221 / 291
ヤンデレ集団Bチーム(7)
しおりを挟む
「俺はどこまで話したっけかな」
「この国に来て傭兵を始めたら、先輩の立場のレスターがいろいろと面倒を見てくれた、話してくれたのはそれだけだよ。親切だったレスターがどうして、アンダー・ドラゴンなんて凶悪犯罪組織に入ってしまったの?」
「ああ……」
ユーリは自身の結んだ髪の先を指でいじった。
「あの人は、手っ取り早い復讐の手段が欲しかったんだよ。力を求めてアンダー・ドラゴンに入った」
マシューが質問した。
「復讐とは、彼の実家である伯爵家に関係している? 犯罪の片棒を担がされたんだよね?」
「そうだ。あの人の両親は仲間の貴族にハメられて領地と名誉を奪われた。そして自らの命を断ってしまったんだ」
ユーリは自分のことのように悔しさを顔に滲ませた。
「その時、国から断罪されたのはアーク家と男爵であるもう一家だけだった。しかし犯罪の規模から見て、他にも高位貴族が関与しているだろうと囁かれていたそうだ」
「囁かれただけで見つからなかったんだよね、その高位貴族は」
貴族のマシューが当時の状況を思い出していた。
「ああ。だから伯爵家の生き残りであるあの人は、傭兵稼業で日銭を稼ぎながら、首謀者の高位貴族が誰なのか探っていたんだ」
「見つかったの?」
「……ある日、アーク家の執事だった男からあの人へ連絡が入ったんだ。実は旦那様は生前、とある貴族から脅されていたようで随分悩んでいたと」
「その貴族とは……?」
「侯爵家のリドリー・キュアンだ」
マシューが目を見開いた。
「なっ……、侯爵は屋敷に侵入した強盗に襲撃されて命を落としたと聞いたが、まさかあの事件はレスター・アークが起こしたのか!?」
ユーリは頷いた。
「……キュアンはあの人の父親と親交が深く、傭兵に身を落としてしまったあの人のことも、何かと気にかけてくれていた恩人と呼べる人だった」
「そんな……恩人が仇だったの!?」
ユーリはつらそうに続けた。
「……忍びとして生きてきた俺は、情報の裏を取るべきだと勧めた。だが親の仇を見つけたと歓喜したあの人は、愚かにも即日行動に移してしまったんだ……!」
拳を握るユーリに声をかけた。
「襲撃は褒められた行為じゃないね。……でもレスターは、法で裁けなかった悪人に天誅を食らわせたんでしょう?」
レスターは両親の仇を見事に取ったと思われた。しかしユーリは頭を振った。
「……違ったんだ」
「え?」
「仇は、キュアンじゃなかったんだ!!」
「!?」
話を聞いていた私達は数秒間金縛りに遭った。
「あの人がキュアンを殺した書斎に……書類が有ったそうだ。キュアンもまた、あの人の父親がハメられた事件の真相を追っていたんだよ。そこに記されていた首謀者の名前は、公爵家のエメリット・ゼファール」
またもマシューが目を大きくした。
「そんな……公爵家の人間まで犯罪に加担していたのか……?」
「キュアンはゼファールを告発するつもりだった。それに気づいたゼファールはアーク家の元執事を買収して、あの人へ偽の情報を流したんだ」
なんてこと。
「まんまと騙されて恩人を殺害してしまったあの人は数日間、狂ったように泣き喚いていたよ。その後にアンダー・ドラゴンへ入ってしまったんだ。ゼファールの暗殺、そして貴族制度を破壊する力を得る為にな」
「そんな……経緯が……」
レスター・アークは想像以上の壮絶な過去を持っていた。ユーリが私に話したがらなかった理由がよく解った。
レスター・アークは悪人だ。凶悪犯罪組織のトップに上り詰めたほどの。
それなのに、助けてあげたい、可哀想だと私は心の隅で思ってしまった。
「お」
マシューが顔を上げて訓練場の出入口方向を見たので私達も視線を向けると、攻撃力に特化した特攻野郎Cチームの面々が廊下を歩いていた。
「エドガー先輩、お疲れ様です!」
マシューが元気良く挨拶をしたのでCチームもこちらに気づいた。
「おおマシュー、受付嬢に先に戻っていると聞いたがここに居たのか」
Cチームも訓練場へ入ってきて私達の輪に加わった。当たり前のようにエリアスとアルクナイトが私を挟んで座った。魔王がその際キースをお尻で弾いたが、キースは文句を言わずに横へずれた。
「ふん白、今日はやけに素直じゃないか」
「まぁね。僕は同じチームでロックウィーナと長く過ごせるからここは譲ってあげるよ。心の余裕ってヤツで」
「ぬうぅ……! ムカつく」
二人のやり取りはもはやお馴染みの光景だったので、スルーしたエリアスが私へ微笑みかけた。
「ただいま、ロックウィーナ」
「お帰りなさい。お怪我が無いようで何よりです」
「気遣いありがとう。皆で円になって何をしていたんだ?」
「えっと……」
ユーリの方を窺うと彼が苦笑して代わりに答えた。
「今日の反省会だよ」
さっきまで話していたレスター・アークのことは言わなかった。
レスターの哀しい境遇を知ると同情心が生まれてしまう。戦いの最中に甘い考えは命取りだ。当面の間はBチームだけの秘密だな。
「なるほど。ロックウィーナ、Bチームの首尾はどうだった?」
「……ええと、四人のアンダー・ドラゴン構成員を見つけて無力化しました」
あの現場を思い出して唇の端が引き攣ってしまった。詳しく説明しなくてもいいよね? ギルドマスターには報告書を提出しなくちゃだけど。
「そうか」
エリアスも深く追及してこなかった。私の表情から死人が出たと察してくれたっぽい。
「こちらもミッションクリアだ。地図の印とアジトの場所が少しズレていたので、探すのに時間がかかってしまった」
冒険者や旅人から寄せられた情報を元に、アンダー・ドラゴンのアジトはたぶんこの辺だろうと当たりをつけた推測マップに過ぎないので、間違っている場合も当然有る。まだ戻らないAチームは無事にアジトへ辿り着けたかな?
「この国に来て傭兵を始めたら、先輩の立場のレスターがいろいろと面倒を見てくれた、話してくれたのはそれだけだよ。親切だったレスターがどうして、アンダー・ドラゴンなんて凶悪犯罪組織に入ってしまったの?」
「ああ……」
ユーリは自身の結んだ髪の先を指でいじった。
「あの人は、手っ取り早い復讐の手段が欲しかったんだよ。力を求めてアンダー・ドラゴンに入った」
マシューが質問した。
「復讐とは、彼の実家である伯爵家に関係している? 犯罪の片棒を担がされたんだよね?」
「そうだ。あの人の両親は仲間の貴族にハメられて領地と名誉を奪われた。そして自らの命を断ってしまったんだ」
ユーリは自分のことのように悔しさを顔に滲ませた。
「その時、国から断罪されたのはアーク家と男爵であるもう一家だけだった。しかし犯罪の規模から見て、他にも高位貴族が関与しているだろうと囁かれていたそうだ」
「囁かれただけで見つからなかったんだよね、その高位貴族は」
貴族のマシューが当時の状況を思い出していた。
「ああ。だから伯爵家の生き残りであるあの人は、傭兵稼業で日銭を稼ぎながら、首謀者の高位貴族が誰なのか探っていたんだ」
「見つかったの?」
「……ある日、アーク家の執事だった男からあの人へ連絡が入ったんだ。実は旦那様は生前、とある貴族から脅されていたようで随分悩んでいたと」
「その貴族とは……?」
「侯爵家のリドリー・キュアンだ」
マシューが目を見開いた。
「なっ……、侯爵は屋敷に侵入した強盗に襲撃されて命を落としたと聞いたが、まさかあの事件はレスター・アークが起こしたのか!?」
ユーリは頷いた。
「……キュアンはあの人の父親と親交が深く、傭兵に身を落としてしまったあの人のことも、何かと気にかけてくれていた恩人と呼べる人だった」
「そんな……恩人が仇だったの!?」
ユーリはつらそうに続けた。
「……忍びとして生きてきた俺は、情報の裏を取るべきだと勧めた。だが親の仇を見つけたと歓喜したあの人は、愚かにも即日行動に移してしまったんだ……!」
拳を握るユーリに声をかけた。
「襲撃は褒められた行為じゃないね。……でもレスターは、法で裁けなかった悪人に天誅を食らわせたんでしょう?」
レスターは両親の仇を見事に取ったと思われた。しかしユーリは頭を振った。
「……違ったんだ」
「え?」
「仇は、キュアンじゃなかったんだ!!」
「!?」
話を聞いていた私達は数秒間金縛りに遭った。
「あの人がキュアンを殺した書斎に……書類が有ったそうだ。キュアンもまた、あの人の父親がハメられた事件の真相を追っていたんだよ。そこに記されていた首謀者の名前は、公爵家のエメリット・ゼファール」
またもマシューが目を大きくした。
「そんな……公爵家の人間まで犯罪に加担していたのか……?」
「キュアンはゼファールを告発するつもりだった。それに気づいたゼファールはアーク家の元執事を買収して、あの人へ偽の情報を流したんだ」
なんてこと。
「まんまと騙されて恩人を殺害してしまったあの人は数日間、狂ったように泣き喚いていたよ。その後にアンダー・ドラゴンへ入ってしまったんだ。ゼファールの暗殺、そして貴族制度を破壊する力を得る為にな」
「そんな……経緯が……」
レスター・アークは想像以上の壮絶な過去を持っていた。ユーリが私に話したがらなかった理由がよく解った。
レスター・アークは悪人だ。凶悪犯罪組織のトップに上り詰めたほどの。
それなのに、助けてあげたい、可哀想だと私は心の隅で思ってしまった。
「お」
マシューが顔を上げて訓練場の出入口方向を見たので私達も視線を向けると、攻撃力に特化した特攻野郎Cチームの面々が廊下を歩いていた。
「エドガー先輩、お疲れ様です!」
マシューが元気良く挨拶をしたのでCチームもこちらに気づいた。
「おおマシュー、受付嬢に先に戻っていると聞いたがここに居たのか」
Cチームも訓練場へ入ってきて私達の輪に加わった。当たり前のようにエリアスとアルクナイトが私を挟んで座った。魔王がその際キースをお尻で弾いたが、キースは文句を言わずに横へずれた。
「ふん白、今日はやけに素直じゃないか」
「まぁね。僕は同じチームでロックウィーナと長く過ごせるからここは譲ってあげるよ。心の余裕ってヤツで」
「ぬうぅ……! ムカつく」
二人のやり取りはもはやお馴染みの光景だったので、スルーしたエリアスが私へ微笑みかけた。
「ただいま、ロックウィーナ」
「お帰りなさい。お怪我が無いようで何よりです」
「気遣いありがとう。皆で円になって何をしていたんだ?」
「えっと……」
ユーリの方を窺うと彼が苦笑して代わりに答えた。
「今日の反省会だよ」
さっきまで話していたレスター・アークのことは言わなかった。
レスターの哀しい境遇を知ると同情心が生まれてしまう。戦いの最中に甘い考えは命取りだ。当面の間はBチームだけの秘密だな。
「なるほど。ロックウィーナ、Bチームの首尾はどうだった?」
「……ええと、四人のアンダー・ドラゴン構成員を見つけて無力化しました」
あの現場を思い出して唇の端が引き攣ってしまった。詳しく説明しなくてもいいよね? ギルドマスターには報告書を提出しなくちゃだけど。
「そうか」
エリアスも深く追及してこなかった。私の表情から死人が出たと察してくれたっぽい。
「こちらもミッションクリアだ。地図の印とアジトの場所が少しズレていたので、探すのに時間がかかってしまった」
冒険者や旅人から寄せられた情報を元に、アンダー・ドラゴンのアジトはたぶんこの辺だろうと当たりをつけた推測マップに過ぎないので、間違っている場合も当然有る。まだ戻らないAチームは無事にアジトへ辿り着けたかな?
1
あなたにおすすめの小説
時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜
いろは
恋愛
20歳ラノベ好きの喪女の春香。いつもの週末の様にラノベを深夜まで読み寝落ちし目覚めたら森の中に。よく読むラノベの様な異世界に転移した。
突然狼に襲われ助けてくれたのは赤髪の超男前。
この男性は公爵家嫡男で公爵家に保護してもらい帰り方を探す事に。
転移した先は女神の嫉妬により男しか生まれない国。どうやら異世界から来た春香は”迷い人”と呼ばれこの国の王子が探しているらしい。”迷い人”である事を隠し困惑しながらも順応しようと奮闘する物語。
※”小説家になろう”で書いた話を改編・追記しました。あちらでは完結しています。よければ覗いてみて下さい
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる