23 / 291
幕間 レクセン支部の二人(2)
しおりを挟む「あーオジさん、俺は日替わりでお願いしまーす!」
「おうよ! そっちの兄さんはどうする?」
「……魚」
「ん?」
「コイツ魚料理好きなんですよー。何か有ります?」
「今日出せるのはヒラメのムニエルくらいだな」
「エンそれでいいか? いいんだな? ムニエルでお願いしまーす!」
「ハハハ、兄さん元気いいな」
「レクセン支部から来たマキアとエンって言います! しばらくフィースノーのギルドに滞在しますんで宜しくです!!」
賑やかなのはマキア一人だけだった。相棒のエンは相槌すらまともに打っていないのに、マキア一人でベラベラベラベラ喋っていた。ある種の才能だな。
料理のトレーを持って振り替えった彼らと目が合った。
「あ、ロックウィーナさんにルパートさん!」
マキアは真っ直ぐ私達のテーブルへ近付いてきた。エンも追随した。
「ご一緒させて下さい!! お隣いいですか?」
愛嬌たっぷりのマキアの後ろでエンが眉間に皺を寄せていた。彼は絶対人見知りするタイプだぞ、そっちこそいいの?
「私は……構わないけど」
ルパートと二人きりは何だか怖い。
「やった! フィースノー支部の皆さんとは、仕事以外でもお話ししたかったんです!」
ニッコニッコな笑顔でマキアは私の隣の席に座った。人懐っこい青年だ。対するエンは無言でマキアの対面、ルパートの隣に座った。覆面の下で舌打ちしている気がする。
「ルパートさんとロックウィーナさんって、お付き合いされているんですか?」
いきなりマキアに爆弾発言を投下され、私は口に含んだ付け合わせのブロッコリーを噴き出しそうになった。危ない。
「してないです」
私は速攻否定した。ルパートの顔も引き摺っていた。
「えっ、そうなんですか? 俺はてっきり……」
「ええと、マキア……くん」
「呼び捨てにして下さい、俺達の方が年下なんですから。ギルドの勤務年数も少ないと思います」
「ではマキア、どうして俺とウィーが付き合っていると思ったんだ?」
「だってさっきの会議中、ルパートさんがロックウィーナさんをずっと見ていたから」
「!!」
マキアに指摘されたルパートは顔を赤らめた。自身でも火照りを感じたのか、ルパートは右手で顔の大半を隠した。
「俺は……、初対面の相手にもそう見られるような態度を取ってんのか?」
そうだよ。だから私は一生の不覚と言ってもいい誤解をしたんだ。猛省してよね。
「お二人でバディを組んでいるんですよね?」
マキアはハンバーグを切りながら私に尋ねた。
「えぇまぁ……」
「男女で命懸けの出動したら、信頼を通り越して恋愛感情とか芽生えませんか?」
芽生えたよ。そして玉砕したんだよ。アハハハハ。
「私達は……先輩と後輩のままだよ」
「そうなんですか? 俺は女性と出動したことないから憧れなんです。相談して助け合って……、よっぽど苦手なタイプじゃなければ、俺だったら絶対に恋に落ちちゃいますね!」
落ちたよ。身をもって体験したよ。ルパートは美男子だから当時の私はドキドキしっ放しだったよ。ハハハハハ。
「今の私は仕事に恋愛感情を絡めたくないな。面倒だもの」
私は遠回しに「これ以上聞くな」と釘を刺したつもりだった。
「ええ~勿体無い! 恋するってイイことですよ?」
察してくれない。マキアは阿保のコだった。
「ルパートさんカッコイイし、ロックウィーナさんは美人だからお似合いですよ。どうですか? これを機にお互いを意識してみては」
もうその時期は終わったんだってば。そっとしておいて。でもお世辞だろうけど美人って言ってくれてありがとう。
「ロックウィーナさんの好きなタイプって……」
ドン! とエンが水の入った木製のコップを、テーブルに叩き付けるように置いて大きな音を立てた。みんなの視線がエンに集中した。
「……マキア、ズケズケ質問し過ぎ。彼女困ってる」
およ?
「あっ、すみません!」
マキアがハッとした顔をして私に謝ってきた。
注意したエンはもうすまし顔で食事を再開している。覆面を外しているので顔全体が見えたが、切れ長の瞳も含めてエキゾチックな顔立ちだな。肌の色も私達に比べて若干濃いし、彼は遠い地から流れてきた移民なのかもしれない。
「俺ってばすぐに馴れ馴れしくしちゃって。距離の詰め方が早いってよく注意されるんです。ホントすみません!」
ペコペコ何度も頭を下げるマキアをフォローした。
「あの……、話しかけてくれたことに関しては嬉しかったよ? これから一緒に仕事していくんだから、どうせなら仲良くなりたいって私も思うし」
途端にパアッと顔を輝かせて笑顔になったマキア。懐いたワンコみたいで可愛い。
「でも私……恋愛関係の話題が苦手なんだ。そこだけゴメンね?」
「はい! 気をつけます!」
良かった。グイグイ来られてどうしようかと思ったが、マキアはちゃんと話せば解る相手だった。
エンも言葉は少ないが気遣いのできる青年のようだ。同席の際に眉間に皺を寄せたのは、相棒のマキアが何かやらかさないか心配していたんだな。
この調子ならレクセン支部の二人とは上手くやっていけそうだ。
……それはそうとして、現在一番の問題はルパートとの話し合いだよね。どうしようか。
何とか理由をつけて断ろうとしている私が居る。散々ルパートのことを責めておいて、今度は私が逃げてるんじゃないか。だけど今の私は彼と真剣に向き合う勇気が持てない。
このままじゃあ、六年前の告白の悪夢はいつまで経っても終わらないのに。私の馬鹿野郎。
2
あなたにおすすめの小説
時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜
いろは
恋愛
20歳ラノベ好きの喪女の春香。いつもの週末の様にラノベを深夜まで読み寝落ちし目覚めたら森の中に。よく読むラノベの様な異世界に転移した。
突然狼に襲われ助けてくれたのは赤髪の超男前。
この男性は公爵家嫡男で公爵家に保護してもらい帰り方を探す事に。
転移した先は女神の嫉妬により男しか生まれない国。どうやら異世界から来た春香は”迷い人”と呼ばれこの国の王子が探しているらしい。”迷い人”である事を隠し困惑しながらも順応しようと奮闘する物語。
※”小説家になろう”で書いた話を改編・追記しました。あちらでは完結しています。よければ覗いてみて下さい
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
