ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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迷いの末の決断(4)

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 私は緊張して正面に座るルパートと向き合った。

「ウィーごめんな。返事は急がないなんて恰好つけたのにさ、もうハッキリさせたくなったんだ」

 、それはルパートが求婚してくれた時に言った台詞だ。私は持っていたフォークを皿の端に置いた。

「プロポーズに対する……私の答えが欲しいんですね?」
「うん……」

 ルパートはまだ気力を取り戻していない。そんな彼に本心を告げれば追い打ちをかけることになる。もう少し落ち着いてからにしたかった。
 でも彼は望んでいる。ならここで言わなくちゃならない。

「ごめんなさい先輩。私は……あなたの想いに応じることができません」

 私は深々と頭を下げた。

「……………………」

 つらい。苦しいよ。恋愛感情が無くても好きな相手なんだ。その人を拒絶しなくちゃならないなんて。傷付けてしまうなんて。
 だけど私は別の人に恋をしてしまった。それに気づいてしまったんだ。

「……そんなに頭を低くすると、ハニートーストに顔面ダイブするぞ?」

 からかうように言われて私は顔を上げた。ルパートは笑っていた。

「先輩……?」
「大丈夫。何となくこうなるって判ってたから」

 私の両目からドワッと涙が出た。自分にとっても不意打ちで溢れてきたから、ガードが間に合わず涙が数滴トーストに掛かってしまった。蜂蜜味に塩気が追加だ。

「泣かせてごめんな。ずっと気を張っていたんだな」
「そんな……、先輩が謝らないで下さいよぉぉ!」
「ハハ、そうだな、振られたの俺だな」

 ルパートは向かいの席を立ち、テーブルを回って私の隣のイスに腰かけた。

「ほら、涙拭けよ」

 差し出された紙ナフキンを受け取って両目に当てた。鼻水までは出ていなくて良かった。こんな至近距離でかめない。

「……昨日の夜さ」

 ルパートが小さい声で言った。

「おまえが部屋に来てくれることを期待してた」

 待っていたんだ、彼は私を。想像して涙の量が増えた。

「きっと来てくれると思ってた。ギル……幼馴染みのことを前に話してあったから、おまえなら俺の気持ちを解ってくれると思ったんだ。それなのにおまえは来なくて……それが悲しくて……、見捨てられたって勝手に恨んだりした…………」

 ルパートが自嘲した。

「でも……来なくて良かったんだ。おまえの顔を見たら俺……、止まれなくなって無理矢理にでもおまえを抱いていたと思うから……」

 ルパートは全てをさらけ出していた。私も本音で話そう。

「私……先輩の力になりたかったです。でも部屋に行ったらきっと先輩とそういう関係になると思いました。……そしてそれは……違うと感じたんです」
「うん……」

 ルパートの目尻にもうっすらと涙が浮かんでいた。

「お人好しのおまえのことだ。俺に対して気持ちが有ったならきっと抱かれに来てくれた」
「………………」
「でも来なかったということは……そういうことなんだろうなって、一晩経って頭が冷えた時に解ったよ」

 ルパートは知ったんだ。それで恋を終わらせる為に今私の隣に居る。

「本当……それで良かったんだよ。昨日おまえが憐れみの感情で俺に抱かれていたら、俺は惨めでそれこそ立ち直れなくなっていただろうから」

 涙目で彼は爽やかに笑った。

「最後に一つ教えてくれ。俺のプロポーズを断った理由。俺には異性としての興味を全く持てなかったのか、それとも他に好きな相手ができたのか」

 涙とついに鼻水も出てきてしまい、顔面グチャグチャの私はしゃくり上げながら答えた。

「先輩は……素敵な人ですっ。じゃなきゃ初恋の相手になりばせんっ」

 ルパートは私の頭を撫でた。

「ありがとな。てことは後者か……。わりぃ、それが誰だかも教えてもらっていいか?」

 私の好きな人……。昨日気づいたばかりの恋心を早くも暴露せよと!?
 恥ずかしかった。だけどルパートには知ってもらいたいって思えた。

「…………です」

 小さな小さな声でルパートの耳に囁いた。

「!…………」

 ルパートは目を見開いた。

「意外でしたか?」
「意外と言えば意外かな。だけどやっぱりか~って感じも有る」
「わ!?」

 ルパートが私を引っ張った。

「頑張れよ! おまえが俺の大切なバディだってことは変わらねぇからな!!」
「先輩……」
しゃくだけど恋を応援してやる。でもヘタレたらすぐに奪い返すぞ!」

 キツイほどの力で彼は私を抱きしめた。

(ありがとう。そしてごめんなさい……)

 密着して伝わった。ルパートも泣いていた。
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