188 / 291
素直になりたくて(11)
しおりを挟む
「今日はここまで。小さい子供も居る住宅街でえっちなコトしてちゃ駄目ですよ。さ、帰りましょ」
「あ、うん……。そうだよなスマン、暴走しちまった」
ルパートは照れ笑いをしてあっさり納得してくれた。キスができて満足そうだった。
真の暴走馬車は私の方だ。キス以上のことを望んでしまったのだから。口づけしていた最中、絶対にルパートよりえっちなコト考えてた。
(危なかった……。恋を自覚する前に性欲に呑まれそうになるなんて)
昼間の街デートで良かったと、つくづく思った一日だった。
「俺はルービックさん達のことをマスターへ伝えなきゃならんから、正面玄関から入ることにする。ウィーは裏口を使って帰りな」
冒険者ギルド前に到着したらルパートにそう言われた。それがいいだろう。二人で仲良くエントランスホールへ入ったら、受付嬢のリリアナにデートがバレて撃たれるかもしれない。ルパートが。
「了解です。先輩、今日はありがとうございました。思い出に残る素敵な一日になりました!」
率直な私の感想を聞いたルパートは嬉しそうに微笑んだ。
「俺もだよ。また二人で出かけような」
私の肩を軽く叩いて彼は正面玄関へ立ち去った。その後ろ姿を私は複雑な感情で見送った。
(もっと早くこんな関係になれていたら、私は迷うことなくあなたを選んだのに)
私達は出会うタイミングが悪かったよね。七年前、新しい土地であらゆる可能性に胸をときめかしていた私と、大切な人の裏切りから立ち直れないでいたルパート。
私は鈍くて周囲が見えていなくて、彼が抱えて隠す心の闇に気づけなかった。そんな中でした六年前の私の愛の告白は、無神経な鋭い刃となってルパートの胸を深く抉った。失恋で傷付いたのは私だけじゃなかったんだ。
もう少し私の告白が遅かったら……、ルパートが前を向けるタイミングまで待てていたら、私達は自然な恋人同士になれていたのかな? 結局は両想いだったんだもんね。
(今さら嘆いてもどうしようもないか)
私はギルドの裏口をくぐった。出動任務を含めて外出している者が多いのか、居住スペースは静まりかえっていた。すぐに階段を使って二階へ上がった。
すると廊下にエリアスが居た。
「お帰り、ロックウィーナ」
こっそり家を抜け出したのを親に見つかった子供の気分になった。
エリアスは良い香りのする鉄製のカップを手に持っていた。給湯室でコーヒーを煎れてきたようだ。
「買い物は上手くいったかい?」
下着を買うって嘘を吐いてデートを誤魔化したんだっけ。朝の罪悪感が蘇った。
「はい。久し振りにゆっくりお店を見て回れました。エリアスさんも今日はお休みにしたんですか?」
「ああ。午前中は下の訓練場で身体を動かしたが、午後はゆっくり休むことにした。アルは朝から自分の領地の見回りに行っている。あれで真面目な領主なんだよ」
魔王領は遠くに在るがヤツは飛べるからね、日帰りで戻ってこられそうだ。
……アルクナイトは領地の視察ではなく、世界を見張るように部下へ命令しに行ったんじゃないかな。何処かに妙な兆しが出ていないかどうか。
彼が見た世界崩壊の光景が、ただの夢でありますように。
「ロックウィーナ、今日のキミはいつも以上に可憐に見える。髪形が普段と少し違うせいかな」
真面目なことを考えていたら不意に褒められた。
「あ、ありがとうございます」
「その髪留め、とてもよく似合っているよ」
「あ……」
ルパートからの贈り物である蝶のバレッタ。それを評価されてエリアスへの罪悪感が増しちゃった。
私が伏し目になったのを、照れたのだとエリアスはきっと勘違いした。
「どうだろう、これからどちらかの部屋でお喋りをしないか?」
「えっと……」
部屋で二人きりはマズイな。お馬鹿な私だが何度もえっちなピンチを迎えて流石に学んだ。
「ごめんなさい……、歩き回って疲れちゃいました。夕食の時間まで身体を横にして休みたいです」
「そうなのか? だったら私がマッサージしてやろう」
「ひゃあぁ!? それはいけませーん!!」
余計マズイでしょうと素で慌てた私。しかしエアリスは笑っていた。……あれ?
「解っているよロックウィーナ。非常に残念だがここは引き下がろう」
爽やかな笑顔なので残念そうに見えない。どうやらマッサージは冗談で言ったようだ。
彼のモデルとなった衛藤先輩もユーモアを交えて会話してくれたっけ。うん、これは鈴音ちゃん惚れるわ。
「お疲れ様。また夕食時に食堂で会おう」
エリアスは自室の扉を開けて去った。私にその気が無さそうな時はしつこくせず、スッと引いてくれる。カッコイイ人だなぁ。
いろいろ世話を焼いてくれるのに押し付けがましくなく、小さなことでも私を褒めて励ましてくれる。アルクナイトの正体を知っても友達であり続けようとする、豪胆で誠実でとことん優しい人。
「あ、うん……。そうだよなスマン、暴走しちまった」
ルパートは照れ笑いをしてあっさり納得してくれた。キスができて満足そうだった。
真の暴走馬車は私の方だ。キス以上のことを望んでしまったのだから。口づけしていた最中、絶対にルパートよりえっちなコト考えてた。
(危なかった……。恋を自覚する前に性欲に呑まれそうになるなんて)
昼間の街デートで良かったと、つくづく思った一日だった。
「俺はルービックさん達のことをマスターへ伝えなきゃならんから、正面玄関から入ることにする。ウィーは裏口を使って帰りな」
冒険者ギルド前に到着したらルパートにそう言われた。それがいいだろう。二人で仲良くエントランスホールへ入ったら、受付嬢のリリアナにデートがバレて撃たれるかもしれない。ルパートが。
「了解です。先輩、今日はありがとうございました。思い出に残る素敵な一日になりました!」
率直な私の感想を聞いたルパートは嬉しそうに微笑んだ。
「俺もだよ。また二人で出かけような」
私の肩を軽く叩いて彼は正面玄関へ立ち去った。その後ろ姿を私は複雑な感情で見送った。
(もっと早くこんな関係になれていたら、私は迷うことなくあなたを選んだのに)
私達は出会うタイミングが悪かったよね。七年前、新しい土地であらゆる可能性に胸をときめかしていた私と、大切な人の裏切りから立ち直れないでいたルパート。
私は鈍くて周囲が見えていなくて、彼が抱えて隠す心の闇に気づけなかった。そんな中でした六年前の私の愛の告白は、無神経な鋭い刃となってルパートの胸を深く抉った。失恋で傷付いたのは私だけじゃなかったんだ。
もう少し私の告白が遅かったら……、ルパートが前を向けるタイミングまで待てていたら、私達は自然な恋人同士になれていたのかな? 結局は両想いだったんだもんね。
(今さら嘆いてもどうしようもないか)
私はギルドの裏口をくぐった。出動任務を含めて外出している者が多いのか、居住スペースは静まりかえっていた。すぐに階段を使って二階へ上がった。
すると廊下にエリアスが居た。
「お帰り、ロックウィーナ」
こっそり家を抜け出したのを親に見つかった子供の気分になった。
エリアスは良い香りのする鉄製のカップを手に持っていた。給湯室でコーヒーを煎れてきたようだ。
「買い物は上手くいったかい?」
下着を買うって嘘を吐いてデートを誤魔化したんだっけ。朝の罪悪感が蘇った。
「はい。久し振りにゆっくりお店を見て回れました。エリアスさんも今日はお休みにしたんですか?」
「ああ。午前中は下の訓練場で身体を動かしたが、午後はゆっくり休むことにした。アルは朝から自分の領地の見回りに行っている。あれで真面目な領主なんだよ」
魔王領は遠くに在るがヤツは飛べるからね、日帰りで戻ってこられそうだ。
……アルクナイトは領地の視察ではなく、世界を見張るように部下へ命令しに行ったんじゃないかな。何処かに妙な兆しが出ていないかどうか。
彼が見た世界崩壊の光景が、ただの夢でありますように。
「ロックウィーナ、今日のキミはいつも以上に可憐に見える。髪形が普段と少し違うせいかな」
真面目なことを考えていたら不意に褒められた。
「あ、ありがとうございます」
「その髪留め、とてもよく似合っているよ」
「あ……」
ルパートからの贈り物である蝶のバレッタ。それを評価されてエリアスへの罪悪感が増しちゃった。
私が伏し目になったのを、照れたのだとエリアスはきっと勘違いした。
「どうだろう、これからどちらかの部屋でお喋りをしないか?」
「えっと……」
部屋で二人きりはマズイな。お馬鹿な私だが何度もえっちなピンチを迎えて流石に学んだ。
「ごめんなさい……、歩き回って疲れちゃいました。夕食の時間まで身体を横にして休みたいです」
「そうなのか? だったら私がマッサージしてやろう」
「ひゃあぁ!? それはいけませーん!!」
余計マズイでしょうと素で慌てた私。しかしエアリスは笑っていた。……あれ?
「解っているよロックウィーナ。非常に残念だがここは引き下がろう」
爽やかな笑顔なので残念そうに見えない。どうやらマッサージは冗談で言ったようだ。
彼のモデルとなった衛藤先輩もユーモアを交えて会話してくれたっけ。うん、これは鈴音ちゃん惚れるわ。
「お疲れ様。また夕食時に食堂で会おう」
エリアスは自室の扉を開けて去った。私にその気が無さそうな時はしつこくせず、スッと引いてくれる。カッコイイ人だなぁ。
いろいろ世話を焼いてくれるのに押し付けがましくなく、小さなことでも私を褒めて励ましてくれる。アルクナイトの正体を知っても友達であり続けようとする、豪胆で誠実でとことん優しい人。
1
あなたにおすすめの小説
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる