ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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新二幕 冒険者ギルドを根城にする魔王ってどうよ(2)

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「……俺が最終日に昔の配下と戦うことも、神を名乗るガキが用意したイベントなのかもしれんな。時間ループに気づいた俺の動きを封じ込める為に」

 アルクナイトの呟きにみんなハッとした。彼の部下こそ神の刺客だった!?

「その可能性は大いに有るな。変態尻ダンサーだがアルの魔力は桁外れに強い。簡単に世界の均衡を崩してしまえる程に」
「誰が変態尻ダンサーだ」
「だったらもっと早く神は手を打つべきじゃないか? 最終日以外は魔王様、自由に動けるんだろ?」
「途中で何かされてもリカバリーできると神は踏んでいるんだろう。結婚相手を代えてきたように」
「おい無視するな」
「なるほど。最後っ屁をかまされないように、最後の最後に行動を封じている訳か」
「ああ。レクセン支部の二人を護る為には、最後まで気を抜けないということだ」
「ばーかばーか。自分の脚につまづいてズッコケろ。ピープー」

 仲間外れにされたことに拗ねて草笛を吹く魔王。意図して魔王を会話から外した男二人。全員が大人げなかった。だけど今後の予定はしっかり決まった。

 キースに事情を話して仲間に入ってもらう。
 難し目なミッションに挑んで戦闘力のレベルを上げる。
 一つ目のアジトで連絡係を捕らえて王国兵に引き渡す。(重要!)
 21日の午後が終わるまで、気を抜かずにレクセン支部の二人を護る。私達も代わりに死なないように注意する。(最重要!!)

 おお。具体案が出たことでだいぶ私の精神状態が安定した。昨夜はルパートに信じてもらう、ただそれだけのことも叶わず、悶々とした気分でベッドに入ったのだった。

 きっとやれる。上手くいく。今日は冒険者パーティとして出動したのでギルドの専属馬車を使えなかったが、希望に満ちた私の足は力強く街へ向かった。
  西日のせいで、みんなから伸びる影が随分と長くなっていた。


☆☆☆


 ギルドに戻って夕食を食べた私は、シャワーも済ませて自室で来客を待っていた。
 20時、あと十分程でルパートとキースが訪ねてくる予定なのだ。干していた下着はしまったし、軽くホウキで床掃除もした。バッチリ。

 食堂で掴まえたキースは夜に女性の部屋を訪れることに難色を示したが、重要な話が有ると私とルパートの二人がかりで説得した。真面目だ。
 そんなキースと私が結婚する未来も有るだなんて……。知ってしまった以上、意識するなというのは無理な話だ。
 どちらから告白するんだろう? どんな所へデートに行くんだろう? 想像できないけどキ、キスとかもしちゃうのかな……?
 ああでも、肝心な部分は全部ナレーションで説明されるだけなんだった。ちっ。体感させろと怒っていたエリアスの気持ちが理解できた。

 コン……コン。

 カーテンを閉めた窓ガラスをノックするように叩かれた。しかし独身寮の部屋は全部二階部分に在る。窓の外には人が立てるベランダも無い。
 風で飛ばされた何かが当たっているのかな? 確認の為にカーテンを開けた。

 魔王が窓ガラスにへばり付いていた。

「……っぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 反射的に大きな悲鳴を上げてしまった。何事も無かったかのように長年やり過ごしてきたエリアスは凄いと思った。

 ダダダダダと、廊下を駆ける足音が響いた。そして回されるドアノブ。ルパートとキースと約束をしていたので施錠していない。

「ウィー!」

 容易たやすく開いたドアから、飛び込むようにルパートが部屋へ入ってきた。やや遅れてキースも。

「ロックウィーナ、今の悲鳴はいったい……………ヒィッ!?」

 私の肩越しに、窓にへばり付いた物体Xを確認したキースも短く悲鳴を発した。
 ルパートは驚きはしたものの、相手がアルクナイトだと判ると大きく息を吐いた。

「何してんですか。登場の仕方は考えて下さいよ」

 そう言って窓を開けようとしたのだが、キースの緊迫した声がそれを止めた。

「入れてはいけません! ルパートもロックウィーナも窓から離れて!! その少年に見えるは普通の子供では有りません!」

 まぁ普通の少年は空飛んでこないよね。

「恐ろしい……何という魔力量………」

 戦士が出会った相手の強さを何となく肌で感じるように、魔法使い同士も魔力で実力を推しはかることができるみたいだ。キースはブルブル震えていた。

「あ、大丈夫だよキースさん。この人は魔王様なんだけど」
「は……はぁ!?」

 魔王はたぶん、大丈夫にカテゴライズされる生き物ではない。

「今さ、共通の目的の為に俺達と協力関係にあるんだ」

 ルパートが説明しながら窓を開けたと同時に、キースは私の腕を引っ張ってドア近くまで下がった。そしていつでも障壁魔法を使える準備をした。この位置関係だと、実際に障壁を張った場合ルパートは漏れてしまうな。

「遅い」

 ルパートに招かれて私の部屋へ入室を果たした魔王アルクナイトは、開口一番文句をたれた。

「わざわざこの俺様が訪ねてやったんだ。さっさと入れんか」
「窓から訪ねてくる人はお客様じゃないから」
「減らず口を……小娘、いい歳をして情けない悲鳴を上げるな。もう四捨五入したら30歳だろうが」
「……去年までは四捨五入したら20歳だったもん。アンタだって小娘って呼んでるじゃん」
「ふん、簡素な部屋だな。茶菓子は無いのか?」
「もう、いったい何の用よ? 重大な言付けでも有るの?」

 間の抜けたやり取りをする私達を交互に見て、呆気に取られていたキースを落ち着かせる為に私は彼の手を引き、ベッドに座らせた。

「安心して下さい。彼の名前はアルクナイト。正真正銘の魔王ですが、ルパート先輩が言った通り今は協力者なんです。攻撃してくることは有りません」

 何故か私は確信していた。アルクナイトは裏切らないと。

「魔王が……協力者?」
「はい。現在世界では大変なことが起きているんです。それを相談したくて今夜はキース先輩をお呼びしたんです」
「おいウィー、何ナチュラルにキースさんの隣に座ってんだよ!?」

 キースと並んでベッドに腰かけた私をルパートが咎めた。お父さんか。二人きりの時じゃないんだからいいじゃんよ。
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