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キースに触れた夜(2)
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(夕べの感じだと、体力さえ有ればキースもOKな風だったのに)
キースは過去に性被害に遭ってる。だからあまり急ぐつもりは無かったのだが、昨夜のやり取りで私はすっかりその気になってしまった。
それと以前の馬車内での会話で、えっちなことにはキースも興味が有ると話してくれた。
(だから……キースだって私としたいよね……?)
……もしかしてあれは、私をフォローする為のリップサービスだったのかもしれない。本当のところはやっぱり、彼は性行為に嫌悪感を持っていてプラトニックなお付き合いを希望しているとか……?
キースとの初めてを期待して浮かれているのは私だけなのかな?
う~ん、独りで居ると暗い発想ばかりが出てくるよ。
(よし……! 私の方から逢いに行ってみよう。迷惑そうな顔をされたらサッと戻ってくればいいんだ)
私は廊下へ出た。先にトイレを済ませてから、私の部屋と同じ並びで一番端のキースの部屋の前まで行った。今は廊下に他の者の姿が無い。チャンスです。
心を決めて扉を三回ノックした。
「……はい?」
目当ての人から応答が有り私は一気に緊張した。ここまで来たんだ、頑張れ。
「夜遅くにすみません。ロックウィーナです」
「!…………」
やや間が空いた後に静かに扉が開かれた。
「……どうしたの?」
迎えてくれたキースのテンションが明らかに低かった。そしてラフな服装。完全に寝る寸前だったと思われる。
(やっちまった)
自分が招かれざる客だと察した私は、ササッと帰るプランBに切り替えた。
「眠る前に一目顔が見たかったんです。あはっ、これで良い夢が見られそうです。それでは先輩、また明日♡」
これならキースに気を遣わせず、尚且つ可愛い恋人アピールもできただろう。我ながら咄嗟に上手い言い訳が出たものだ。
ニコッと笑ってから私はその場を後にしようとしたのだが、キースに手首を掴まれてしまった。驚いてキースへ向き直ると彼は小さな声で言った。
「違うよね? ……来た理由」
あぎゃあ。見抜かれていた。恥ずかしさにワタワタしている私の手を、キースは優しく引いて部屋の中へ入れた。
あれ、結果オーライ? 入室を果たしちゃいましたけど。
しかし期待に胸を膨らませた私は、ベッドではなくイスへ案内されたのだった。
「待ってて。よく眠れるようにミルクティーを用意するから」
そして彼は部屋を出て行こうとした。給湯室へ向かおうとしたのだろう。
「待って、お茶はいいです」
今度は私がキースの腕を掴む番だった。薄着なもんで彼の筋肉の感触が手にハッキリ伝わった。やっぱりこの人は隠れマッチョさんだ。筋トレの腕立て伏せもスイスイこなしていたもんね。いや今集中すべきはそこじゃない。
「私、先輩と二人で過ごしたかったんです」
照れたけどちゃんと気持ちを伝えた。それに対するキースの返答は溜め息だった。ガーン。
続いたのはお説教。
「ロックウィーナ、女のコがこんな遅い時間に男の部屋を訪ねるもんじゃない。軽い女だと囁かれてキミの醜聞になるんだよ?」
真面目な彼らしい。私は別に他の人にどう思われたっていいのにさ。それに……。
「夕べは先輩が、私の部屋へ来てくれたじゃないですか」
「だって昨日は……」
私の反論にキースは一瞬言葉に詰まったが、頭を振って打ち消した。
「……とにかく、今夜は大人しく部屋へ戻るんだ。今後は迂闊な真似をしないように」
部屋に招かれたからテンション爆上がりしたのに酷いや。
キースは完全に「帰れモード」だった。廊下で説教をすると誰かに見られたり聞かれたりして、私が後でヒソヒソされるんじゃないか心配して部屋に入れてくれたっぽい。
お茶だけ飲ませて最初から帰す気だったかー。
いつもだったら彼の配慮に感謝するところだが今は違う。私はキースに、面倒見の良い先輩ではなく男になってもらいたいのだ。
どうすれば「帰れモード」から「受け入れモード」に変更できるかな?
(あ)
ここで私は一つ気づいた。まだキースの腕を掴んだままだということを。
繋がっているこの手、最大限に有効活用しなくては。
(えい)
私は指先に少し力を込めた。ピクッと彼は反応した。
続けて傍に立つ彼を見上げた。上目遣いと言うテクニックである。
興味の無い相手にやられたらウザイことこの上無い目線だが、好意を持っている相手に不意打ちされるとキュン♡とすると愛読の女性誌に書いてあった。ちなみに今月号の特集は「極めろ☆チラ見せ」だった。
(さぁどうなのパイセン。ボディタッチと上目遣いのコンボ。何かこう……込み上げてくるモノはない!?)
キースの顔の上部は前髪に隠れていてよく見えないが、頬が薄っすら赤くなっている気がした。イケてる? キテる?
「…………あぁもう!」
キースが掴む私の手を払い除けた。ガーン。
私から離れた彼はベッドへ向かい乱暴に腰を下ろし、両手で自身の頭をワシワシと掻いた。
……怒ってらっしゃる? しまった、ウザかったのか。
しかしキースは心配している私に言ったのだ。
「夜に、部屋で男と二人きりの状態で相手を刺激するんじゃない! 襲ってくれって言ってるようなものだろ!!」
「!…………」
連続技が効いていた。キースは私を思いっきり意識している状態みたいだ。
だというのに、彼は自分の足元を見ながらまた拒絶の言葉を口にした。
「もう自分の部屋へお帰り。いいコだから」
「………………」
意識してくれているはずなのに、「帰れモード」に「お兄ちゃん属性」が追加された。結界師のガードが固い。
今こそ「チラ見せ」の出番なのだろうか。私が来ているルームウェアはスカートタイプ。脚を組む振りをしてちょぴっと太股の露出を────いやいやいや、普段脚を組まない私がそんなことをしたら怪しまれる。それに雑誌の指南通りに肌をチラチラしていたらただの露出狂だよ。記事を書いたライター出てこい。
キースは過去に性被害に遭ってる。だからあまり急ぐつもりは無かったのだが、昨夜のやり取りで私はすっかりその気になってしまった。
それと以前の馬車内での会話で、えっちなことにはキースも興味が有ると話してくれた。
(だから……キースだって私としたいよね……?)
……もしかしてあれは、私をフォローする為のリップサービスだったのかもしれない。本当のところはやっぱり、彼は性行為に嫌悪感を持っていてプラトニックなお付き合いを希望しているとか……?
キースとの初めてを期待して浮かれているのは私だけなのかな?
う~ん、独りで居ると暗い発想ばかりが出てくるよ。
(よし……! 私の方から逢いに行ってみよう。迷惑そうな顔をされたらサッと戻ってくればいいんだ)
私は廊下へ出た。先にトイレを済ませてから、私の部屋と同じ並びで一番端のキースの部屋の前まで行った。今は廊下に他の者の姿が無い。チャンスです。
心を決めて扉を三回ノックした。
「……はい?」
目当ての人から応答が有り私は一気に緊張した。ここまで来たんだ、頑張れ。
「夜遅くにすみません。ロックウィーナです」
「!…………」
やや間が空いた後に静かに扉が開かれた。
「……どうしたの?」
迎えてくれたキースのテンションが明らかに低かった。そしてラフな服装。完全に寝る寸前だったと思われる。
(やっちまった)
自分が招かれざる客だと察した私は、ササッと帰るプランBに切り替えた。
「眠る前に一目顔が見たかったんです。あはっ、これで良い夢が見られそうです。それでは先輩、また明日♡」
これならキースに気を遣わせず、尚且つ可愛い恋人アピールもできただろう。我ながら咄嗟に上手い言い訳が出たものだ。
ニコッと笑ってから私はその場を後にしようとしたのだが、キースに手首を掴まれてしまった。驚いてキースへ向き直ると彼は小さな声で言った。
「違うよね? ……来た理由」
あぎゃあ。見抜かれていた。恥ずかしさにワタワタしている私の手を、キースは優しく引いて部屋の中へ入れた。
あれ、結果オーライ? 入室を果たしちゃいましたけど。
しかし期待に胸を膨らませた私は、ベッドではなくイスへ案内されたのだった。
「待ってて。よく眠れるようにミルクティーを用意するから」
そして彼は部屋を出て行こうとした。給湯室へ向かおうとしたのだろう。
「待って、お茶はいいです」
今度は私がキースの腕を掴む番だった。薄着なもんで彼の筋肉の感触が手にハッキリ伝わった。やっぱりこの人は隠れマッチョさんだ。筋トレの腕立て伏せもスイスイこなしていたもんね。いや今集中すべきはそこじゃない。
「私、先輩と二人で過ごしたかったんです」
照れたけどちゃんと気持ちを伝えた。それに対するキースの返答は溜め息だった。ガーン。
続いたのはお説教。
「ロックウィーナ、女のコがこんな遅い時間に男の部屋を訪ねるもんじゃない。軽い女だと囁かれてキミの醜聞になるんだよ?」
真面目な彼らしい。私は別に他の人にどう思われたっていいのにさ。それに……。
「夕べは先輩が、私の部屋へ来てくれたじゃないですか」
「だって昨日は……」
私の反論にキースは一瞬言葉に詰まったが、頭を振って打ち消した。
「……とにかく、今夜は大人しく部屋へ戻るんだ。今後は迂闊な真似をしないように」
部屋に招かれたからテンション爆上がりしたのに酷いや。
キースは完全に「帰れモード」だった。廊下で説教をすると誰かに見られたり聞かれたりして、私が後でヒソヒソされるんじゃないか心配して部屋に入れてくれたっぽい。
お茶だけ飲ませて最初から帰す気だったかー。
いつもだったら彼の配慮に感謝するところだが今は違う。私はキースに、面倒見の良い先輩ではなく男になってもらいたいのだ。
どうすれば「帰れモード」から「受け入れモード」に変更できるかな?
(あ)
ここで私は一つ気づいた。まだキースの腕を掴んだままだということを。
繋がっているこの手、最大限に有効活用しなくては。
(えい)
私は指先に少し力を込めた。ピクッと彼は反応した。
続けて傍に立つ彼を見上げた。上目遣いと言うテクニックである。
興味の無い相手にやられたらウザイことこの上無い目線だが、好意を持っている相手に不意打ちされるとキュン♡とすると愛読の女性誌に書いてあった。ちなみに今月号の特集は「極めろ☆チラ見せ」だった。
(さぁどうなのパイセン。ボディタッチと上目遣いのコンボ。何かこう……込み上げてくるモノはない!?)
キースの顔の上部は前髪に隠れていてよく見えないが、頬が薄っすら赤くなっている気がした。イケてる? キテる?
「…………あぁもう!」
キースが掴む私の手を払い除けた。ガーン。
私から離れた彼はベッドへ向かい乱暴に腰を下ろし、両手で自身の頭をワシワシと掻いた。
……怒ってらっしゃる? しまった、ウザかったのか。
しかしキースは心配している私に言ったのだ。
「夜に、部屋で男と二人きりの状態で相手を刺激するんじゃない! 襲ってくれって言ってるようなものだろ!!」
「!…………」
連続技が効いていた。キースは私を思いっきり意識している状態みたいだ。
だというのに、彼は自分の足元を見ながらまた拒絶の言葉を口にした。
「もう自分の部屋へお帰り。いいコだから」
「………………」
意識してくれているはずなのに、「帰れモード」に「お兄ちゃん属性」が追加された。結界師のガードが固い。
今こそ「チラ見せ」の出番なのだろうか。私が来ているルームウェアはスカートタイプ。脚を組む振りをしてちょぴっと太股の露出を────いやいやいや、普段脚を組まない私がそんなことをしたら怪しまれる。それに雑誌の指南通りに肌をチラチラしていたらただの露出狂だよ。記事を書いたライター出てこい。
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