親友のことも。ルパートはまだあの二人との過去を引き摺っている。
「俺も……どうしていいか判らなくなることが度々有る。だけどおまえのことがどうしようもなく好きなんだ。これだけは信じてくれ」
「先輩……」
それはもう知っているよ。七年間、護り続けてくれたんだからさ。
「俺に触れられることが嫌かそうじゃないか、それだけ教えてくれ」
肩を掴む彼の指が微かに震えていた。それが切なくて、とても愛おしく思えた。
「嫌じゃ…………ないです」
ルパートは安堵して一瞬顔を緩めた。しかしすぐに引き締まった表情に戻った。
「ウィー……」
そして己の顔を私へ近付けた。今度こそキスをしようとしていた。
駄目だよルパート。人通りが少ないからってゼロじゃないんだよ。こんな道の真ん中でキスしたら誰かに見られるよ?
それに……。
(私もルパートもまだ気持ちの整理ができていない。そんな状態でキスしてもいいのかな?)
迷いが有った。だのに私は瞼を閉じた。そしてルパートの唇が触れた途端に全てがどうでも良くなった。
「………………」
理性を司る脳が上手く機能していない気がする。
柔らかく温かい彼の唇が、私の唇を軽く吸った。私は逃げずに彼の背中へ自分の手を回した。彼もまた私を強く抱きしめて、口づけは深いものへと変わっていた。
「………………」
激しいキスに恐怖した。そしてそれ以上に大きな興奮を享受した。ああ、まるでキースの瞳に魅了された時のようだ。
心臓のポンプが最強モードで稼働して、全身へ血液を急速供給しているのか、のぼせそうに身体の中が熱い。
出動中は器用で何事もそつなくこなすルパート。ベッドでの彼はどんな感じなんだろう? 私をどんな風に愛するんだろう?
(ふわあぁっ!! 何考えてんの私!)
大胆な思考に脳の大部分が侵食されていた。
(しっかりしろ! 今はまだ先へ進む段階じゃない!)
ぐぬぬ。気合で煩悩を押し留めた私は、顔を背けてキスを終わらせた。ルパートはまだ私を求めていたが、彼の腕を外して身体を離した。
「……ウィー?」
我慢がつらい。でも私は頑張って笑ってみせた。
ルービックに言われて皆は自分の前に置かれた皿と向き合った。私もマシューに勧められて注文したショコラケーキを口に運んだ。
あ、カカオが濃厚で美味しい。甘さが心を落ち着けてくれる。こんなに美味しいのなら別のケーキも試したくなるな。ルパート曰く私は太りにくい体質らしいから、もう一つオーダーしておけば良かった。失敗した。
(……………………)
ふと、岩見鈴音のことを思い出した。あのコは逆に病気で太りやすい体質だ。カロリーの塊のようなこんなケーキはなかなか食べられないのかもしれない。
(健康で太りにくい私……。あの少女は私を理想だと言っていたけど、私のように元気に過ごしたいんだろうなぁ)
ケーキの最後の一口を、やけにほろ苦く感じた。
☆☆☆
食事を済ませて私達はレストランを出た。マシューが全員分を払ってくれようとしたが、私とルパートの飲食代はルパートが出した。お高い店だったが、頼んだのが幸い紅茶とケーキだけだったので、そんなに負担はかけていないはず。
しかしその前に立ち寄ったカフェも彼の奢りだった。
聖騎士達と別れた後、私はルパートへごちそうになったお礼を述べた。
「ありがとうございました先輩。今度食事した時は私がお返しに奢りますね」
「ああ、頼むな」
そう言って笑うルパートは、私がお金を出す次の機会にはたぶん安い店を選んで入りそうだ。
「……そろそろギルドへ戻らねぇとな」
「はい……」
まだ日は高い。14時になったばかりだ。だけどあまりにも長い時間、私とルパートが揃って冒険者ギルドを留守にしたら皆に怪しまれてしまう。名残惜しいがここいら辺が引き上げ時なんだろう。
私達は連れ立って歩き出した。
レストランは住宅街に在る隠れ家的なお店だったので、大通りと比べて路に人はあまり居ない。少し進んだ所でルパートがボソッと話しかけてきた。
「なぁ、さっきの話……」
「はい?」
「キスのこと……」
「………………」
恥ずかしい話題を蒸し返されて、私はルパートの方を見られなくなった。
「受け入れるつもりだったって……嫌じゃなかったって……、本当か?」
足元へ視線を定めているのに、足がもつれて歩調が乱れた。
「あの時は……そうでした」
「あの時は……か。今は?」
ルパートは私の肩を掴んで歩行を中断させた。
「!……」
反射的に見上げたルパートの顔は、私以上に緊張しているように見えた。
「今は、もう俺が嫌か……?」
「………………」
「答えてくれ、ロックウィーナ」
愛称ではなく正式名で呼ばれた。彼は本気だ。適当な誤魔化しはできない。
「判らない…………。先輩と居るとドキドキします。でもこれが恋なのかどうか、本当に判らないんです」
「それはまだいい。俺だってつい最近おまえへの気持ちに気づいて戸惑って、まだ心の整理がついていない状態なんだ」
私のことだけじゃなく、昔の恋人と親友のことも。ルパートはまだあの二人との過去を引き摺っている。
「俺も……どうしていいか判らなくなることが度々有る。だけどおまえのことがどうしようもなく好きなんだ。これだけは信じてくれ」
「先輩……」
それはもう知っているよ。七年間、護り続けてくれたんだからさ。
「俺に触れられることが嫌かそうじゃないか、それだけ教えてくれ」
肩を掴む彼の指が微かに震えていた。それが切なくて、とても愛おしく思えた。
「嫌じゃ…………ないです」
ルパートは安堵して一瞬顔を緩めた。しかしすぐに引き締まった表情に戻った。
「ウィー……」
そして己の顔を私へ近付けた。今度こそキスをしようとしていた。
駄目だよルパート。人通りが少ないからってゼロじゃないんだよ。こんな道の真ん中でキスしたら誰かに見られるよ?
それに……。
(私もルパートもまだ気持ちの整理ができていない。そんな状態でキスしてもいいのかな?)
迷いが有った。だのに私は瞼を閉じた。そしてルパートの唇が触れた途端に全てがどうでも良くなった。
「………………」
理性を司る脳が上手く機能していない気がする。
柔らかく温かい彼の唇が、私の唇を軽く吸った。私は逃げずに彼の背中へ自分の手を回した。彼もまた私を強く抱きしめて、口づけは深いものへと変わっていた。
「………………」
激しいキスに恐怖した。そしてそれ以上に大きな興奮を享受した。ああ、まるでキースの瞳に魅了された時のようだ。
心臓のポンプが最強モードで稼働して、全身へ血液を急速供給しているのか、のぼせそうに身体の中が熱い。
出動中は器用で何事もそつなくこなすルパート。ベッドでの彼はどんな感じなんだろう? 私をどんな風に愛するんだろう?
(ふわあぁっ!! 何考えてんの私!)
大胆な思考に脳の大部分が侵食されていた。
(しっかりしろ! 今はまだ先へ進む段階じゃない!)
ぐぬぬ。気合で煩悩を押し留めた私は、顔を背けてキスを終わらせた。ルパートはまだ私を求めていたが、彼の腕を外して身体を離した。
「……ウィー?」
我慢がつらい。でも私は頑張って笑ってみせた。
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