ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

文字の大きさ
258 / 291

存在する限り(3)

しおりを挟む
 静かに朝食に集中していたソルが、ここで私を援護してくれた。

「その点は大丈夫だろう。コイツは身持ちが固そうな女だ。両想いになった直後にそんな大それたことはできないさ」

 ありがとうソル。でもね実は私、流されやすいタイプなんです。夕べもキースの体調が良ければどうなっていたか。
 その私のモノローグと似たことを、魔王がオブラートに包まずに言い放った。

「それがだなソル、こやつは男女のむつみ事に興味が有ると以前言っていた」
「おや、それは意外ですな」
「!」
「!」
「!」

 うぎゃ──! ばーかーやーろーう、バラすなや!!
 確かにそんな話をしたよ。アンダー・ドラゴン本拠地壊滅作戦から帰る馬車内だったっけ? アルクナイトとエリアスとキースが一緒だったような。
 私はみんなが讃えるような清らかな聖女ではなく、男女交際にもえっちなことにも関心が有るって言った。言ったけどもさ、今それを暴露すんな。
 男達の目の色が明らかに変わった。

「そっ、そうだった! ロックウィーナは好きな相手となら最終段階へ進むこと、やぶさかではないのだった!」

 芝居がかった仕草でエリアスが苦悩を表現し、私は熱を持った顔を両手で隠した。絶対に赤くなっている。

「レンフォード!! ロックウィーナ、恥ずかしがらなくていいんだよ。俺だってえっちなコトよく考えちゃうからさ。好きな相手とそうなりたいと思うのは普通のことだよ?」

 マキアがフォローしてくれたが更に恥ずかしくなった。私につられて鈴音もモジモジしている。彼女の前でこの話題はマズイって。

「もっと積極的に押してたら、俺ワンチャン有ったかな……?」

 ルパートがブツブツ呟いていた。うん。あなたとのデートは本当に危なかったんだよ。内緒だけどね。

「何だロックウィーナ、興味が有るなら早く言えよ。俺が優しく教えてやるから」
「いいからおまえは一度沈め。馬鹿兄貴が」

 ユーリとエンはテーブルの下で足技を応酬している。食堂がカオスとなりつつあるな。一般客が居ない時間帯で良かった。
 はあ、と息を吐いたのはキースだった。

「キミ達さ、女のコによってたかってセクハラして楽しい? 知りたいことが有るなら僕に聞きなよ。僕だって当事者だよ?」

 男達がハッと息を呑んだ。
 私とキースのことなのに、彼らが私にばかり絡んでいた理由はズバリ、キースのことが怖いからだ。
 キースの毒舌で攻撃されて心をえぐられ、魅了されて痴態と性癖を晒す羽目になる。これによってマキアが隠れM属性だとバレた。

「質問は何? 無いなら締め切るけど」

 ああ、馬車の時も勇者と魔王のえっちな暴走を、キースが怒って止めてくれたんだったよね。頼もしい。好き♡
 しかし今回のエリアスは引き下がらなかった。

「で、ではキース殿に伺うが……」

 敬語になっているが。

「貴公とロックウィーナの仲は進展したのだろうか?」
「そうだね。僕が不誠実な態度を取って開けてしまった距離を、幸いにも夕べ縮めることができたよ。寛大な彼女に感謝しきりだ」

 そんな。キースは私を不幸にしてしまうと悩んでいただけなのに。彼はいつも自分を下げて私を上げてくれる。

「夜かよ……」
「どっちかの部屋で? ヤバくね?」
「ち、ちなみにどの辺りまで進展したのだろうか。レディの前なので具体的な表現は避けた方が良いが、登山に例えて何合目まで登ったとか」
「ハハ、まだ一合目だよ」

 キースの答えに男性陣は救いの光を見たような面持おももちとなったが、

「まだキスしかできていないからね」

 すぐに奈落へ突き落された。これぞキースだ。
 あの……ところで「朝チュン」は何合目に当たりますか?

「キスしたの!? 合意の上で!?」

 裏返った声で確認してきたマキアへ、キースは爽やかに笑った。

「したよ。付き合っている男女だからね。自然な流れだった」

 よっしゃあぁぁぁ!! キースも認めました、私達は付き合ってます! 私の独り相撲じゃなくて良かったぁ!

「だ、だがまだ一合目、登頂していないのなら俺達にだってチャンスは有る!!」
「無いよ」

 エンの希望の糸を即座にキースが断ち切った。

「いやっ……、これからロックウィーナと親睦を深めていけばいつかは……」
「ならないね」

 8歳下の相手にもキースは容赦なかった。ルパートが疑問を呈した。

「キースさんは一度ヘタレたのに完全復活してやがるな。何が有ったんだ?」

 キースは私の目を見て微笑んだ。

「ロックウィーナが覚悟を見せたくれたから……。僕も幸せになる為にもう一度頑張ってみようって気になったんだ」

 キース……。

「それに……ライバルのはずのお節介野郎に励まされたからね。これで立ち上がらなかったら男じゃないだろう?」

 ライバルのお節介野郎?
 誰のことだろうと考えるまでもなかった。アルクナイトが鼻息荒く得意げな顔でニヤついていた。ヤツだ。他のみんなも気づいた。

「おいアル……、おまえキース殿の背中を押したのか?」
「嘘でしょ魔王様、敵に塩を贈ったんですか?」

 エリアスとマキアが怒気をまとったが、当の魔王は涼しい顔で自画自賛していた。

「ふっ……白め、そうか、俺様の言葉に後押しされたのか。まぁそうだな、人生の大先輩である俺の言葉には厚みが有るものな」

 エンが無表情でクナイを構えたが、流石にそれはマズイとルパートとユーリから羽交い絞めにされた。
 アルクナイトはそんな彼らに指摘した。

「まったく呆れた馬鹿者どもだ。俺に怒りをぶつける前にロックウィーナを見てみろ。白が交際宣言したことであんなに嬉しそうにしている」
「あ…………」
「……チッ」

 私ってば両の手を胸の前でこぶしにして、無意識の内に歓喜のポーズを作っていたんだね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜

いろは
恋愛
20歳ラノベ好きの喪女の春香。いつもの週末の様にラノベを深夜まで読み寝落ちし目覚めたら森の中に。よく読むラノベの様な異世界に転移した。 突然狼に襲われ助けてくれたのは赤髪の超男前。 この男性は公爵家嫡男で公爵家に保護してもらい帰り方を探す事に。 転移した先は女神の嫉妬により男しか生まれない国。どうやら異世界から来た春香は”迷い人”と呼ばれこの国の王子が探しているらしい。”迷い人”である事を隠し困惑しながらも順応しようと奮闘する物語。 ※”小説家になろう”で書いた話を改編・追記しました。あちらでは完結しています。よければ覗いてみて下さい

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...