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鈴音の覚醒(1)
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「これからはこのフィースノーが国の中心となるのだな?」
「ああ。王族最後の一人となられた王弟殿下を旗印として戦うことになる」
私はアルクナイトとルービックの会話をぼんやり聞いていた。怖い。知らせが届いていなかっただけで、この一週間で大勢の人と国土が霧に呑まれていたなんて。
「王弟などはお飾りの君主だろう。大臣と貴族の大半が死んだ今、実際のリーダーは騎士団か?」
「……ああ。騎士団長が王都で殉職されたので、第二師団を率いる副団長が実権を握ることになる。それとフィースノー男爵だ」
「ニャンコの……マシューの叔父と父親か。おいマシュー、この事態を収束できたらエディオン家が後世に名を残すことになるぞ。気張るがいい」
アルクナイトの鼓舞を受けたマシューは苦笑いした。
「ハハハ……、ちょっと自信が無いですね。事が大き過ぎる」
いつもの積極性が彼から消えていた。無理もない。だって王都を落とした敵相手に、十分の一の兵力でどう立ち向かえばいいの?
ディーザ領と魔王領が無事だったら協力できたのに。全てが後手後手に回ってしまっている。
「……死にたくない」
皆が抱いていた願望を吐き出したのは、意外にも死と隣り合わせの生活をしていた忍者のユーリだった。
「俺の犠牲で誰かが救われるなら喜んでこの身を捧げよう。だがこのままでは誰一人生き残れずに全滅だ。未来に何の希望もなくただ死ぬなんざ御免だ」
解る気がする。そもそも死にたくなんてないけれど、助かる人が居たら彼らに未来と言う名の希望を託せる。でも霧は人も大地も等しく吞み込んでしまうのだ。後には何も残らない。「無」だ。
「……誠に遺憾だ。何もかもが無くなってしまうのは救いが無い」
ソルが嘆き、マキアも続いた。
「俺も死にたくない。好きなコができたり、魔法の可能性について考えたりして毎日が充実していたのに。もっと生きていたいよ」
隣の席のキースが何も言わずに私の肩を抱いた。キースと一緒に死ねるのは幸せかもしれないが、「無」になったら私達が積み重ねてきた記憶も消えてしまうのだろうか。そんなのは嫌だ。
(でも……どうしようもない)
敵が強過ぎるのだ。絶望の空気が会議室を支配していた。キースと密着しているのに寒い。身体が微かに震える。それなのに喉が渇く。
怖い。怖い。怖い。存在が無くなるということがとてつもなく怖い。
「…………死なせない。世界を終わらせない」
唯一前向きな発言をする者が居た。
「スズネ……?」
エリアスが驚いた顔を鈴音へ向けた。みんなもそうだ。
誰よりも蒼い顔をして、白くなるほど力を込めてテーブルの上で拳を握る鈴音が、瞳に強い力を宿していた。
「女神の私がみんなを生かす。だから大丈夫だよ」
鈴音の気持ちは嬉しかった。しかし実現するには大きな問題点が有る。私と同じことを考えたエンが遠慮がちに指摘した。
「スズネ……、アンタは力のほとんどを失って、今は世界を修復する奇跡を起こせないんだろう?」
「うん、ここに居る限りは」
「? 場所を移せばいいのか?」
「うん、現実の世界へ私が戻ればいいの。そうすればまた小説を書ける」
「!」
全員が鈴音に注目した。エドガーが興奮気味に尋ねた。
「小説さえ書けばこの世界が元に戻るのか!?」
「元には戻せない。もうこの世界の物語は破綻してしまっているから」
「…………。人喰い霧の発生で詰んでしまったということか?」
「そう。この世界はもうすぐ死ぬ。私の本当の肉体と同じように」
「え……?」
鈴音は深呼吸してから言った。
「現実世界の私は死にかけているの。霧が発生したのはたぶんそのせい」
「!…………」
皆は困惑した。目の前に居る少女が瀕死の状態?
片眉を上げてアルクナイトが詰問した。
「おい女神、どういうことだか詳しく説明しろ」
「私の本体は現実世界の病院……、治療院に入院しているの。昏睡状態で」
「おまえは病弱という話だったな。病が悪化したのか?」
「それも有る。でも直接の原因は階段から落ちて頭を打ったことよ」
「………………」
アルクナイトが推論を口にした。
「まさかあの人喰い霧は……、おまえの生命値の減少に伴って発生したのか?」
「そうなんだと思う。確証は無いけれど」
全員が目を見開いた。霧の侵攻は病の進行を表していた……?
「そうか……! 創造の女神が死にかけているから、世界が崩壊を始めたんだな」
「ああ。王族最後の一人となられた王弟殿下を旗印として戦うことになる」
私はアルクナイトとルービックの会話をぼんやり聞いていた。怖い。知らせが届いていなかっただけで、この一週間で大勢の人と国土が霧に呑まれていたなんて。
「王弟などはお飾りの君主だろう。大臣と貴族の大半が死んだ今、実際のリーダーは騎士団か?」
「……ああ。騎士団長が王都で殉職されたので、第二師団を率いる副団長が実権を握ることになる。それとフィースノー男爵だ」
「ニャンコの……マシューの叔父と父親か。おいマシュー、この事態を収束できたらエディオン家が後世に名を残すことになるぞ。気張るがいい」
アルクナイトの鼓舞を受けたマシューは苦笑いした。
「ハハハ……、ちょっと自信が無いですね。事が大き過ぎる」
いつもの積極性が彼から消えていた。無理もない。だって王都を落とした敵相手に、十分の一の兵力でどう立ち向かえばいいの?
ディーザ領と魔王領が無事だったら協力できたのに。全てが後手後手に回ってしまっている。
「……死にたくない」
皆が抱いていた願望を吐き出したのは、意外にも死と隣り合わせの生活をしていた忍者のユーリだった。
「俺の犠牲で誰かが救われるなら喜んでこの身を捧げよう。だがこのままでは誰一人生き残れずに全滅だ。未来に何の希望もなくただ死ぬなんざ御免だ」
解る気がする。そもそも死にたくなんてないけれど、助かる人が居たら彼らに未来と言う名の希望を託せる。でも霧は人も大地も等しく吞み込んでしまうのだ。後には何も残らない。「無」だ。
「……誠に遺憾だ。何もかもが無くなってしまうのは救いが無い」
ソルが嘆き、マキアも続いた。
「俺も死にたくない。好きなコができたり、魔法の可能性について考えたりして毎日が充実していたのに。もっと生きていたいよ」
隣の席のキースが何も言わずに私の肩を抱いた。キースと一緒に死ねるのは幸せかもしれないが、「無」になったら私達が積み重ねてきた記憶も消えてしまうのだろうか。そんなのは嫌だ。
(でも……どうしようもない)
敵が強過ぎるのだ。絶望の空気が会議室を支配していた。キースと密着しているのに寒い。身体が微かに震える。それなのに喉が渇く。
怖い。怖い。怖い。存在が無くなるということがとてつもなく怖い。
「…………死なせない。世界を終わらせない」
唯一前向きな発言をする者が居た。
「スズネ……?」
エリアスが驚いた顔を鈴音へ向けた。みんなもそうだ。
誰よりも蒼い顔をして、白くなるほど力を込めてテーブルの上で拳を握る鈴音が、瞳に強い力を宿していた。
「女神の私がみんなを生かす。だから大丈夫だよ」
鈴音の気持ちは嬉しかった。しかし実現するには大きな問題点が有る。私と同じことを考えたエンが遠慮がちに指摘した。
「スズネ……、アンタは力のほとんどを失って、今は世界を修復する奇跡を起こせないんだろう?」
「うん、ここに居る限りは」
「? 場所を移せばいいのか?」
「うん、現実の世界へ私が戻ればいいの。そうすればまた小説を書ける」
「!」
全員が鈴音に注目した。エドガーが興奮気味に尋ねた。
「小説さえ書けばこの世界が元に戻るのか!?」
「元には戻せない。もうこの世界の物語は破綻してしまっているから」
「…………。人喰い霧の発生で詰んでしまったということか?」
「そう。この世界はもうすぐ死ぬ。私の本当の肉体と同じように」
「え……?」
鈴音は深呼吸してから言った。
「現実世界の私は死にかけているの。霧が発生したのはたぶんそのせい」
「!…………」
皆は困惑した。目の前に居る少女が瀕死の状態?
片眉を上げてアルクナイトが詰問した。
「おい女神、どういうことだか詳しく説明しろ」
「私の本体は現実世界の病院……、治療院に入院しているの。昏睡状態で」
「おまえは病弱という話だったな。病が悪化したのか?」
「それも有る。でも直接の原因は階段から落ちて頭を打ったことよ」
「………………」
アルクナイトが推論を口にした。
「まさかあの人喰い霧は……、おまえの生命値の減少に伴って発生したのか?」
「そうなんだと思う。確証は無いけれど」
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