ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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幕間  冒険者ギルドの懲りない面々(1)

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 私達はアンダー・ドラゴンが使用するアジトの一つを偵察に行って、じっくり観察する時間が無かったのでサクッと壊滅させた。こう聞くと非道な行いをするせっかちな集団だと思われるかもしれないが、仕方が無かったのだ。
 まず敵方のアジトのすぐ側、しかも不慣れな土地で一晩明かすのは危険極まりないと判断した。そしてレクセン支部の職員が逆恨みから襲われた件を踏まえ、危険なアンダー・ドラゴン構成員をもう野放しにはできない! と熱い想いに心がたぎっていた。
 その上でアジト襲撃である。決して面倒臭かった訳でも早く帰りたかったからでもない。

 アジトに居た構成員を街まで連行して王国兵に引き渡し、その後みんなで酒場に行ってウェーイウェーイ酒盛りをしたことも、命を懸けて共闘する仲間達との親睦を深める為に必要な行為だった。
 そう、何ら恥じることも反省することもない。

「ヤバッ……、これって二日酔いなのかなぁ……?」

 昨日の出来事に対して心の中で言い訳をしながら、自室のベッドの上でゆっくり上半身を起こした私は、身体のダルさと軽い頭痛が発生していることに気づいた。
 アルコール飲料を美味しく思えない体質なので、宴会の時は最初の一杯目を付き合うだけで後は食べることに専念する私なのに、夕べはマキアに次から次へと注がれて四杯くらい飲んだ気がする。そのくらいなら他の人も普通に飲んでいる量なので別に止められなかった。
 しかし私と同じペースで飲んでいたマキアは潰れた。どうやらお酒に弱いらしい。何がしたかったんだろう彼は。帰りは寮の部屋までエンがおんぶして運んでいた。

「うぉーいウィー、起きてるかぁ? 朝メシ行こうや」

 ノックと共に扉の向こうからルパートの声がした。キースに怒られてからピッキングはやめたらしい。ノックもしている。凄い進歩だ。

「はい……起きてます」
「ん? 声が弱々しいぞ。おまえ低血圧じゃないだろ?」
「ちょっとですけど、頭痛くて……」
「えっ、具合が悪いのか!?」

 カチャカチャカチャ。ドアノブの下の鍵部分から不吉な音が聞こえた。嫌な予感がした。

「ウィー!!」

 バァンッと勢い良く私の部屋の扉を開けて、顔だけはいいウンコ野郎が室内に飛び込んできた。バァンじゃないでしょーが。鍵開けは役に立つスキルだけどさ、発揮するのは出動の時だけにして欲しい。どうしてピッキングツールを持って後輩の女を呼びに来るのさ。

「おいどうしたんだよ!?」

 ルパートはすぐにベッドの側まで来て私の肩を軽く揺らした。一応本気で心配してくれているようなので、私は奴にカウンターパンチを入れるのを我慢した。

「風邪でもひいたのか? 下着だけで寝るからだぞ!」
「! ひゃあっ!!」

 キャミソールに短パン姿だった。着けたまま寝ると苦しいからブラすらしていない。私はブランケットにくるまってから抗議した。つい数日前にも同じことがなかったっけ?

「勝手に女性の部屋に入ってこないで下さい! あと見ないで!」
「それどころじゃねーだろうが、具合悪いんだろ!?」

 本当に妹を心配する兄そのものだな。それもかなりのシスコン。性的な目で見られていないことには安心したが、それにしたって無神経過ぎる。
 ルパートはブランケットをぎ取って、私の身体の何処に異変が有るのか調べようとした。い~や~~!!

「ただの二日酔いです! 軽い頭痛がするだけで大したことは有りませんから!」
「マジ? ならいいけど……。夕べはおまえにしては飲んでたからな」

 ギギギギギィ……。その時とても耳障りな音が響いた。
 音がした方を窺うと、ウンコによって開け放たれた扉の前にキースが佇んでいた。

「きっ……、キースさん!?」

 たじろぐルパートにキースはゴミを見る目を向けた。

「ルパート、キミはいったいロックウィーナの部屋で何をしているんですかねぇ……?」
「えっ、俺は別に悪いことはしていない……よな?」

 ルパートは私を振り返って同意を求めたが、第三者の目から見たら女性に乱暴しようとしているケダモノの図だよ。

「ルパート、キミと言う男は……。あれだけ忠告したのに!」

 ギギキィィッ! キースは自らの爪で扉を長く引っ搔いて、生理的嫌悪を感じる音を奏でてみせた。それはルパートへのお仕置きなんだろうが、ぎゃあああ、同じ空間に居る私もダメージ受けてますよ。

「やっぱり僕の奴隷にするしかないですかね」

 その言葉を聞いたルパートは両手を使って自分の目を塞いで隠した。

「魅了はやめて! シャレにならないから!!」

 魅了かぁ……。
 酒場での親睦会で説明されたが、キースは魅了の瞳と言う眼力の持ち主らしい。だから彼と見つめ合わないようにと注意を受けた。そんな話は聞いたことが無いと否定的だったエリアスを、キースは前髪を上げて視界クリアとなった両眼で見つめた。
 結果、エリアスは頬を紅潮させて口数が減り、それから妙にモジモジして宴会終了までキースをチラチラ盗み見していた。
 「僕を視界から外せば数分で元に戻りますよ」とキースは笑っていたが、瞬時に相手を虜にするとは恐ろしい特技だ。お酒が入って多少気が緩んでいたとはいえ、意志の強そうなエリアスがやられてしまうなんて。

「キース先輩、ルパート先輩は二日酔いの私を心配してくれているだけなんです」

 私はルパートを庇った。部屋から出ていってくれたらそれでいい。キースにメロメロになったルパートは見たくない。嫉妬とかではなく、想像したら単純に気持ち悪かった。

「それならいいんですが。とにかくルパート、ロックウィーナの部屋から出ますよ」

 ルパートに近付いて彼の腕を引っ張ったキースは、ベッド上の半裸の私を間近で見てしまった。

「……っ! すすすすみませんロックウィーナ!!」

 慌てて目をらしたキース。そう、それ、望んでいたのはその反応! 妹的存在だとしても、女性の肌を見たなら狼狽うろたえてほしい。見られて恥ずかしいけどキースのおかげで女としての矜持きょうじを保てた。
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