ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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素直になりたくて(11)

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「今日はここまで。小さい子供も居る住宅街でえっちなコトしてちゃ駄目ですよ。さ、帰りましょ」
「あ、うん……。そうだよなスマン、暴走しちまった」

 ルパートは照れ笑いをしてあっさり納得してくれた。キスができて満足そうだった。
 真の暴走馬車は私の方だ。キス以上のことを望んでしまったのだから。口づけしていた最中、絶対にルパートよりえっちなコト考えてた。

(危なかった……。恋を自覚する前に性欲に呑まれそうになるなんて)

 昼間の街デートで良かったと、つくづく思った一日だった。


「俺はルービックさん達のことをマスターへ伝えなきゃならんから、正面玄関から入ることにする。ウィーは裏口を使って帰りな」

 冒険者ギルド前に到着したらルパートにそう言われた。それがいいだろう。二人で仲良くエントランスホールへ入ったら、受付嬢のリリアナにデートがバレて撃たれるかもしれない。ルパートが。

「了解です。先輩、今日はありがとうございました。思い出に残る素敵な一日になりました!」

 率直な私の感想を聞いたルパートは嬉しそうに微笑んだ。

「俺もだよ。また二人で出かけような」

 私の肩を軽く叩いて彼は正面玄関へ立ち去った。その後ろ姿を私は複雑な感情で見送った。

(もっと早くこんな関係になれていたら、私は迷うことなくあなたを選んだのに)

 私達は出会うタイミングが悪かったよね。七年前、新しい土地であらゆる可能性に胸をときめかしていた私と、大切な人の裏切りから立ち直れないでいたルパート。
 私は鈍くて周囲が見えていなくて、彼が抱えて隠す心の闇に気づけなかった。そんな中でした六年前の私の愛の告白は、無神経な鋭い刃となってルパートの胸を深くえぐった。失恋で傷付いたのは私だけじゃなかったんだ。
 もう少し私の告白が遅かったら……、ルパートが前を向けるタイミングまで待てていたら、私達は自然な恋人同士になれていたのかな? 結局は両想いだったんだもんね。

(今さら嘆いてもどうしようもないか)

 私はギルドの裏口をくぐった。出動任務を含めて外出している者が多いのか、居住スペースは静まりかえっていた。すぐに階段を使って二階へ上がった。
 すると廊下にエリアスが居た。

「お帰り、ロックウィーナ」

 こっそり家を抜け出したのを親に見つかった子供の気分になった。
 エリアスは良い香りのする鉄製のカップを手に持っていた。給湯室でコーヒーをれてきたようだ。

「買い物は上手くいったかい?」

 下着を買うって嘘をいてデートを誤魔化したんだっけ。朝の罪悪感が蘇った。

「はい。久し振りにゆっくりお店を見て回れました。エリアスさんも今日はお休みにしたんですか?」
「ああ。午前中は下の訓練場で身体を動かしたが、午後はゆっくり休むことにした。アルは朝から自分の領地の見回りに行っている。あれで真面目な領主なんだよ」

 魔王領は遠くに在るがヤツは飛べるからね、日帰りで戻ってこられそうだ。
 ……アルクナイトは領地の視察ではなく、世界を見張るように部下へ命令しに行ったんじゃないかな。何処かに妙な兆しが出ていないかどうか。
 彼が見た世界崩壊の光景が、ただの夢でありますように。

「ロックウィーナ、今日のキミはいつも以上に可憐に見える。髪形が普段と少し違うせいかな」

 真面目なことを考えていたら不意に褒められた。

「あ、ありがとうございます」
「その髪留め、とてもよく似合っているよ」
「あ……」

 ルパートからの贈り物である蝶のバレッタ。それを評価されてエリアスへの罪悪感が増しちゃった。
 私が伏し目になったのを、照れたのだとエリアスはきっと勘違いした。

「どうだろう、これからどちらかの部屋でお喋りをしないか?」
「えっと……」

 部屋で二人きりはマズイな。お馬鹿な私だが何度もえっちなピンチを迎えて流石に学んだ。

「ごめんなさい……、歩き回って疲れちゃいました。夕食の時間まで身体を横にして休みたいです」
「そうなのか? だったら私がマッサージしてやろう」
「ひゃあぁ!? それはいけませーん!!」

 余計マズイでしょうと素で慌てた私。しかしエアリスは笑っていた。……あれ?

「解っているよロックウィーナ。非常に残念だがここは引き下がろう」

 爽やかな笑顔なので残念そうに見えない。どうやらマッサージは冗談で言ったようだ。
 彼のモデルとなった衛藤先輩もユーモアを交えて会話してくれたっけ。うん、これは鈴音ちゃん惚れるわ。

「お疲れ様。また夕食時に食堂で会おう」

 エリアスは自室の扉を開けて去った。私にその気が無さそうな時はしつこくせず、スッと引いてくれる。カッコイイ人だなぁ。
 いろいろ世話を焼いてくれるのに押し付けがましくなく、小さなことでも私を褒めて励ましてくれる。アルクナイトの正体を知っても友達であり続けようとする、豪胆で誠実でとことん優しい人。
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