ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

文字の大きさ
254 / 291

急接近(2)

しおりを挟む
「あの……待ってよユーリ、展開が早過ぎない?」
「俺達忍びはいつ死ぬか判らん身の上だからな。心を決めたらすぐに行動する」

 ああー、そう言えばエンも行動に移すのが早かったよ! アレは忍者の習性だったのか!
 何て考察する間もなく、ユーリの顔が斜めに近付いてきた。これはもしかしなくてもキス!?

(それは駄目ぇ!!!!)

 既にルパートとエンと魔王にキスを許してしまっている私だが(けっこう多いな!)、キースへの恋心に気づいた今は他の男を受け付けない。肌は絶対に守ってみせる。
 両手で自分の口元を覆いユーリのキスをシャットアウトした。

「………………」

 ふぅ間に合ったぜ。
 ユーリは白けた目で私を見たが、怒るまではいっていないようだ。

「俺にキスされるの、嫌か?」
「あなたがどうこうではなくて、キース先輩以外にされたくないの」

 ユーリはここで、いつものからかうような笑顔に戻った。

「だってさ、キースさん」
「へ?」

 ユーリが私の背後へ目線をずらしたので追ってみたら……うきゃあああ!! いつの間にか食堂にキースが来ていたよ!
 逢いたかったけど今じゃない! よりにもよって何でこのタイミングで!?

「き、キース先輩、お身体の具合はいかがデスカ?」

 咄嗟にお見舞いの言葉が出たが声が裏返った。キースが寝込んでいる間に他の男と急接近。キースの中で私の印象がきっと凄く悪くなった。ユーリこん畜生め。

「………………」

 キースは少しの間、黙って私とユーリを見比べていた。このが怖いです。

「……僕の身体ならもう大丈夫だよ。お節介な魔王に、何か腹に入れておけと言われたから食堂へ来たんだ」
「流石は我が王。お優しい方だ」

 キースが口をきいてくれたので取り敢えずホッとした。アルクナイトがいヤツだということはもう解っているから驚かない。

「キース先輩、スープを用意しますね!」
「ああ、頼むよ……」

 私がカウンターへ向かうのと同時に、キースも私達が飲食しているテーブルの席に着いたのだが、

「ユーリ、キミはロックウィーナが拒まなかったらあのままキスしてたろ?」
「さぁて?」

 とっても不穏な会話が後ろから聞こえた。聞こえなかった振りをした。ユーリの考えが判らなかった。

 その後の会食では当たり障りのないお喋りが展開された。
 キースとユーリは今日お互いに無茶をしたなと苦笑し合い、ソルは黒猫の世話に勤しみ、私はというと焦って明日の天気について話していた。雨が降ろうがどうでもいいわ。
 私とユーリの寸前ちゅーの話題があれっきり出なくなったのは助かったが、同時に少し寂しくもあった。
 キースに焼いて欲しいと思うのは贅沢な望みなのかな……?


☆☆☆


 自分的に非常に疲れた会食を済ませて私は自室へ戻った。キースとユーリが回復したことを確認できた点については良かった。
 ……大変な一日だったな。ベッドに寝転んで今日という日を思い返してみた。

 次男猫のテレパシーで駆け付けてくれたAチームは、私達Bチームの酷い状態を見て心底驚いていた。
 吐血して意識を無くしたキース。彼にすがり付き泣く私。絶命したレスターの傍でソルから応急手当をほどこされながら、魂が抜けたようなうつろな表情となっていたユーリ。
 ルービックはまず、身体の内側をやられたキースへ治癒魔法をかけてくれた。それから止血されていたユーリにも。二人分の治療を終えたルービックは汗を掻き呼吸を乱していた。相当分の魔力を必要としたのだろう。並の術師だったら二人の内どちらかが手遅れとなっていたかもしれない。

 実は私も仲間達から心配されていた。
 キースの禁呪の痕跡を消す為に私がしたことを、ユーリがみんなに話して聞かせたのだ。「ロックウィーナの精神は限界に近い」と。自分こそレスターを失って深く傷付いていただろうに。
 結果、帰りの馬車からギルドで夕食を終えるまでの時間、私の近くには常に誰かが居ていろいろと世話をしてくれた。後から合流したCチームにも話が伝わり、私の周囲は更に賑やかとなった。独りで居たら暗い思考となっていただろうから、みんなには心から感謝している。
 机の上に乗った小物もその一環だ。私への見舞い品として、鈴音とマキアとエンが紙で折って作ってくれたのだ。鈴音は鶴と言う鳥。マキアは少し歪んでしまったが花。エンはどう折ったのか解らない超リアルな狼。

(本当に一枚の紙でどうやって折ったのよ、コレ)

 エンの複雑怪奇な狼を手に取って観察していると、部屋の扉が三回ノックされた。また誰かが訪ねて来てくれたようだ。ただしもう22時近い。鈴音ならいいけれど、男性ならたとえ複数人でも廊下で話そう。

「はい。どなたですか?」
「……僕だよ」
「!」

 扉の向こうに居たのはキースだった。「ふおぉっ」と声が出そうになった。
 すぐに扉を開けたら彼独りだけだった。

「………………」

 キースは気まずそうにたたずんでいる。だよね。真面目な彼はである女性の部屋の扉を、こんな遅い時刻に叩いたりしない。

「あの……どう」

 「どうかしましたか」と言いかけて私はやめた。そう聞いたらキースは用件だけ告げて去ってしまうだろうから。だんだん計算高くなっていく私。
 言葉を変えちゃいましょう。

「どうぞ、中へ」

 できるだけ普通に、ぎこちないながらも笑顔を作って自室に招いた私へ、キースが驚きの目を向けた。うん、我ながら大胆だよね。
 もうね、迷うのもウジウジ悩むのも嫌なんだ。「強くあれ」とルービックに言われた。そうなりたいよ。キースが私に頼れるくらいのたくましさが欲しい。

「……お邪魔します」

 やった!! 迷う素振りを見せたがキースが部屋に入ってくれたよー! 第一段階突破あぁぁ!!
 私はキースにイスを勧め、扉を閉めて内鍵を…………かけたかったけど我慢した。キースを軟禁するみたいになっちゃうからね。誰も来ませんように。
 イスが一脚しか無いので私はベッドに腰かけた。どきどきどき。
 私は緊張して、キースは何やら考え込んでいて、しばし私達はお互いを見るだけで言葉を発せられなかった。

「……ロックウィーナ」

 口火を切ったのはキースの方だった。

「は、はい」
「キミは大丈夫なのか……?」
「はい……?」

 質問の意図が判らないが身体に不調が無いので頷いた。キースは険しい表情をしている。

「今日は僕のせいで、キミにずいぶんと負担をかけてしまったね」

 あ、そのことか。負担が大きかったのはキースの方なのにな。ユーリもそうだけど、まずは自分のことを考えなきゃ駄目だよ?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜

いろは
恋愛
20歳ラノベ好きの喪女の春香。いつもの週末の様にラノベを深夜まで読み寝落ちし目覚めたら森の中に。よく読むラノベの様な異世界に転移した。 突然狼に襲われ助けてくれたのは赤髪の超男前。 この男性は公爵家嫡男で公爵家に保護してもらい帰り方を探す事に。 転移した先は女神の嫉妬により男しか生まれない国。どうやら異世界から来た春香は”迷い人”と呼ばれこの国の王子が探しているらしい。”迷い人”である事を隠し困惑しながらも順応しようと奮闘する物語。 ※”小説家になろう”で書いた話を改編・追記しました。あちらでは完結しています。よければ覗いてみて下さい

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...