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キースに触れた夜(1)
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フィースノーの街に駐在することになる王国兵団、マシューの実家エディオン家の私兵、そして我らが冒険者ギルドが連携して街の防衛に当たることとなった。もっとも細部のやり取りは第二・第七師団と王弟陛下が到着してからになる。
また明日、聖騎士の誰かがギルドへ連絡に来ますと告げてマシューは帰った。ルパートが頭を掻いた。
「とんでもねぇ事態になったな……。マスター、今日は俺達これからどうしたらいい?」
「戦いに備えて訓練しろ。今日は街の外へ出動している連中が居なくて良かったぜ。何かトラブルが起きて夜までに戻れなかったら、結界を張られて閉め出されるところだった」
良かった。セス達も街中に居るようだ。でもフィースノーへ向かっている旅人が、今夜から街へ入れなくなるんだよね……。その人たちが隣街のレクセンまで無事に避難できますように。
「三メートルの巨人……。十数体でティンガロを壊滅させたなんて、相当な強さですよね?」
自信無さげなマキアの呟き。彼の不安が私にも伝染した。
凄腕の拳闘士ですら束になっても敵わなかったのだ。果たして私にどれだけのことができるのだろう。
──駄目だ、そんな弱気でどうする!
バチーン。
移動した訓練場に渇いた音が響き、みんなが私に注目した。ソルが怪訝《けげん》そうな眼を向けた。
「おい貴様……。どうして自分の頬を叩いているんだ?」
「いやあの、気合いを入れようかと」
「加減を知らない馬鹿なのか? 馬鹿なんだな? 頬が赤くなっているだろうが!」
うん、強く叩き過ぎた。ジンジンするよ。
「ひゃうっ!?」
私の両頬にソルが両手を添えた。予期せぬ行動だったので一瞬ドキッとしたが、彼の手の平の冷たさにトキメキが瞬時に冷却された。
「こんな間抜けな負傷に、我が王の治癒のお力を借りる訳にはいかないからな」
散々な言われようだが、どうやら頬が腫れないように冷やしてくれているらしい。口は悪いがいいヤツだよね。強面だけどイケメンだし、乙女ゲームなら彼も攻略対象になりそうだな。アルクナイト編をクリアした後に開かれる隠しルート的な。
あっ……ソル、気持ちはとてもありがたいのですが冷た過ぎです。今度は凍傷を起こしそう。
「ありがとうソル、後は僕が引き受けよう」
白いローブの袖が視界に入り、そっと優しくソルの手を私から離した。
「……キース、おまえも苦労するな。恋仲になった女がこんなで」
「僕にとってはこの上ない幸せだよ。彼女はいつでも僕の心を温かくしてくれる」
温かいのはキースの手の方だよ。ソルに代わり私の頬を包んでくれた彼。背後から「チッ」「チッ」「チッ」と何人もの舌打ち音が聞こえたが気にしない。
人前でするイチャイチャと惚気、これは登山に例えると二合目くらい?
「オラ! 準備できたヤツから鍛錬開始だ、気合い入れやがれ!!」
ルパートの怒号がピンクの空気を掃った。彼とエリアスが木剣で打ち合うのを見ながら、私はキース、マキアと共に訓練場の壁際へ行って筋肉トレーニングを開始した。
霧の兵士がこの街にもやって来るかもしれないんだ。最悪な事態を想定してできることをやっておかないとね。
☆☆☆
(やっと諦めてくれたっぽい……)
夕食後に自室に戻っていた私は無駄な疲れに身体を支配されていた。
私とキースはキス止まりでまだ肉体関係には至っていない。そこに好機を見い出した年少組が入れ替わり立ち替わり、私の部屋の前に立ち扉をノックしたのだ。
「少し話せないか?」
「今夜は星が綺麗だよ。屋上へ上がって一緒に見ない?」
「よぉ、食堂でまた茶~しようぜ」
誘い文句は様々だ。
最初にエンが来て、彼が去った後にマキア。その次にはユーリ。これで終わったかと思ったらまたマキアが来た。
何度来られても二人きりになる訳にはいかない。私は来訪者を決して部屋に入れず廊下でお断りをした。
しょんぼりしたマキアが捨て犬のような潤んだ目を向けてきたが耐えた。絆されて甘い顔はできない。私はキースの恋人なのだから。
(年長組は静かなんだけどね。思うところは有っても見守る方を選んでくれたみたいだな)
アルクナイトが裏で押さえてくれているのかもしれない。彼に恋を応援される日が来るとは思わなかったよ。
(さて……、今夜はここからが本番だ……!)
ベッドに寝転んで私は他でもない、キースの来訪を今か今かと待っていた。
……待っていたのだが、一向にキースが現れない。ウサギをモチーフにした置時計の針はもうすぐ夜の11時を指そうとしていた。
(あれれ……。もしかしてキース、来ないつもりとか?)
逢う約束はしていない。しかし両想いとなった二人だ。昼間忙しくて二人の時間をなかなか作れないのだから、夜に遭うべきでしょうと私は考える。
(えええええ……)
ぶっちゃけると、私はキースに初めてを捧げようと準備万端だったりする。
いつもより念入りに身体を洗い歯も磨いた。部屋着の簡易ワンピースの下に装着しているのはお気に入りの下着だ。
昨日の今日で早過ぎると批判する人が居るかもしれない。でも私よりも若い歳で結婚と出産をした姉や幼馴染みのことを考えると、肉体交渉は決して大それたことではないと思う。恋人同士なら自然な行為だと。
ところが肝心のキースさんが不在なのである。このまま待ちぼうけを食らうと、張り切った自分と気合いを入れた下着が哀しいことになる。
また明日、聖騎士の誰かがギルドへ連絡に来ますと告げてマシューは帰った。ルパートが頭を掻いた。
「とんでもねぇ事態になったな……。マスター、今日は俺達これからどうしたらいい?」
「戦いに備えて訓練しろ。今日は街の外へ出動している連中が居なくて良かったぜ。何かトラブルが起きて夜までに戻れなかったら、結界を張られて閉め出されるところだった」
良かった。セス達も街中に居るようだ。でもフィースノーへ向かっている旅人が、今夜から街へ入れなくなるんだよね……。その人たちが隣街のレクセンまで無事に避難できますように。
「三メートルの巨人……。十数体でティンガロを壊滅させたなんて、相当な強さですよね?」
自信無さげなマキアの呟き。彼の不安が私にも伝染した。
凄腕の拳闘士ですら束になっても敵わなかったのだ。果たして私にどれだけのことができるのだろう。
──駄目だ、そんな弱気でどうする!
バチーン。
移動した訓練場に渇いた音が響き、みんなが私に注目した。ソルが怪訝《けげん》そうな眼を向けた。
「おい貴様……。どうして自分の頬を叩いているんだ?」
「いやあの、気合いを入れようかと」
「加減を知らない馬鹿なのか? 馬鹿なんだな? 頬が赤くなっているだろうが!」
うん、強く叩き過ぎた。ジンジンするよ。
「ひゃうっ!?」
私の両頬にソルが両手を添えた。予期せぬ行動だったので一瞬ドキッとしたが、彼の手の平の冷たさにトキメキが瞬時に冷却された。
「こんな間抜けな負傷に、我が王の治癒のお力を借りる訳にはいかないからな」
散々な言われようだが、どうやら頬が腫れないように冷やしてくれているらしい。口は悪いがいいヤツだよね。強面だけどイケメンだし、乙女ゲームなら彼も攻略対象になりそうだな。アルクナイト編をクリアした後に開かれる隠しルート的な。
あっ……ソル、気持ちはとてもありがたいのですが冷た過ぎです。今度は凍傷を起こしそう。
「ありがとうソル、後は僕が引き受けよう」
白いローブの袖が視界に入り、そっと優しくソルの手を私から離した。
「……キース、おまえも苦労するな。恋仲になった女がこんなで」
「僕にとってはこの上ない幸せだよ。彼女はいつでも僕の心を温かくしてくれる」
温かいのはキースの手の方だよ。ソルに代わり私の頬を包んでくれた彼。背後から「チッ」「チッ」「チッ」と何人もの舌打ち音が聞こえたが気にしない。
人前でするイチャイチャと惚気、これは登山に例えると二合目くらい?
「オラ! 準備できたヤツから鍛錬開始だ、気合い入れやがれ!!」
ルパートの怒号がピンクの空気を掃った。彼とエリアスが木剣で打ち合うのを見ながら、私はキース、マキアと共に訓練場の壁際へ行って筋肉トレーニングを開始した。
霧の兵士がこの街にもやって来るかもしれないんだ。最悪な事態を想定してできることをやっておかないとね。
☆☆☆
(やっと諦めてくれたっぽい……)
夕食後に自室に戻っていた私は無駄な疲れに身体を支配されていた。
私とキースはキス止まりでまだ肉体関係には至っていない。そこに好機を見い出した年少組が入れ替わり立ち替わり、私の部屋の前に立ち扉をノックしたのだ。
「少し話せないか?」
「今夜は星が綺麗だよ。屋上へ上がって一緒に見ない?」
「よぉ、食堂でまた茶~しようぜ」
誘い文句は様々だ。
最初にエンが来て、彼が去った後にマキア。その次にはユーリ。これで終わったかと思ったらまたマキアが来た。
何度来られても二人きりになる訳にはいかない。私は来訪者を決して部屋に入れず廊下でお断りをした。
しょんぼりしたマキアが捨て犬のような潤んだ目を向けてきたが耐えた。絆されて甘い顔はできない。私はキースの恋人なのだから。
(年長組は静かなんだけどね。思うところは有っても見守る方を選んでくれたみたいだな)
アルクナイトが裏で押さえてくれているのかもしれない。彼に恋を応援される日が来るとは思わなかったよ。
(さて……、今夜はここからが本番だ……!)
ベッドに寝転んで私は他でもない、キースの来訪を今か今かと待っていた。
……待っていたのだが、一向にキースが現れない。ウサギをモチーフにした置時計の針はもうすぐ夜の11時を指そうとしていた。
(あれれ……。もしかしてキース、来ないつもりとか?)
逢う約束はしていない。しかし両想いとなった二人だ。昼間忙しくて二人の時間をなかなか作れないのだから、夜に遭うべきでしょうと私は考える。
(えええええ……)
ぶっちゃけると、私はキースに初めてを捧げようと準備万端だったりする。
いつもより念入りに身体を洗い歯も磨いた。部屋着の簡易ワンピースの下に装着しているのはお気に入りの下着だ。
昨日の今日で早過ぎると批判する人が居るかもしれない。でも私よりも若い歳で結婚と出産をした姉や幼馴染みのことを考えると、肉体交渉は決して大それたことではないと思う。恋人同士なら自然な行為だと。
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