ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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燻る火種(2)

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「事情は解りました。ルパート、皆さんの登録手続きを頼む」
「えっ、役職付きの現役聖騎士だぞ? 一時的とはいえ冒険者にしていいのかよ!?」

 冒険者には安定した収入が無い。私達ギルド職員の権利である雇用保険や各種手当すら付かない。国から雇われている騎士とは対極に位置する職業だ。

「いんじゃね? 騎士団長も納得されてるようだし」

 相変わらず我らがギルドマスターは軽かった。

「という訳でルパート、ちゃちゃっと手続きを頼むな」
「あいよ……。ウィー、おまえはメシに行っていいぞ」

 実は冒険者登録の手続きはちゃちゃっとは終わらない。長い説明と何枚もの書類にサインが必要だ。それを知っているからルパートは私を逃がそうとしていた。
 マスターに投げちゃえ、と私の中の悪魔が囁いたが彼は休み無く二十日間連続勤務中。これ以上仕事を増やしたら、元Sランク冒険者と言えども疲労でぶっ倒れるかもしれない。

「私も作業を分担しますよ。その方が早く終わるでしょう?」
「でもおまえ腹空いてるだろ?」
「先輩だって」
「あ、じゃあみんなで先に食事をしましょうよ。別に急いでいる訳じゃないし。俺、冒険者ギルド食堂のメニューが気になってたんですよね~」

 お調子者マシューが割り込んできた。貴族である彼の舌には合わないだろうと思ったが、そういえば遠征中は私達と一緒に質素な食事をしていたな。美味しいとはお世辞にも言えない干し肉をかじられるんだからギルド食堂でも大丈夫っぽい。
 ギルドマスターに一礼してから私達は食堂へ向かった。

「う~ん、席が微妙に空いてないね~」

 食堂を見渡したマシューの感想通り、  混み合うピークの時間帯が過ぎたので空席がポツポツ有るものの、五人でまとまって着けるテーブルはまだ無かった。

「メシ受け取ったら会議室へ移動するか」
「あ、いいですね。そっちの方が落ち着いて話せそう」

 ルパートの提案に全員頷いた。そしてそれぞれが注文を済ませたのだが、ルービックとエドガーの盆には飲み物と軽くつまめる程度の軽食しか乗っていなかった。

「それだけで足りますか?」
「我々は冒険者ギルドへ来る前に昼食を済ませたんだよ。アイツは痩せの大食いだからやたらと食うけどな」

 エドガーが日替わりランチを乗せたマシューの盆へ視線を移した。そういえば高級レストランでもたくさん食べてたなぁ。マシューはエリアス並みの長身だけれど細身だ。摂った食物は何処へ消えているんだろう。あの影の手に栄養を分け与えているとか? まさか。

「おや」

 向かった会議室、そこには先客が居た。新しくバディとなったキースとユーリだった。細長いテーブルに着いていた彼らの前にも、半分くらい食べて減った日替わりランチのプレートが有った。

「ルパートにロックウィーナ。どうしました?」
「食堂が混んでたからこっちへ来たんだ」
「僕達もです。考えることは一緒ですね」

 キースとユーリも出動任務を終えて、私達より少し早くギルドに帰っていたようだ。

「あの……、鎧を装着していませんが後ろに居るのは聖騎士の皆さんでは?」
「そうですよキースさん。今日も平穏無事に闇墜ちしてますかー?」
「………………」
「アハハ、その笑顔怖いですー」

 憎まれ口を叩きつつもマシューはキースの隣に着席した。ルパートに関してもそうだが、隠れ陰キャなマシューは闇を背負う人間になつく傾向が有る。さては天然陽キャの某上司に相当ストレスを感じているな?

「ここでユアンに会えたのは好都合だった」

 ルービックとエドガーも席に着いた。ユーリは少し警戒して彼らを見ていた。

「……どうも。俺に用ってことは、アンダー・ドラゴンについての話が有るんですね?」
「そうだ」
「裁判で証言者となるあなた方と俺が、命を狙われるかもしれないとマスターから注意喚起をされました。その話ですか?」
「それもそうなんだがもう一つ。……本拠地から逃亡を図った首領が、ここフィースノーに潜伏している可能性が高いそうなんだ」
「!」

 ルービックの発言に、冒険者ギルドメンバーは息を吞んだ。

「ボス……いや、首領のレスター・アークが近くに居るのですか!?」

 ユーリが席を立ちそうな勢いでルービックへ聞き返した。

「まだその可能性が高いという段階に過ぎない。以前ギルドの諸君に捕らえてもらった、首領と下っ端構成員の繋ぎ役だった男からの新たな情報だ」

 あの連絡係か。彼を生け捕りにできたことで、マキアとエンの死亡ルートを回避できたのだ。

「普段は部下に指示だけ出してダイレグ地方の本拠地に潜む首領だが、こちらの地方で大きな仕事が有る際は、積極的に自ら出向くということが何度も有ったそうな」

 ユーリが顔を曇らせた。

「……その通りです。過去に何度も首領はこちらへ足を運んでいました」

 前の周回ではフィースノーに在るアジトにも登場した。
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