ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

文字の大きさ
190 / 291

燻る火種(1)

しおりを挟む
 それから数日間は平穏に過ぎていった。特筆すべき点は、キースのバディがセスからユーリに変わったことぐらいだろうか。
 出動班のかなめとして長らくギルドに貢献してくれたセス&キース組だったが、妻子有る身のセスをあまり危険なフィールドへ派遣したくないと皆は思っていた。試しに一度組ませてみたユーリとキースの相性が良かったので、ギルドマスターと主任のルパートが相談してバディ変更を決定した。
 セスは最近腰痛が出始めたと言っていたからちょうどいいだろう。これからは後輩の育成を中心に、彼にはサポート役として活躍してもらうそうだ。

 13時。今日もルパートと共に未達成依頼の救済で出動した私は、無事にクエストクリアして冒険者ギルドへ戻ってきていた。

「腹減った」

 呟いたルパートに同感だった。報告を済ませてさっさと食堂へ行こう。
 しかし受付カウンターにはちょっとした人だかりができていた。受付嬢のリリアナと事務の女性職員が対応に追われて忙しそうだ。たまたま同じ時間帯に冒険者達が大挙して押し寄せた状態?

「処理に時間がかかりそうだな。先にメシ食いにいくか」

 受付を手伝おうという気配を微塵も感じさせないルパートは、私の腕を引っ張ってカウンターの奥へ行こうとした。

「ちょっとルパートお兄様、てんてこ舞いで明らかに困っている私達をスルーするつもりですかぁ!?」

 非難してきたリリアナへルパートは面倒臭そうに返した。

「まだ昼メシ食ってねーんだよ。今この瞬間から俺とウィーは昼休憩に入った。腹を満たしたら手伝ってやるから」
「それって一時間後くらいでしょ―!? 今忙しいんですよ! そもそもお兄様のお友達なんですから、この人達の手続きはお兄様がなさって下さいよぉ!」
「は?」

 お友達って誰やねんと、私とルパートは受付カウンター前の人混みを改めてチェックして驚いた。列の一番前を白い歯を見せて笑っているルービックとマシュー、苦笑いのエドガーら聖騎士達が陣取っていた。

「やぁルパートにロックウィーナ。今日も元気そうで何よりだ」
「会えて嬉しいよ~。タイミング良かったみたいだね」
「何かすまない…………」
「え、あ、皆さん? 何で?」

 手を振る聖騎士ズにルパートは困惑したが、すぐに思い出した。

「そうか、マスターにご用なんですね?」

 彼らは近い内にギルドへ挨拶に出向くと言っていた。

「リリアナ、マスターを呼ぶか執務室へご案内すれば良かっただろ?」

 ルパートの指摘に受付嬢は可愛らしく頬を膨らませた。

「それが皆さん、冒険者としての登録をお望みなんですよぉ」
「はい?」

 どういうこと? マシューとルービックはニコニコこちらを見ていた。聖騎士って公務員だよね? 公務員ってダブルワーク禁止じゃなかったっけ。
 後ろに聞き耳を立てている一般冒険者が居るので、騎士であることを伏せて私はルービックへ尋ねた。

「皆さんは副業が許されない職業では?」
「原則としては、な。稀に例外が認められる場合が有るんだよ」
「それで何で冒険者に???」
「とにかく今混んでますんでぇ、その方々の対応はお兄様にお任せします!」

 リリアナに聖騎士を押し付けられた。ヤレヤレとルパートがカウンター内から彼らを手招きした。

「……取り敢えずこちらへ。マスターの執務室へご案内します」
「ルパート、話し方がまた固くなっている。他人行儀は寂しいぞ。」
「勤務中ですので」
「え~でもルパート先輩、さっき昼休憩に入ったって言ってたよ~」
「言ってたよな」
「はいはい解ったよ。これでいいかよ」

 めんどくせぇ。ルービックとマシューは騎士団でもこんな自由な感じなのかな。そりゃ生真面目なエドガー連隊長、二人のお目付け役にルパートを巻き込みたくなる訳だ。

「おーいマスター、入るぞ」
「おー、いいぞ」

 呼びかけに返答が有ったので、ルパートが執務室の扉を開いた。室内では書類に囲まれたギルドマスターが机に向かっていた。いつもの光景だ。
 ルパートの後ろの聖騎士ズに気づいたマスターは椅子から立ち上がった。

「これは皆さんようこそ。むさくるしい場所で申し訳ない」
「いや忙しいところを邪魔してすまなかった。手短に用件を済ますので、どうぞ座っていてくれ」

 ルービックに勧められてマスターはまた腰を下ろした。

「本日はアンダー・ドラゴンの件で?」
「そう。我々が本拠地を襲撃し、奴らと内通していた騎士を捕らえたことで、アンダー・ドラゴン内部は大いに混乱しているだろう。統制が取れず、下級構成員による犯罪がこれまで以上に活発化する恐れが有る」
「そうですね。ここ数日だけでも、犯罪被害を訴えるギルドへの依頼が増えています」
「やはりか……。それらの依頼、我らに回してもらえないだろうか?」
「はっ?」

 あ、もしかして彼らが冒険者登録を望んだのって……。

「アンダー・ドラゴン壊滅は国王陛下からの勅命だ。しかし現在我々三名は暗殺者の目から逃れる為に、騎士として大っぴらに活動できない状況なんだ。そこで冒険者として登録し、陰ながら犯罪撲滅活動に従事したいと考えている。既に騎士団長の許可は取った」

 やっぱりだ。お忍び中なのに、国の治安維持の為に働こうだなんて騎士のかがみだなぁ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

処理中です...