ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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幕間  冒険者ギルドの懲りない面々(2)

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「じゃあ食堂に行ってるから、おまえも食えるようなら来いよ?」

 ルパートとキースは部屋から出ていった。扉が閉まったのを確認してから、私はベッドから立ち服を着て髪をとかした。部屋の外に有る共同の水場で顔を洗ってから、また部屋に戻って薄化粧をほどこした。

(食堂に行かなきゃ……)

 あまり食欲は無かったが、今日もアンダー・ドラゴンのアジトの一つを偵察に行く予定なので、無理にでも何かお腹に入れておくことにした。途中まで馬車を使えるにしても昨日のアジトよりも遠い分、出動時間は長くなるだろうから。


 食堂でモーニングメニューを頼んだ私は、ルパートに呼ばれて彼とキースが着いているテーブルに相席した。キースが改めて朝の挨拶をしてくれた。

「おはようございます。ルパートの話では二日酔いの程度は軽いそうですが、無理をせず薬が必要なら先生の元へ行くんですよ?」

 先生とは冒険者ギルドの職員の一人、薬師のマーカスのことだ。怪我の治療なら回復魔法でキースにもできるが、病気に関してはマーカスの薬に頼らなければならない。病気に回復魔法をかけると、かえって症状を進行させてしまう恐れが有るらしい。

「大丈夫です。たまにツキンと軽く痛む程度ですから」

 ふと食堂入口が賑やかになった。昨日ならマキアが独りでお喋りしている場面だが、今日の声は高かった。
 確認すると、エリアスの後ろに三人の女性冒険者達がピッタリくっ付いて、キャピキャピ騒いでいた。ギルドの食堂は冒険者も利用できるのでそこは問題無い。
 エリアスはこちらをちらりと見て私達に気付いたようだが、同じテーブルには着かず少し離れた席に座った。女性陣の声が大きいので会話は普通にこちらまで聞こえた。

「エリアスさーん、私達とパーティ組みましょうよー」

 甘えた声で女性冒険者の一人(以降キャピ1)がエリアスにおねだりした。キャピ2と3も追随した。

「そうですよー。絶対損させませんからー。報酬の取り分はエリアスさんが多めでいいですしー」
「それ以外にもいろいろサービスしちゃうから! 濃厚なヤツ!」

 ここでキャピ星人全員が身をくねらせてキャーと黄色い声を上げた。サービスって何する気よ? 爽やかな朝食時に出していい話題?

「私ぃ、エリアスさんに助けてもらって以来、あなたを忘れられなくてぇ」
「あたしもー!! あの出会いは運命的だったよねー!」
「あの時は全滅を覚悟したもんね、エリアスさんがたまたま通りかかってくれなかったら……」

 説明台詞を整理して推測してみた。過去にミッションでキャピパーティが危機に陥った時に、たまたま別の依頼を受けて同じフィールドに居たエリアスが颯爽さっそうと助けに入った……、そんなところかな?

「冒険者同士で助け合うのは当然のことだ。気にしなくていい」

 エリアスはクールに返した。だが女性に恥をかかせてはいけないと教育されているのだろう、彼女達を追い払うことはしなかった。

「でもでもぉ、それじゃあ私達の気が済みませんよぉ」
「そうです。お礼をしたいんです!」
「とは言っても私達は身体が資本だからぁ、この身体でお礼するしかないんですけどぉ」

 ここでまたキャピ1~3はキャーッと騒いだ。私には彼女達にヤキモチを焼く資格なんて無いけれど、正直言って面白い展開ではなかった。
 エリアスは彼女達にニッコリと微笑んだ。

「それは素晴らしい心がけだ。なら別の冒険者の危機的状況に遭遇した時、今度はキミ達が身体を張って助けてやるといい」

 おお~! 上手に切り返したエリアスは、食べ終わった自分の皿をカウンターに返却し、さっさと食堂を後にした。

「まっ、待って下さいよ、エリアスさーん!!」

 三人のキャピ達も慌てて彼の後を追って姿を消した。嵐のような一団だったな。それにしても……。

「挨拶くらいしてくれると思ったのに」

 こちらに一言も無かったエリアスの態度に寂しさを感じて、私はつい愚痴ってしまった。いつもだったら向こうからいろいろ話しかけてくれるのに。
 ルパートが食後のお茶を飲みながら言った。

「ばーか。あの状態でエリアスさんがおまえに声かけたら、女三人におまえが睨まれることになるだろうが」

 ……あっ、そうか。エリアスは私を護る為に私を無視したのか。それが解った途端に心が温かくなった。私ってば単純。

「キミは人のことはよく見えるのですね。その調子で自分の行動もかえりみてもらいたいところですが」

 キースがルパートに釘を刺しているところに、静かにマキアとエンが私達のテーブルに登場した。

「……あっちでエリアスさんが、お姉さん達に囲まれてモテてたよ。いいなぁ……うっ!」

 マキアは片手で頭を支えた。私より酷い二日酔いのようだ。

「ちょっと大丈夫?」
「うん……。マーカスさんに薬貰って飲んだから、たぶんあとちょっとしたら軽くなる……」

 呆れたようにエンが言った。

下戸げこに近いくせにあんなに飲むからだ」
「だって、ロックウィーナと飲めて嬉しかったんだもん。楽しかったんだもん」

 マキアは女性が大好きみたいだ。だから私が特別という訳ではないだろうが、同世代の青年に女扱いされたことが無かったのでこちらも嬉しい。

「私もね、実はお酒あんまり得意じゃないのよ。だから今度はアルコール無しでご飯食べていろいろお喋りしようね?」

 私の言葉にマキアは嬉しそうに頷いた。可愛い。
 そこへ去ったはずのエリアスが戻ってきた。今度は独りだった。キャピキャピ達をいたようだ。
 彼は真っ直ぐ私の元へ来て、私の空いていた左手を両手で握った。

「ロックウィーナ、さっきの女性達のことは誤解しないでくれ。私の心はキミ独りのものだ」

 これもまた朝の食堂に相応ふさわしい光景じゃない。嬉しい、嬉しいんだけどエリアスさん、私達は友達だという設定をお忘れですよ? 
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