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残酷な事実(1)
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ギルドマスターと受付嬢のリリアナ、そして出動任務を終えて食堂で遅い昼食を摂っていたマキアとエン。アルクナイトに集めろと言われた対象者全員に声をかけて、私達は改めて会議室へ集合した。
「あれっ、聖騎士さん達も? 緊急会議って聞いたけど議題は何ですか?」
「それを今から説明する。取り敢えず空いている席へお座りしろワンコ」
「お座りって……完全に犬扱いじゃん」
室内はアルクナイトが仕切っていた。全員が着席したのを確認してから議長となった彼は会議を始めた。
「まず始めにアンダー・ドラゴンの件からだ。師団長、説明を」
おおぃ魔王、アンタ今は庶民の術師という設定なんだから、軍の高官を顎で使っちゃ駄目でしょうよ。しかし話を振られたルービックは機嫌を悪くする素振りを見せなかった。器が大きい。
「アンダー・ドラゴンの首領で逃亡したレスター・アークが、フィースノー地方に潜伏している可能性が高いとの情報が入った。彼を追う為に我々聖騎士は一時的に冒険者となって活動する」
「聖騎士さん達が冒険者になるんですか!?」
マキアが驚き、
「首領がフィースノーに……」
エンは首領の側近だったユーリの様子を窺った。
「首領の件については冒険者ギルドの皆も念頭に置いておくように。ただし、会議の本題はここからだ。アンダー・ドラゴンよりも数百倍厄介な事態が現在進行中だ」
アルクナイトの発言を受けて、会議室に揃った者は一様に顔を顰《しか》めた。それでも数百倍は大げさだろうと思っただろう。この時は。
「師団長、三ヶ所の国境検問所が深い霧を観測したそうだな?」
「ああ。そのせいで検問所は封鎖され、入国も出国もできない状態だ」
商人リリアナが口を挟んだ。
「霧ごときで鎖国したんですか? 貿易に悪影響が出ますよ」
「仕方が無い処置なんだ。霧の調査に何名か兵士を派遣したが、誰もまだ戻ってこないとの報告を受けた。そればかりか入国申請する外からの旅人達も訪れなくなった。国境警備隊は安全第一に考えて、霧が晴れるまで門を閉ざすことにしたそうだ。中央議会で今後のことを話し合っている」
アルクナイトが重い口調で同意した。
「正しい判断だ。これ以上誰も霧の中へ入ってはいけない。派遣された兵士達は霧の中で死亡している」
「!?」
聖騎士三名がアルクナイトを凝視した。いくら待っても戻らない兵士達。死亡は想定内だっただろうが、ハッキリと断言されて流石にショックだったようだ。
「……アルくん、何故キミは兵士達が死んだと言い切れるんだ?」
「霧をこの目で見たからだ。北方面に飛ばしていた部下から霧についての報告を受け、俺も直接現地へ赴いた」
「北の国境はここからだいぶ遠いぞ。キミはアンダー・ドラゴン本拠地壊滅作戦の後、冒険者ギルドの皆と共にフィースノーへ戻ったはずだよな? それから北の国境へ出向いてまたここへ帰ってくるには、到底時間が足りないだろう?」
懐疑的な目を向けたルービックへ、魔王はあっさりと言い返した。
「俺は風魔法で空を飛べる。適した地形しか進めない馬の脚なんぞと移動スピードを比べるな」
「は?」
魔法剣士である聖騎士達が困惑した。
「空……飛んでったんスか? 国境まで? おまけに往復?」
「マスタークラスの術師は空を漂うことができるそうだが、長距離飛行など聞いたことが無いぞ?」
「それに部下とは? キミは冒険者ギルドの助っ人だと言っていたが、どこか別の組織に属しているのか?」
アルクナイトはギルドマスターに視線を移した。
「ケイシー、もう言ってもいいよな? コイツらと共同戦線を張って大きなヤマに当たる以上、いつまでも俺の素性を隠してはおけまい」
マスターは毛の無い頭頂部を右手で掻いた。
「やむを得ませんな。まぁ聖騎士さん達なら大丈夫だとは思うが、キース、乱闘に備えてバリアの準備しといて」
「任せ下さい。ロックウィーナのことは確実に護ります」
「いやウィーだけじゃなくて全員護れや」
「無理ですね。僕の防御障壁は強力ですが展開範囲が狭いので。あ、シュターク商会は大切なスポンサーなので、リリアナのこともついでに護りますよ」
「わぁー……、ありがとうキースお兄様ー」
横でされた寒い会話を聞き流して、アルクナイトは凛とした声で聖騎士達へ告げた。
「我は魔王アルクナイトである」
「え? は?」
「魔王……?」
「言うに事欠いて魔王って」
予想外な事実を示されてもすぐには信じられない。これは私達も通った道だ。案の定、名乗った彼を妄想癖の有る露出狂だと聖騎士達は判断し、憐れむ眼でアルクナイトを見た。
「言わなくても何を考えているか判るぞ。無礼者どもが」
片眉を吊り上げたアルクナイトが抑えていた魔力を一気に放出して、会議室の壁も床も天井もグワヮンと揺れた。肌がビリビリと引き攣るように痺れ、自然と私の身体は縮こまった。
「なっ!?」
ルービックとエドガーが腰に差した剣へ反射的に手を伸ばし、マシューは自分の影から闇の手を四本召喚した。「うおっ」と野太い声で、初めて闇の手を目の当たりにしたマスターがビビッていた。
「ルービックさん達、どうか落ち着いてくれ」
ルパートが椅子から立ち上がり、両手を前に出して聖騎士達を制した。
「ルパート、しかしっ……何なんだこの凄まじい魔力量は!」
「アル……、魔王様本来の魔力だよ。いつもは正体がバレないように魔力量を調整していたんだ。抑えきれなくて普段もいくらか漏れてたけど。……しっかし何度浴びてもキツイな」
背筋をブルッと震わせたルパートはアルクナイトへ苦い笑顔を向けた。
「聖騎士の皆さんにも充分凄いって伝わったと思うんで、また魔力量を抑えてもらえませんか?」
「よかろう」
その瞬間フワッと室内の空気が軽くなった。ダダ洩れ魔力が魔王周辺の空気をまだ揺らしているが、このくらいならもう慣れた。MAXパワーと比べたらそよ風の如しだ。
「あれっ、聖騎士さん達も? 緊急会議って聞いたけど議題は何ですか?」
「それを今から説明する。取り敢えず空いている席へお座りしろワンコ」
「お座りって……完全に犬扱いじゃん」
室内はアルクナイトが仕切っていた。全員が着席したのを確認してから議長となった彼は会議を始めた。
「まず始めにアンダー・ドラゴンの件からだ。師団長、説明を」
おおぃ魔王、アンタ今は庶民の術師という設定なんだから、軍の高官を顎で使っちゃ駄目でしょうよ。しかし話を振られたルービックは機嫌を悪くする素振りを見せなかった。器が大きい。
「アンダー・ドラゴンの首領で逃亡したレスター・アークが、フィースノー地方に潜伏している可能性が高いとの情報が入った。彼を追う為に我々聖騎士は一時的に冒険者となって活動する」
「聖騎士さん達が冒険者になるんですか!?」
マキアが驚き、
「首領がフィースノーに……」
エンは首領の側近だったユーリの様子を窺った。
「首領の件については冒険者ギルドの皆も念頭に置いておくように。ただし、会議の本題はここからだ。アンダー・ドラゴンよりも数百倍厄介な事態が現在進行中だ」
アルクナイトの発言を受けて、会議室に揃った者は一様に顔を顰《しか》めた。それでも数百倍は大げさだろうと思っただろう。この時は。
「師団長、三ヶ所の国境検問所が深い霧を観測したそうだな?」
「ああ。そのせいで検問所は封鎖され、入国も出国もできない状態だ」
商人リリアナが口を挟んだ。
「霧ごときで鎖国したんですか? 貿易に悪影響が出ますよ」
「仕方が無い処置なんだ。霧の調査に何名か兵士を派遣したが、誰もまだ戻ってこないとの報告を受けた。そればかりか入国申請する外からの旅人達も訪れなくなった。国境警備隊は安全第一に考えて、霧が晴れるまで門を閉ざすことにしたそうだ。中央議会で今後のことを話し合っている」
アルクナイトが重い口調で同意した。
「正しい判断だ。これ以上誰も霧の中へ入ってはいけない。派遣された兵士達は霧の中で死亡している」
「!?」
聖騎士三名がアルクナイトを凝視した。いくら待っても戻らない兵士達。死亡は想定内だっただろうが、ハッキリと断言されて流石にショックだったようだ。
「……アルくん、何故キミは兵士達が死んだと言い切れるんだ?」
「霧をこの目で見たからだ。北方面に飛ばしていた部下から霧についての報告を受け、俺も直接現地へ赴いた」
「北の国境はここからだいぶ遠いぞ。キミはアンダー・ドラゴン本拠地壊滅作戦の後、冒険者ギルドの皆と共にフィースノーへ戻ったはずだよな? それから北の国境へ出向いてまたここへ帰ってくるには、到底時間が足りないだろう?」
懐疑的な目を向けたルービックへ、魔王はあっさりと言い返した。
「俺は風魔法で空を飛べる。適した地形しか進めない馬の脚なんぞと移動スピードを比べるな」
「は?」
魔法剣士である聖騎士達が困惑した。
「空……飛んでったんスか? 国境まで? おまけに往復?」
「マスタークラスの術師は空を漂うことができるそうだが、長距離飛行など聞いたことが無いぞ?」
「それに部下とは? キミは冒険者ギルドの助っ人だと言っていたが、どこか別の組織に属しているのか?」
アルクナイトはギルドマスターに視線を移した。
「ケイシー、もう言ってもいいよな? コイツらと共同戦線を張って大きなヤマに当たる以上、いつまでも俺の素性を隠してはおけまい」
マスターは毛の無い頭頂部を右手で掻いた。
「やむを得ませんな。まぁ聖騎士さん達なら大丈夫だとは思うが、キース、乱闘に備えてバリアの準備しといて」
「任せ下さい。ロックウィーナのことは確実に護ります」
「いやウィーだけじゃなくて全員護れや」
「無理ですね。僕の防御障壁は強力ですが展開範囲が狭いので。あ、シュターク商会は大切なスポンサーなので、リリアナのこともついでに護りますよ」
「わぁー……、ありがとうキースお兄様ー」
横でされた寒い会話を聞き流して、アルクナイトは凛とした声で聖騎士達へ告げた。
「我は魔王アルクナイトである」
「え? は?」
「魔王……?」
「言うに事欠いて魔王って」
予想外な事実を示されてもすぐには信じられない。これは私達も通った道だ。案の定、名乗った彼を妄想癖の有る露出狂だと聖騎士達は判断し、憐れむ眼でアルクナイトを見た。
「言わなくても何を考えているか判るぞ。無礼者どもが」
片眉を吊り上げたアルクナイトが抑えていた魔力を一気に放出して、会議室の壁も床も天井もグワヮンと揺れた。肌がビリビリと引き攣るように痺れ、自然と私の身体は縮こまった。
「なっ!?」
ルービックとエドガーが腰に差した剣へ反射的に手を伸ばし、マシューは自分の影から闇の手を四本召喚した。「うおっ」と野太い声で、初めて闇の手を目の当たりにしたマスターがビビッていた。
「ルービックさん達、どうか落ち着いてくれ」
ルパートが椅子から立ち上がり、両手を前に出して聖騎士達を制した。
「ルパート、しかしっ……何なんだこの凄まじい魔力量は!」
「アル……、魔王様本来の魔力だよ。いつもは正体がバレないように魔力量を調整していたんだ。抑えきれなくて普段もいくらか漏れてたけど。……しっかし何度浴びてもキツイな」
背筋をブルッと震わせたルパートはアルクナイトへ苦い笑顔を向けた。
「聖騎士の皆さんにも充分凄いって伝わったと思うんで、また魔力量を抑えてもらえませんか?」
「よかろう」
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