ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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新二幕 冒険者ギルドを根城にする魔王ってどうよ(3)

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「……ったく!」

 ルパートがキースと私の間に無理矢理お尻をねじ込んできた。

「ちょっ、狭いですよ!」
「おまえとキースさんを密着させる訳にはいかないだろーが!」

 おのれはいいんかい。これでキース、ウンコ、私の並びとなった。
 ああ面倒臭い奴。一周目ではルパートと契約して、私の恋人作りを応援してもらえる運びだったのに。この時間軸ではまだルパートと話し合っていない状態だからなぁ。あんだけ苦労したアレをもう一回やるの? ヤダー。

「騒々しい連中だ」

 アルクナイトは小机用のイスに座った。やれやれ、ようやく落ち着いて話ができそうだ。

「で、アルクナイト、あなたは何を伝えに来たの?」
「泊まる場所が無い」
「…………はい?」
「比較的衛生面に優れた宿屋は軒並み満室だった。だからここに泊めろ」
「へ? ここ? 冒険者ギルドに?」

 私達ベッドの三人は顔を見合わせた。伝説の魔王と一つ屋根の下に? どんな状況だ。

「長期宿泊予定で部屋を取ってるエリアスさんに、今晩だけでも同室を頼めばいいじゃないですか。幼馴染みなんだからそこら辺は気安い仲でしょう?」

 ルパートの提案をアルクナイトは一蹴した。

「奴が取っている部屋は一人用だぞ? あの図体のデカい男とシングルベッドで寝れというのか?」
「ああ……それはキツイですね」
「その点、小娘となら余裕が有りそうだ」
「へっ、私!?」
「ちょ、ちょお~~~~っと!! ウィーと一緒に寝る気ですか? このベッドで!?」
「問題有るのか?」
「大有りでしょう! 貴方は見た目が少年でも実年齢は誰よりも高い男なんですから!」
「堅苦しい奴だ。お父さんか」

 さっき私も思った。アルクナイトと発想が似ているのはさりげなく嫌だった。

「なら他の部屋を手配しろ」
「何様ですか」
「魔王様」
「……でしたね。独身寮には空き部屋が有るから、マスターの許可さえ下りれば泊まれるでしょう」

 ええと、前回掃除した時には五部屋空いていたな。レクセン支部の二人と、アルクナイトが加わってもまだ空きが有る。
 私は意見した。

「いっそのことエリアスさんにも滞在してもらったらどうですか? 彼ともこの先一緒に行動するんだから、近くに居てもらった方がお互いに都合が良いですよ」
「駄目だ」
「それはやめておけ」

 即座にルパート、更にはアルクナイトにも却下された。

「あんなおまえ大好きな男を傍に置けるか。危なくてしょうがない」
「だな。未来の子供の数が増えるぞ?」
「なっ、二人とも何言ってんの? エリアスさんが私に夜這いを仕掛けるとでも!? そんな訳ないでしょう、あの方は紳士ですよ?」

 ルパートとアルクナイトがヤレヤレと頭を左右に振った。動作がシンクロしていた。

「ウィー、おまえは男の性衝動というものを解っていない」
「二十代後半まで処女のお子ちゃまはこれだから」

 ムカつく。
 置物と化していたキースが遠慮がちに質問した。

「あの……エリアスと言うのはどなたですか?」

 そうか、キースはまだ彼と面識が無かったか。

「凄腕の冒険者です。勇者の称号を持つ一族の出身で、彼も協力者なんです」
「ウィーに一目惚れして今朝プロポーズした人」
「あ、セスが騒いでいました。その人でしたか」
「そしてこの魔王アルクナイトの幼馴染みにして大親友だ」
「え、あ、魔王と親友……?」

 再び混乱してしまったキースに、私とルパートは交互に根気よく丁寧に説明した。途中でアルクナイトが余計な合の手をちょいちょい入れてきたせいで時間がかかったが、元々聡明なキースは何とか理解してくれた。

 時間がループしているという恐ろしい事実も。

「十日間に閉じ込められているなんて、にわかには信じ難い出来事だろうが事実なんだ。現にウィーは知らないはずの俺の情報を全部当てやがった」
「そうなんです。私、未来でみんなからいろいろ聞いてきたんです。キース先輩の魅了の瞳についても。これに関してはマスターもご存知ですから、彼から聞いたんだろうと言われたらそれまでですが」

 キースは蒼い顔をして頷いた。

「……信じますよ。魔王が目の前に居るのですから。こんな凄まじい現実を突き付けられたら、時間のループだって有り得えるんじゃないかって考えますよ……」

 魔王が初めて役に立った。

「なぁ、魅了の瞳って何だ?」

 ルパートが持った当然の疑問に対して、アルクナイトは意地悪く微笑んだ。

「白と見つめ合えばすぐに解る」
「白?」
「そこの白魔術師」

 省略し過ぎだろう。そもそもキースと言う名前も別に長くはない。

「? こうか?」
「いけませんルパート! 僕を凝視しないで!!」
「いいじゃないか白。いざとなったら俺様が止めに入ってやるから。それに一度体験しておけば、今後おまえに逆らおうとはしないだろうから」
「それもそうですね」

 キースはあっさり承諾し、片手で前髪を掻き上げて両眼でルパートを見つめた。私と同じみどりの瞳。違うのは吸い込まれそうな深みが有るということ。
 ……………………。

「はふうぅっ!」

 効果はすぐに現れた。無防備な状態で見つめ合ってしまったルパートは、顔を真っ赤にして後ろに倒れ、ベッドの上をあっちこっち転がった。
 そして私も。

「ロックウィーナ!? どうしたんですか!」
「観察しようとして、私もキース先輩の瞳をまともに見ちゃいましたぁ! 胸がドキドキしますぅ!!」
「…………馬鹿なんだな、小娘」

 マズイ。本当にマズイ。魅了の効果だと解っているのに想いが溢れそうだ。キース先輩、しゅきぃぃぃぃ。自分の思考が気持ち悪いぃぃ。
 それでもわずかに残った理性でキースを押し倒すのを必死で堪《こら》えた。ルパートも欲望と戦っているようだ。脚をバタつかせていた。

「おい白、これどうするよ?」
「……僕としばらく離れていれば元に戻ります。時間潰しも兼ねて僕はケイシー……、ギルドマスターに魔王の宿泊の許可を貰いに行ってきます。本人であると確認する為に面通しが必要になると思いますが」
「いいだろう、マスターとやらをここに連れてこい」

 二人の会話を聞いて私は焦った。

「ウソ、この状態をマスターに見られるの?」
「勘弁してくれ、恥ずかし過ぎる! 魔王様、キースさんと一緒にマスターの部屋へ直接行って下さい!!」
「面倒臭いからヤダ。白が戻るまでに正気に返るよう頑張れ。さぁーて小娘とチャラ男、どちらが早いかな」

 アンタがいた種だろーが! 楽しそうなアルクナイトを心の中で呪いながら、私とルパートはベッドでジタバタ暴れていた。
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