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迷いの末の決断(1)
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「……それでルパートはギルと言う幼馴染みにとどめを刺しました。でも完全な悪人ではなかったギルを殺すことは、ルパートにとって大きな心の傷となったようです」
三男猫の報告を受けて、冒険者ギルドの訓練場には重々しい空気が流れていた。
ルパート……、トラウマの原因だった幼馴染みを手にかけてしまったのか。
せめてAチームの他のメンバーがとどめを刺してくれていたら……、そう考えて私はそれでは駄目なんだと思い直した。幼馴染みと恋人のことをルパートは八年間も引き摺っていた。彼自身の手で決着をつけなければならなかったのだ。
ルービックが現場に居てくれたことがせめてもの救いだったな。上官であった彼は八年前、当時のルパートの苦悩を間近で見ていた人だから。
(先輩、つらいだろうな……)
傷付いたルパートを何とかしてやりたい。レスター・アークの話を聞いた時以上に感情が昂った。ずっと一緒に居た仲間だもの。実際には私達が生まれてまだ数ヶ月だが、記憶上では七年もの付き合いだ。
私だけではなく隣のエリアスも思い詰めた表情をしていた。彼とルパートはもう親友同士と言っていい間柄だ。
「飛べる黒猫の方が早いとはいえ、Aチームの出動場所はここからそう遠くない所だから、もうすぐ彼らは帰ってくるよね?」
キースが立ち上がった。
「バスタブにお湯を張っておくよ。温かいお湯に浸かれば少しはリラックスできるかもしれない」
キースは気が利くな。私も何かできることを考えてみたのだが良案が何も浮かばなかった。七年もバディを組んでおきながら情けないったら。
そんな私の心情を見透かしてアルクナイトが忠告してきた。
「……ロックウィーナ、下手にあれこれしようと考えるな。同情心で関わってもチャラ男は余計に傷付くだろう」
でも。いつもルパートに助けてもらってるんだから、こんな時ぐらい私が何かしてあげたいよ。……これも見抜かれた。
「それでも関わりたいと思うのなら、アイツと徹底的に付き合うという覚悟を持った上で行け」
低い声音で釘を刺してからアルクナイトは立ち上がり、キースに続いて訓練場を出ていった。ソルが追従し、使い魔兄弟も猫の姿に戻り魔王の後を追った。
「……アルの言う通りだな。ルービック殿に任せて私達は余計なことをせず、今はそっとしておくべきなのかもしれない」
「……だな」
エリアスは溜め息を吐き、真正面のユーリが同意した。二人も訓練場を出ていき、残ったのは私と二人の聖騎士だけになった。彼らは部下としてルービックの帰りを待っているのだ。
しばし三人は沈黙したが、
「……ねぇ、ロックウィーナ」
おもむろにマシューが口を開いた。
「キミさ、ルパート先輩を力づけたいって思ってるだろ?」
私は素直に頷き返した。
「うん。私にできることが有るならしてあげたい」
「してあげたい……か」
マシューが意味有り気に繰り返した。
「じゃあさ、例えばルパート先輩がキミを抱きたいって望んだら、その身体を彼に差し出すの?」
「!」
「おいマシュー!」
止めようとしたエドガーを、逆にマシューが手を軽く振って制止した。
「エドガー先輩、ここはハッキリさせなきゃ駄目な部分です」
思う所が有ったのかエドガーは引き下がり、マシューが私の目をじっと見た。真剣な眼差しで。何だか怖い。
「前にさ、キミとルパート先輩がデート中に俺達と街で偶然再会して、一緒にメシを食ったこと覚えてる?」
「あ、うん……」
「あの時キミさ……、ルパート先輩に恋しているかどうかは判らない、でもキスを受け入れるつもりだったって言ったんだよね」
「………………」
そんな会話をしたな。あの時は照れと焦りでいっぱいいっぱいだった。
「俺さ、それ聞いて……危ないって思ったんだ。このコは雰囲気に流されてるって。ルパート先輩が望めば、自分の意志と反することも許しちゃいそうだなって」
「そんなことは……!」
ない、とまで言い切られなかった。むしろ当たっていると恥ずかしくなった。雰囲気と好奇心に踊らされ、好感度が高くなったルパートからの誘いに簡単に乗っていた。
マシューは柔らかい口調で私を傷付けないように、でも核心を突いてきた。
「キミとルパート先輩が強い信頼関係で結ばれているのは知っている。お互いに好意を持っていることも。でもキミのそれは……まだ恋にも愛にもなっていない状態じゃないのかな?」
確かに恋しているという感覚は無い。だけど……。
「恋をしていなきゃ、ルパート先輩の傍には居られないの?」
今の私は後輩や妹分に過ぎないが、彼を支えたいと思う気持ちは本物だ。
「普段ならいいよ。でも今は駄目なんだ」
「……どうして?」
マシューが苦笑した。
「男はさ、いくつになっても傷付いた時は人の温もりが欲しくなる生き物なんだよ。ガキの頃は親の抱擁。大人になったら…………解るだろう?」
「!……」
急に息苦しくなった。切ない表情で私を求めたルパートを思い出したのだ。
あの時は彼が理性で性欲を抑えてくれて、キス以上はしてこなかった。でも今の……心神喪失に近い状態の彼ならば、歯止めが利かずに全力で私に縋ってくるかもしれない。
三男猫の報告を受けて、冒険者ギルドの訓練場には重々しい空気が流れていた。
ルパート……、トラウマの原因だった幼馴染みを手にかけてしまったのか。
せめてAチームの他のメンバーがとどめを刺してくれていたら……、そう考えて私はそれでは駄目なんだと思い直した。幼馴染みと恋人のことをルパートは八年間も引き摺っていた。彼自身の手で決着をつけなければならなかったのだ。
ルービックが現場に居てくれたことがせめてもの救いだったな。上官であった彼は八年前、当時のルパートの苦悩を間近で見ていた人だから。
(先輩、つらいだろうな……)
傷付いたルパートを何とかしてやりたい。レスター・アークの話を聞いた時以上に感情が昂った。ずっと一緒に居た仲間だもの。実際には私達が生まれてまだ数ヶ月だが、記憶上では七年もの付き合いだ。
私だけではなく隣のエリアスも思い詰めた表情をしていた。彼とルパートはもう親友同士と言っていい間柄だ。
「飛べる黒猫の方が早いとはいえ、Aチームの出動場所はここからそう遠くない所だから、もうすぐ彼らは帰ってくるよね?」
キースが立ち上がった。
「バスタブにお湯を張っておくよ。温かいお湯に浸かれば少しはリラックスできるかもしれない」
キースは気が利くな。私も何かできることを考えてみたのだが良案が何も浮かばなかった。七年もバディを組んでおきながら情けないったら。
そんな私の心情を見透かしてアルクナイトが忠告してきた。
「……ロックウィーナ、下手にあれこれしようと考えるな。同情心で関わってもチャラ男は余計に傷付くだろう」
でも。いつもルパートに助けてもらってるんだから、こんな時ぐらい私が何かしてあげたいよ。……これも見抜かれた。
「それでも関わりたいと思うのなら、アイツと徹底的に付き合うという覚悟を持った上で行け」
低い声音で釘を刺してからアルクナイトは立ち上がり、キースに続いて訓練場を出ていった。ソルが追従し、使い魔兄弟も猫の姿に戻り魔王の後を追った。
「……アルの言う通りだな。ルービック殿に任せて私達は余計なことをせず、今はそっとしておくべきなのかもしれない」
「……だな」
エリアスは溜め息を吐き、真正面のユーリが同意した。二人も訓練場を出ていき、残ったのは私と二人の聖騎士だけになった。彼らは部下としてルービックの帰りを待っているのだ。
しばし三人は沈黙したが、
「……ねぇ、ロックウィーナ」
おもむろにマシューが口を開いた。
「キミさ、ルパート先輩を力づけたいって思ってるだろ?」
私は素直に頷き返した。
「うん。私にできることが有るならしてあげたい」
「してあげたい……か」
マシューが意味有り気に繰り返した。
「じゃあさ、例えばルパート先輩がキミを抱きたいって望んだら、その身体を彼に差し出すの?」
「!」
「おいマシュー!」
止めようとしたエドガーを、逆にマシューが手を軽く振って制止した。
「エドガー先輩、ここはハッキリさせなきゃ駄目な部分です」
思う所が有ったのかエドガーは引き下がり、マシューが私の目をじっと見た。真剣な眼差しで。何だか怖い。
「前にさ、キミとルパート先輩がデート中に俺達と街で偶然再会して、一緒にメシを食ったこと覚えてる?」
「あ、うん……」
「あの時キミさ……、ルパート先輩に恋しているかどうかは判らない、でもキスを受け入れるつもりだったって言ったんだよね」
「………………」
そんな会話をしたな。あの時は照れと焦りでいっぱいいっぱいだった。
「俺さ、それ聞いて……危ないって思ったんだ。このコは雰囲気に流されてるって。ルパート先輩が望めば、自分の意志と反することも許しちゃいそうだなって」
「そんなことは……!」
ない、とまで言い切られなかった。むしろ当たっていると恥ずかしくなった。雰囲気と好奇心に踊らされ、好感度が高くなったルパートからの誘いに簡単に乗っていた。
マシューは柔らかい口調で私を傷付けないように、でも核心を突いてきた。
「キミとルパート先輩が強い信頼関係で結ばれているのは知っている。お互いに好意を持っていることも。でもキミのそれは……まだ恋にも愛にもなっていない状態じゃないのかな?」
確かに恋しているという感覚は無い。だけど……。
「恋をしていなきゃ、ルパート先輩の傍には居られないの?」
今の私は後輩や妹分に過ぎないが、彼を支えたいと思う気持ちは本物だ。
「普段ならいいよ。でも今は駄目なんだ」
「……どうして?」
マシューが苦笑した。
「男はさ、いくつになっても傷付いた時は人の温もりが欲しくなる生き物なんだよ。ガキの頃は親の抱擁。大人になったら…………解るだろう?」
「!……」
急に息苦しくなった。切ない表情で私を求めたルパートを思い出したのだ。
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