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幕間 レクセン支部の二人(1)
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(早めにお昼ご飯を食べておこうかな)
現在の時刻は11時12分。13時の集合時間までにはまだまだ余裕が有ったが、特にやりたいことが無かった私は食堂へ向かった。気まずさからルパートと顔を合わせたくなくて、食堂が混む時間帯を避けたかったという点も有る。
ギルドの食堂は冒険者達にも開放されている。味はそれなりだが安いので人気だ。
「よう、ウィー。今日も日替り定食かい?」
コックのジョセフが声をかけてきた。元Cランク冒険者だった気のいいオヤジさんだ。剣の替わりに現在は包丁を握っている。
「うん、日替りでお願いします」
今日は豚挽き肉を使用したハンバーグ定食だった。けっこう好き。牛さんのお肉は高価なのでギルド食堂にはあまり登場しない。
ちなみに私は好き嫌いが少なくレバー以外なら基本食べられる。レバーだけは駄目だ。口に含んだ途端に血の香りと鉄の味が広がって、どうしても飲み込めないのである。
「あそこでルパートがずっとおまえさんを待ってるぞ。早く行ってやんな」
「え?」
定食が乗ったトレーを受け取りながらジョセフの目線を追うと、その先に一番会いたくなかった奴が居た。うげぇ。
でも妙だな。面倒臭がりなルパートはいつもカウンター近くの席に座りたがるのに、今日は客がまばらで席がたくさん空いている状態で、壁際の一番端の席に座っていた。そのせいでジョセフに言われるまで気づかなかった。
すっごい無視したかった。でもルパートが右手で私を手招きしたので行かざるを得なかった。先輩でおまけに上司だからなぁ。
「……どうも」
何が「どうも」なのか自分でも判らないないが、取り敢えずルパートに挨拶して対面に着席した。彼の前に皿は無く飲み物のグラスだけだった。もう食事を終えたのだろうか? だったら部屋に戻っていればいいのに。
ルパートが黙っていたので構わず食べ始めることにした。
「……………………」
ルパートはただ私を見ていた。すっごく食べづらい。あれですか? 見つめることで食事に集中させず、私を消化不良にするという新しい嫌がらせを思いついたんですか先輩。
抗議しようとしたところで、ルパートの方から口を開いた。
「……悪かった」
ん?
「今まで調子に乗り過ぎた」
んんんんん!?
私はまたおブス顔になっていたと思う。だって信じられない言葉が彼の口から飛び出したのた。
ルパートが真面目に謝っている? これまでは謝ったとしても「ワリィワリィ」とか「サーセン」とか、まったく心がこもっていなくて神経逆撫でするだけだったのに。
「どうしたんですか先輩。食あたりでも起こしましたか!?」
「おまえな……。いや、俺がしてきたこと考えれば信用されなくて当然か」
「!………………」
謝るだけじゃなくて自己分析もできている? これから雪……どころか槍でも降るんじゃあるまいか。
「本当、どうしたんですか急に」
本気で心配するレベルだった。ルパートそっくりな顔をした素直なこの男は誰やねん。
「……悪いことしたと思ってるんだよ」
大丈夫? 新種のモンスターに身体を乗っ取られてない?
「それは、会議室で私とエリアスさんに怒鳴ったことですか? あ、イスを扉にぶつけてましたね。あれには引きました」
「それも有る。それと……六年前のことも」
ドクン。私の心臓が跳ね上がった。
……六年前のことって、私が告白したあれを指しているんだよね? ちょっと待ってよ、何でほじくり返すワケ? アンタが無かったことにしたんじゃないか。
「きちんとおまえに向き直って話すべきだった」
当時はそれを心から望んでいた。でも叶わなかった。どうして今になって?
キースが彼を諭してくれたのだろうか?
「ウィー、俺は……」
ドワッと、食堂入口付近が騒がしくなった。賑やかな客が来店したようだ。
「……ここでするような話じゃないな。できれば俺かおまえ、どちらかの部屋へ行きたいんだが……いいか? 今日が無理ならおまえの都合の良い時に」
ドクンドクンドクン。耳が熱を持った。
ピッキングして勝手に部屋へ入るケダモノが、私から許可を貰おうとしている。私の都合を考慮してくれている。
ルパートの誠実な対応。ずっと待ち望んでいた状況が目の前に有るというのに、私は恐れから即答できなかった。
(彼を信じて……また)
期待して突き放される、あの時の苦い記憶が脳裏を駆け巡って舌がピリピリ痙攣した。
「いっや~、リリアナちゃんてば超カワイイ! ヤバくね? ヤバくね?」
個人的に修羅場だった私の耳に能天気な声が届いた。ルパートの真剣な眼差しから逃れようと顔をそちらへ向けると、そこにはレクセン支部から来たマキアとエンが居た。賑やかな客とは彼らだったのか。
現在の時刻は11時12分。13時の集合時間までにはまだまだ余裕が有ったが、特にやりたいことが無かった私は食堂へ向かった。気まずさからルパートと顔を合わせたくなくて、食堂が混む時間帯を避けたかったという点も有る。
ギルドの食堂は冒険者達にも開放されている。味はそれなりだが安いので人気だ。
「よう、ウィー。今日も日替り定食かい?」
コックのジョセフが声をかけてきた。元Cランク冒険者だった気のいいオヤジさんだ。剣の替わりに現在は包丁を握っている。
「うん、日替りでお願いします」
今日は豚挽き肉を使用したハンバーグ定食だった。けっこう好き。牛さんのお肉は高価なのでギルド食堂にはあまり登場しない。
ちなみに私は好き嫌いが少なくレバー以外なら基本食べられる。レバーだけは駄目だ。口に含んだ途端に血の香りと鉄の味が広がって、どうしても飲み込めないのである。
「あそこでルパートがずっとおまえさんを待ってるぞ。早く行ってやんな」
「え?」
定食が乗ったトレーを受け取りながらジョセフの目線を追うと、その先に一番会いたくなかった奴が居た。うげぇ。
でも妙だな。面倒臭がりなルパートはいつもカウンター近くの席に座りたがるのに、今日は客がまばらで席がたくさん空いている状態で、壁際の一番端の席に座っていた。そのせいでジョセフに言われるまで気づかなかった。
すっごい無視したかった。でもルパートが右手で私を手招きしたので行かざるを得なかった。先輩でおまけに上司だからなぁ。
「……どうも」
何が「どうも」なのか自分でも判らないないが、取り敢えずルパートに挨拶して対面に着席した。彼の前に皿は無く飲み物のグラスだけだった。もう食事を終えたのだろうか? だったら部屋に戻っていればいいのに。
ルパートが黙っていたので構わず食べ始めることにした。
「……………………」
ルパートはただ私を見ていた。すっごく食べづらい。あれですか? 見つめることで食事に集中させず、私を消化不良にするという新しい嫌がらせを思いついたんですか先輩。
抗議しようとしたところで、ルパートの方から口を開いた。
「……悪かった」
ん?
「今まで調子に乗り過ぎた」
んんんんん!?
私はまたおブス顔になっていたと思う。だって信じられない言葉が彼の口から飛び出したのた。
ルパートが真面目に謝っている? これまでは謝ったとしても「ワリィワリィ」とか「サーセン」とか、まったく心がこもっていなくて神経逆撫でするだけだったのに。
「どうしたんですか先輩。食あたりでも起こしましたか!?」
「おまえな……。いや、俺がしてきたこと考えれば信用されなくて当然か」
「!………………」
謝るだけじゃなくて自己分析もできている? これから雪……どころか槍でも降るんじゃあるまいか。
「本当、どうしたんですか急に」
本気で心配するレベルだった。ルパートそっくりな顔をした素直なこの男は誰やねん。
「……悪いことしたと思ってるんだよ」
大丈夫? 新種のモンスターに身体を乗っ取られてない?
「それは、会議室で私とエリアスさんに怒鳴ったことですか? あ、イスを扉にぶつけてましたね。あれには引きました」
「それも有る。それと……六年前のことも」
ドクン。私の心臓が跳ね上がった。
……六年前のことって、私が告白したあれを指しているんだよね? ちょっと待ってよ、何でほじくり返すワケ? アンタが無かったことにしたんじゃないか。
「きちんとおまえに向き直って話すべきだった」
当時はそれを心から望んでいた。でも叶わなかった。どうして今になって?
キースが彼を諭してくれたのだろうか?
「ウィー、俺は……」
ドワッと、食堂入口付近が騒がしくなった。賑やかな客が来店したようだ。
「……ここでするような話じゃないな。できれば俺かおまえ、どちらかの部屋へ行きたいんだが……いいか? 今日が無理ならおまえの都合の良い時に」
ドクンドクンドクン。耳が熱を持った。
ピッキングして勝手に部屋へ入るケダモノが、私から許可を貰おうとしている。私の都合を考慮してくれている。
ルパートの誠実な対応。ずっと待ち望んでいた状況が目の前に有るというのに、私は恐れから即答できなかった。
(彼を信じて……また)
期待して突き放される、あの時の苦い記憶が脳裏を駆け巡って舌がピリピリ痙攣した。
「いっや~、リリアナちゃんてば超カワイイ! ヤバくね? ヤバくね?」
個人的に修羅場だった私の耳に能天気な声が届いた。ルパートの真剣な眼差しから逃れようと顔をそちらへ向けると、そこにはレクセン支部から来たマキアとエンが居た。賑やかな客とは彼らだったのか。
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