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鈴音の覚醒(2)
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「ではスズネ、霧が世界の全てを吞み込んでしまった時、現実世界のキミは死んでしまうのか!?」
エリアスが割り込み、鈴音は微笑んだ。
「そうなると思います」
「馬鹿! 簡単に言うな!! その若さで死んでしまうんだぞ!? 何故今まで相談しなかったんだ!」
本気で心配して怒るエリアスに鈴音は本心を語った。
「……ここで死にたかったんです、私」
「?…………」
「現実世界には私の居場所が無かったんです」
泣く一歩手前の震え声で、鈴音は隠していた秘密を打ち明けた。
「病弱な私は周囲から常にお荷物扱いされていました。家族に迷惑をかけ、学校の同級生達からは存在自体が邪魔なんだと、はっきりと口に出して敵意を向けられることがしばしば有りました」
「スズネ……」
「生まれたからには頑張って生きようと思いました。でも階段から落ちた瞬間に、緊張の糸がぷっつり切れてしまったんです。批判の目を向けられながら、弱い身体を引き摺《ず》って生活することに耐えられなくなりました」
「………………」
「私は目覚めることを放棄して、自分が書いた小説の世界へ逃げ込んだんです。精神世界であるこちらでは走っても眩暈を起こさないし、大きな声を出しても頭が痛まないんです」
私達が当たり前にやっている動作、そんなことにすら鈴音は感動していた。
「それで……私、頑張ることをやめた現実世界の肉体が機能を停止するまで、こちらの世界で過ごすつもりだったんです。憧れのエリアスさんとロックウィーナを見守りながら」
哀しい告白だった。私は鈴音の夢を見て彼女の世界のことを多少知っていたが、認識していたよりもずっと重たいものを鈴音は背負っていた。
アルクナイトが確認した。
「女神、現実世界へ戻ればまたつらい目に遭うぞ?」
「解ってる。でもみんなを私に付き合わせて死なせたくない。私……現実世界へ戻ってもう一度頑張ってくる」
「では今のおまえには死ぬ気持ちが無くなった、それで間違いないな?」
「うん、誓うよ。目を覚まして病気と闘う」
赤い目をしているが鈴音は前向きだった。覚醒したのだ。
「そして容体が安定したらすぐに新しい小説を書くよ」
「新しい?」
「さっきも言ったけれど、この世界はもう破綻している。だからここと似た世界観を持つ新しい小説を用意しなくちゃならないの。人喰い霧もアンダー・ドラゴンも存在しない住みやすい世界を創造して、キャラクターであるみんなをそちらへ引っ越させる。そうすれば亡くなった人も復活できるはず」
そんな大それたことができるのだろうか……? いや、きっとできる。鈴音は実際にこの世界を構築した女神なんだもの。
「なるほど、パラレルワールドか」
「だけどよ、そこへ移動した俺達はちゃんと自我を保てるのかな?」
ユーリが不安を吐露した。ああそうか、一から始まる新しい小説の世界、また私達は設定されただけの人形に戻ってしまうかもしれないんだ。
女神である鈴音が笑顔で太鼓判を押した。
「あなた達なら大丈夫。勝手に動いて作者の私を散々困らせてくれたキャラクターなんだから。新しい小説でも上手くやれると信じてる」
その言葉で空気が軽くなり、リリアナが余計なことを言った。
「僕は新世界の誕生は大歓迎ですね。キースお兄様とウィーお姉様の関係がリセットされるだろうし」
「あ」
「あ」
「そうか!」
途端に野郎達が活気づいた。リリアナ~、あなた祝福してくれたんじゃなかったの?
「ビバ! 新世界!!」
「レンフォード!」
ルパートとマキアがハイタッチを交わしていた。キースが睨んでいるからその辺にしておきなさい。
鈴音はもう一度深呼吸をして、それから深々と頭を下げた。
「もっと早く言うべきでした。黙っていた卑怯で臆病な私を許して下さい。必ず新世界を創造して皆さんに償います」
「スズネ」
長テーブルの向かい側に座るルービックが静かに述べた。
「キミは臆病者ではない。前にアンダー・ドラゴンの残党狩りで漁村へ赴いた時、下がっていろと皆が勧めたのに、アンダー・ドラゴンという存在をこの世に産み落とした自分には見届ける責任が有ると言って、キミは決して退かなかったね」
「………ルービックさん」
「そして今は皆を助ける為に困難に立ち向かおうとしている。卑怯者でもない」
「……………………」
鈴音の涙腺がついに決壊し、三男猫のルディオが泣く彼女の頭をよしよしと撫ぜた。
エリアスが割り込み、鈴音は微笑んだ。
「そうなると思います」
「馬鹿! 簡単に言うな!! その若さで死んでしまうんだぞ!? 何故今まで相談しなかったんだ!」
本気で心配して怒るエリアスに鈴音は本心を語った。
「……ここで死にたかったんです、私」
「?…………」
「現実世界には私の居場所が無かったんです」
泣く一歩手前の震え声で、鈴音は隠していた秘密を打ち明けた。
「病弱な私は周囲から常にお荷物扱いされていました。家族に迷惑をかけ、学校の同級生達からは存在自体が邪魔なんだと、はっきりと口に出して敵意を向けられることがしばしば有りました」
「スズネ……」
「生まれたからには頑張って生きようと思いました。でも階段から落ちた瞬間に、緊張の糸がぷっつり切れてしまったんです。批判の目を向けられながら、弱い身体を引き摺《ず》って生活することに耐えられなくなりました」
「………………」
「私は目覚めることを放棄して、自分が書いた小説の世界へ逃げ込んだんです。精神世界であるこちらでは走っても眩暈を起こさないし、大きな声を出しても頭が痛まないんです」
私達が当たり前にやっている動作、そんなことにすら鈴音は感動していた。
「それで……私、頑張ることをやめた現実世界の肉体が機能を停止するまで、こちらの世界で過ごすつもりだったんです。憧れのエリアスさんとロックウィーナを見守りながら」
哀しい告白だった。私は鈴音の夢を見て彼女の世界のことを多少知っていたが、認識していたよりもずっと重たいものを鈴音は背負っていた。
アルクナイトが確認した。
「女神、現実世界へ戻ればまたつらい目に遭うぞ?」
「解ってる。でもみんなを私に付き合わせて死なせたくない。私……現実世界へ戻ってもう一度頑張ってくる」
「では今のおまえには死ぬ気持ちが無くなった、それで間違いないな?」
「うん、誓うよ。目を覚まして病気と闘う」
赤い目をしているが鈴音は前向きだった。覚醒したのだ。
「そして容体が安定したらすぐに新しい小説を書くよ」
「新しい?」
「さっきも言ったけれど、この世界はもう破綻している。だからここと似た世界観を持つ新しい小説を用意しなくちゃならないの。人喰い霧もアンダー・ドラゴンも存在しない住みやすい世界を創造して、キャラクターであるみんなをそちらへ引っ越させる。そうすれば亡くなった人も復活できるはず」
そんな大それたことができるのだろうか……? いや、きっとできる。鈴音は実際にこの世界を構築した女神なんだもの。
「なるほど、パラレルワールドか」
「だけどよ、そこへ移動した俺達はちゃんと自我を保てるのかな?」
ユーリが不安を吐露した。ああそうか、一から始まる新しい小説の世界、また私達は設定されただけの人形に戻ってしまうかもしれないんだ。
女神である鈴音が笑顔で太鼓判を押した。
「あなた達なら大丈夫。勝手に動いて作者の私を散々困らせてくれたキャラクターなんだから。新しい小説でも上手くやれると信じてる」
その言葉で空気が軽くなり、リリアナが余計なことを言った。
「僕は新世界の誕生は大歓迎ですね。キースお兄様とウィーお姉様の関係がリセットされるだろうし」
「あ」
「あ」
「そうか!」
途端に野郎達が活気づいた。リリアナ~、あなた祝福してくれたんじゃなかったの?
「ビバ! 新世界!!」
「レンフォード!」
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鈴音はもう一度深呼吸をして、それから深々と頭を下げた。
「もっと早く言うべきでした。黙っていた卑怯で臆病な私を許して下さい。必ず新世界を創造して皆さんに償います」
「スズネ」
長テーブルの向かい側に座るルービックが静かに述べた。
「キミは臆病者ではない。前にアンダー・ドラゴンの残党狩りで漁村へ赴いた時、下がっていろと皆が勧めたのに、アンダー・ドラゴンという存在をこの世に産み落とした自分には見届ける責任が有ると言って、キミは決して退かなかったね」
「………ルービックさん」
「そして今は皆を助ける為に困難に立ち向かおうとしている。卑怯者でもない」
「……………………」
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