ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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幕間  レクセン支部の二人(2)

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「あーオジさん、俺は日替わりでお願いしまーす!」
「おうよ! そっちの兄さんはどうする?」
「……魚」
「ん?」
「コイツ魚料理好きなんですよー。何か有ります?」
「今日出せるのはヒラメのムニエルくらいだな」
「エンそれでいいか? いいんだな? ムニエルでお願いしまーす!」
「ハハハ、兄さん元気いいな」
「レクセン支部から来たマキアとエンって言います! しばらくフィースノーのギルドに滞在しますんで宜しくです!!」

 賑やかなのはマキア一人だけだった。相棒のエンは相槌あいづちすらまともに打っていないのに、マキア一人でベラベラベラベラ喋っていた。ある種の才能だな。
 料理のトレーを持って振り替えった彼らと目が合った。

「あ、ロックウィーナさんにルパートさん!」

 マキアは真っ直ぐ私達のテーブルへ近付いてきた。エンも追随ついずいした。

「ご一緒させて下さい!! お隣いいですか?」

 愛嬌たっぷりのマキアの後ろでエンが眉間にしわを寄せていた。彼は絶対人見知りするタイプだぞ、そっちこそいいの?

「私は……構わないけど」

 ルパートと二人きりは何だか怖い。

「やった! フィースノー支部の皆さんとは、仕事以外でもお話ししたかったんです!」

 ニッコニッコな笑顔でマキアは私の隣の席に座った。人懐っこい青年だ。対するエンは無言でマキアの対面、ルパートの隣に座った。覆面の下で舌打ちしている気がする。

「ルパートさんとロックウィーナさんって、お付き合いされているんですか?」

 いきなりマキアに爆弾発言を投下され、私は口に含んだ付け合わせのブロッコリーを噴き出しそうになった。危ない。

「してないです」

 私は速攻否定した。ルパートの顔も引きっていた。

「えっ、そうなんですか? 俺はてっきり……」
「ええと、マキア……くん」
「呼び捨てにして下さい、俺達の方が年下なんですから。ギルドの勤務年数も少ないと思います」
「ではマキア、どうして俺とウィーが付き合っていると思ったんだ?」
「だってさっきの会議中、ルパートさんがロックウィーナさんをずっと見ていたから」
「!!」

 マキアに指摘されたルパートは顔を赤らめた。自身でも火照ほてりを感じたのか、ルパートは右手で顔の大半を隠した。

「俺は……、初対面の相手にもそう見られるような態度を取ってんのか?」

 そうだよ。だから私は一生の不覚と言ってもいい誤解をしたんだ。猛省してよね。

「お二人でバディを組んでいるんですよね?」

 マキアはハンバーグを切りながら私に尋ねた。

「えぇまぁ……」
「男女で命懸けの出動したら、信頼を通り越して恋愛感情とか芽生えませんか?」

 芽生えたよ。そして玉砕したんだよ。アハハハハ。

「私達は……先輩と後輩のままだよ」
「そうなんですか? 俺は女性と出動したことないから憧れなんです。相談して助け合って……、よっぽど苦手なタイプじゃなければ、俺だったら絶対に恋に落ちちゃいますね!」

 落ちたよ。身をもって体験したよ。ルパートは美男子だから当時の私はドキドキしっ放しだったよ。ハハハハハ。

「今の私は仕事に恋愛感情を絡めたくないな。面倒だもの」

 私は遠回しに「これ以上聞くな」と釘を刺したつもりだった。

「ええ~勿体無い! 恋するってイイことですよ?」

 察してくれない。マキアは阿保あほのコだった。

「ルパートさんカッコイイし、ロックウィーナさんは美人だからお似合いですよ。どうですか? これを機にお互いを意識してみては」

 もうその時期は終わったんだってば。そっとしておいて。でもお世辞だろうけど美人って言ってくれてありがとう。

「ロックウィーナさんの好きなタイプって……」

 ドン! とエンが水の入った木製のコップを、テーブルに叩き付けるように置いて大きな音を立てた。みんなの視線がエンに集中した。

「……マキア、ズケズケ質問し過ぎ。彼女困ってる」

 およ?

「あっ、すみません!」

 マキアがハッとした顔をして私に謝ってきた。
 注意したエンはもうすまし顔で食事を再開している。覆面を外しているので顔全体が見えたが、切れ長の瞳も含めてエキゾチックな顔立ちだな。肌の色も私達に比べて若干濃いし、彼は遠い地から流れてきた移民なのかもしれない。

「俺ってばすぐに馴れ馴れしくしちゃって。距離の詰め方が早いってよく注意されるんです。ホントすみません!」

 ペコペコ何度も頭を下げるマキアをフォローした。

「あの……、話しかけてくれたことに関しては嬉しかったよ? これから一緒に仕事していくんだから、どうせなら仲良くなりたいって私も思うし」

 途端にパアッと顔を輝かせて笑顔になったマキア。懐いたワンコみたいで可愛い。

「でも私……恋愛関係の話題が苦手なんだ。そこだけゴメンね?」
「はい! 気をつけます!」

 良かった。グイグイ来られてどうしようかと思ったが、マキアはちゃんと話せば解る相手だった。
 エンも言葉は少ないが気遣いのできる青年のようだ。同席の際に眉間に皺を寄せたのは、相棒のマキアが何かやらかさないか心配していたんだな。
 この調子ならレクセン支部の二人とは上手くやっていけそうだ。

 ……それはそうとして、現在一番の問題はルパートとの話し合いだよね。どうしようか。
 何とか理由をつけて断ろうとしている私が居る。散々ルパートのことを責めておいて、今度は私が逃げてるんじゃないか。だけど今の私は彼と真剣に向き合う勇気が持てない。
 このままじゃあ、六年前の告白の悪夢はいつまで経っても終わらないのに。私の馬鹿野郎。 
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