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迷いの末の決断(2)
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「マシューの言うこと、私も正しいと思う」
黙ってやり取りを見守っていたエドガーがここで発言した。
「魔王殿もそのことを注意していた。ロックウィーナ、今ルパートの元へ行くのなら……そういうことになる覚悟が必要だ」
徹底的に付き合うという覚悟を持った上で行け……、そうか……。
アルクナイトが言葉に秘めた意味を今頃理解したよ。私の頭は何てお花畑だったんだろう。
少年少女の慰め会じゃない。私達は大人の男女なんだ。
「身体から始まる関係ってのも有るよ? ドライな性格のカップルならそれでもいいと思う。でも……キミとルパート先輩には当て嵌まらないと思うんだ。二人とも根がメチャクチャ真面目なタイプに見える」
マシューが再び私の目の奥を覗き込んだ。
「まだ出会ってそんなに経ってないけど、俺はルパート先輩のことが好きだし、ロックウィーナのことを勝手に友達だと思ってる」
「………………」
「二人が傷付く結果にはなって欲しくない。だから一時の感情に流されないで。じっくり考えた末の決断なら、どっちに転んでも俺はキミを応援するよ」
「マシュー……。それにエドガーさんも」
二人から完全なる善意を感じた。他人の恋路に関する意見なんてしにくかったろうに。
「ありがとう」
マシューは私へ近付いて背中をパン!と強く叩いた。
「そろそろAチームが戻ってきそうだから、エントランスホールまで迎えに行ってくる」
「独りで抱え込まないようにな」
聖騎士二人も立ち去った。彼らの優しさに大いに感謝した。
☆☆☆
シャワーを済ませて髪も乾かした。自室の置時計を見る限りまだ夕食の時間まで間が有る。
ルパートは今どうしているのだろう? キースに勧められて汗は流しただろうが……、その後は部屋に籠りきりなのかな? ルービックが寄り添っていると聞いたが流石にもう帰ったよね? じゃあルパートは部屋に独りで居るの?
私はさっきからずっとルパートのことばかり考えていた。
(少しだけ……少しだけ顔を見てこよう)
ちょっと声をかけるだけなら……。そう思ってイスから腰を浮かして、また下ろす。その繰り返しだった。
(私は彼の元へ行ってはいけない……)
マシューやエドガー、アルクナイトの言葉が頭の中をグルグル駆け巡っていた。彼らは正しい。
ルパートと恋人関係になるつもりが無いのなら関わるな。憐れみで接したら余計に彼を傷付けてしまう。
(ごめんなさい、先輩)
ルパートが好きだ。でも六年前に彼に恋をした私だから判る。現在私が持っている感情は後輩としての思慕に過ぎないと。
だから行けない。この身を差し出してルパートを慰めることができない。行為が怖いのではなく、自覚してしまったのだ。
(ずっと護ってくれていたのに。私はあなたへ何も返せない)
デートをして疑似恋愛に浮かれていた自分を殴り飛ばしたい。キスを受け入れたことも迂闊だった。
二人で楽しく過ごした記憶が、今度はルパートを苦しめる材料となってしまうだろう。
(ごめんなさい。もう……思わせぶりな態度は取らない。あなたをちゃんと私から解放する)
私は机に顔を突っ伏して泣いた。
彼が落ち着いたら告げなければならない。これからはただの先輩後輩に戻ろうと。バディを解消されるかもしれないが仕方が無い。
みんなに言われたことを真剣に考えた。そうしたら答えが出た。
お付き合いをしてずっと共に在り続けたいと願う相手……。身体、命、自分の全てを捧げても後悔しないと思える人。
私の脳裏に浮かんだのはルパートではない、別の男性の顔だったのだ。
☆☆☆
朝だ。愛用のウサギ置き時計を見ると7時52分。昨夜はなかなか寝つけず明け方に漸くウトウトし、その結果として寝過ごしてしまった。目覚まし機能のスイッチを入れ忘れていたんだな。
慌てて共同水場へ行き洗顔をした。もうとっくにギルド食堂が開いている時間だ。他のみんなは朝食を摂りに一階へ降りたのだろう、水場には誰も居なかった。
私も食堂へ向かわないと。昨夜は食欲が無くて夕食を抜いてしまった。今朝もまだ胃腸が動いていないが何か食べなくては。今日も出動が有るのだろうから。
「あ……ロックウィーナ……」
食堂の一角にルパートとスズネ以外のみんなが固まっていた。モーニングプレートを持って彼らと合流した。
「おはようごさいます」
「う、うん。おはよう……」
挨拶をして席に着いたのだが、隣のマキアが何故か目を逸らせた。キースは会釈、エリアスが手を振ってくれたが二人ともに笑顔が無く、アルクナイトとエンは不機嫌そうにそっぽを向いていた。ソルも無愛想だが……これはいつものことだな。
皆が黙々と食事をする中、唯一ユーリが気さくに話しかけてくれた。
「おはようさん。調子はどうだ?」
「それが、実は寝不足なんです」
「そ、そうか……」
ユーリまでもが気まずそうに口を閉ざした。微かにエンが舌打ちした音が聞こえた。
体調管理を怠ったので呆れられた? 今朝は寝坊もしたしな。
「あ、でも、出動には影響の無いレベルですから!」
取り繕ったが男達の不機嫌オーラは消えなかった。寝坊はそんなに罪か。まだ業務開始前やん。
黙ってやり取りを見守っていたエドガーがここで発言した。
「魔王殿もそのことを注意していた。ロックウィーナ、今ルパートの元へ行くのなら……そういうことになる覚悟が必要だ」
徹底的に付き合うという覚悟を持った上で行け……、そうか……。
アルクナイトが言葉に秘めた意味を今頃理解したよ。私の頭は何てお花畑だったんだろう。
少年少女の慰め会じゃない。私達は大人の男女なんだ。
「身体から始まる関係ってのも有るよ? ドライな性格のカップルならそれでもいいと思う。でも……キミとルパート先輩には当て嵌まらないと思うんだ。二人とも根がメチャクチャ真面目なタイプに見える」
マシューが再び私の目の奥を覗き込んだ。
「まだ出会ってそんなに経ってないけど、俺はルパート先輩のことが好きだし、ロックウィーナのことを勝手に友達だと思ってる」
「………………」
「二人が傷付く結果にはなって欲しくない。だから一時の感情に流されないで。じっくり考えた末の決断なら、どっちに転んでも俺はキミを応援するよ」
「マシュー……。それにエドガーさんも」
二人から完全なる善意を感じた。他人の恋路に関する意見なんてしにくかったろうに。
「ありがとう」
マシューは私へ近付いて背中をパン!と強く叩いた。
「そろそろAチームが戻ってきそうだから、エントランスホールまで迎えに行ってくる」
「独りで抱え込まないようにな」
聖騎士二人も立ち去った。彼らの優しさに大いに感謝した。
☆☆☆
シャワーを済ませて髪も乾かした。自室の置時計を見る限りまだ夕食の時間まで間が有る。
ルパートは今どうしているのだろう? キースに勧められて汗は流しただろうが……、その後は部屋に籠りきりなのかな? ルービックが寄り添っていると聞いたが流石にもう帰ったよね? じゃあルパートは部屋に独りで居るの?
私はさっきからずっとルパートのことばかり考えていた。
(少しだけ……少しだけ顔を見てこよう)
ちょっと声をかけるだけなら……。そう思ってイスから腰を浮かして、また下ろす。その繰り返しだった。
(私は彼の元へ行ってはいけない……)
マシューやエドガー、アルクナイトの言葉が頭の中をグルグル駆け巡っていた。彼らは正しい。
ルパートと恋人関係になるつもりが無いのなら関わるな。憐れみで接したら余計に彼を傷付けてしまう。
(ごめんなさい、先輩)
ルパートが好きだ。でも六年前に彼に恋をした私だから判る。現在私が持っている感情は後輩としての思慕に過ぎないと。
だから行けない。この身を差し出してルパートを慰めることができない。行為が怖いのではなく、自覚してしまったのだ。
(ずっと護ってくれていたのに。私はあなたへ何も返せない)
デートをして疑似恋愛に浮かれていた自分を殴り飛ばしたい。キスを受け入れたことも迂闊だった。
二人で楽しく過ごした記憶が、今度はルパートを苦しめる材料となってしまうだろう。
(ごめんなさい。もう……思わせぶりな態度は取らない。あなたをちゃんと私から解放する)
私は机に顔を突っ伏して泣いた。
彼が落ち着いたら告げなければならない。これからはただの先輩後輩に戻ろうと。バディを解消されるかもしれないが仕方が無い。
みんなに言われたことを真剣に考えた。そうしたら答えが出た。
お付き合いをしてずっと共に在り続けたいと願う相手……。身体、命、自分の全てを捧げても後悔しないと思える人。
私の脳裏に浮かんだのはルパートではない、別の男性の顔だったのだ。
☆☆☆
朝だ。愛用のウサギ置き時計を見ると7時52分。昨夜はなかなか寝つけず明け方に漸くウトウトし、その結果として寝過ごしてしまった。目覚まし機能のスイッチを入れ忘れていたんだな。
慌てて共同水場へ行き洗顔をした。もうとっくにギルド食堂が開いている時間だ。他のみんなは朝食を摂りに一階へ降りたのだろう、水場には誰も居なかった。
私も食堂へ向かわないと。昨夜は食欲が無くて夕食を抜いてしまった。今朝もまだ胃腸が動いていないが何か食べなくては。今日も出動が有るのだろうから。
「あ……ロックウィーナ……」
食堂の一角にルパートとスズネ以外のみんなが固まっていた。モーニングプレートを持って彼らと合流した。
「おはようごさいます」
「う、うん。おはよう……」
挨拶をして席に着いたのだが、隣のマキアが何故か目を逸らせた。キースは会釈、エリアスが手を振ってくれたが二人ともに笑顔が無く、アルクナイトとエンは不機嫌そうにそっぽを向いていた。ソルも無愛想だが……これはいつものことだな。
皆が黙々と食事をする中、唯一ユーリが気さくに話しかけてくれた。
「おはようさん。調子はどうだ?」
「それが、実は寝不足なんです」
「そ、そうか……」
ユーリまでもが気まずそうに口を閉ざした。微かにエンが舌打ちした音が聞こえた。
体調管理を怠ったので呆れられた? 今朝は寝坊もしたしな。
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