ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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新二幕 冒険者ギルドを根城にする魔王ってどうよ(1)

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「……がかなり傾いたな。今日はもう帰り支度を始めた方が良さそうだ」

 エリアスに指摘されて空を眺めた。本当だ。徒歩だったのでこのフィールドへは片道二時間以上かかった。今すぐ帰路に着かないと街へ戻る前に暗くなってしまう。
 私達はさっと荷物をまとめて帰ることにした。少し歩いた所で隣のエリアスが話しかけてきた。

「ロックウィーナ、ギルド職員で他に仲間になってくれそうな戦士は居るか?」
「はい、キース先輩です! 先輩はアンダー・ドラゴンのアジト探索メンバーの一人ですし、普段から優しくしてくれる人なので、事情を話せばきっと協力してくれると思います!」

 私が迷わず出した名前にエリアスが苦笑で返した。

「キース……。私が馬鹿に監禁されるとキミの結婚相手になる男だったな」
「誰が馬鹿だエリー。ループを壊そうと尽力した俺にかける言葉がそれか?」

 普通にアルクナイトが徒歩で私達と並んで歩いている。あれ?

「アルクナイトもフィースノーの街へ来るの?」
「当たり前だ。離れていたら共同戦線が張れないだろうが」
「えっ、協力してくれるの!? でもあなたはマキアとエンが殉職する時、部下と戦って余裕が無いって……」
「ああ最終日はな。だが安心しろ、おまえ達と話してさっき閃いた。最終日よりも前に若造二人を拉致監禁すれば、奴らはアジトへ行けなくなる。つまり殺されずに済むということだ」

 ルパートが肩をすくめた。

「貴方はどんだけ拉致監禁が好きなんですか」
「ああ? 他に有効な策が有るというのかチャラ男。有るなら出してみろ」
「いや……俺はまだ、十日間の詳しい行動の流れを把握してないので」
「ふん。今度文句を言ったら悪夢を見る呪いをかけるぞ? 羊の代わりに太った男達がヒイヒイ汗だくになって、エンドレスで柵を越え続ける夢を見るがいい」
「何ですかその夢。嫌さが微妙なんですけど」

 私は大いに疑問に思った。もちろん夢についてではない。

「……マキアとエンを隠してしまえば、本当に問題は解決するのかな?」
「ああ? 小娘、おまえも俺の策に文句が有るのか? おまえには星が次々に流れては消え、願い事が間に合わない夢を見る呪いをかけてやる」

 器が小っちゃいぞ魔王。

「エリアスさんを監禁したらキース先輩が私の結婚相手になったんでしょう? 同じようにさ、マキアとエンを隠したら、代わりに別の誰かが死んじゃうんじゃないかって……、私はそれが心配なの」

 エリアスが頷いた。

「それは……有るかもしれない。誰かが死んで、悲しむロックウィーナを慰めた男が結婚相手になる。それでは聞いた未来の流れと同じだ。ループは壊せない」
「そっか……。それじゃ駄目だな。なら隠すんじゃなく、ひたすら二人を護るって方針を取った方がいいかもな」

 ルパートも同調した。だが私にはもう一つ心配事が有った。

「私もその方針に賛成です。でも、アンダー・ドラゴンの首領はとても強そうな男でした。側近風の男も」

 覆面をした男。エンの兄貴分という話だったが。

「忍者のエンが簡単に殺されたんです。それに手下は八十人以上も居ました」

 雑魚の手下はエリアスとルパートが全部片付けたが、泣く私の元へ駆け付けた二人は肩で息をしていた。相当疲れたのだ。マキアとエンを護る余力は残っているだろうか?
 私がもっともっと強ければ……!

「八十人か……、手こずりそうだな」
「それにしても、正体不明だったアンダー・ドラゴンの首領がフィースノー地方に居たとはな。所在が判らなかった本拠地を見つけたのか?」
「いえ。あそこもアジトの一つでした。首領が居たのは、前の日に別のアジトを私達が壊滅させたから。その仕返しの為に待ち伏せされたんで……」

 ここまで言って私は思い出した。

「そうだ!!」
「うお、急にデカい声を出すなよ!」
「連絡係ですよ! 本拠地との連絡役を務めている男を取り逃がしてしまったこと、それが悲劇に繋がる大失敗だったんです!! ソイツが首領に報告したせいで、首領は仕返しの為にフィースノーまで来たんですから!」
「なるほど。つまりその者を逃がさなければ、首領との戦闘が起きないという訳だな?」

 エリアスは察しが良いので話が早い。

「そうです。おまけに連絡係は本拠地の場所を知っているはずですから、彼を捕らえて王国兵に突き出せば、兵団が本拠地制圧に動いてくれます!」
「おお、いい感じじゃん」

 だよね! 目標は首領ではなく連絡係。それならきっとやれる。

「案は決まった。街へ戻ったら私は宿屋へ帰るが、キミ達はギルドでキースと言う先輩を仲間に引き入れてくれ」
「了解。後はひたすら鍛錬だな。エリアスさん、明日から依頼はBランク以上のものを選んでくれ。久しく本気で戦っていなかったもんで、勘を取り戻したい」
「でも先輩、連絡係もそこそこ強いですが、エリアスさん相手に防戦一方でしたよ。火炎瓶を投げたチンピラが居たせいで驚いて逃がしてしまいましたが、それを知った上で臨めば、今の戦力でも充分に勝てる相手だと思います」
「ソイツで終わるならそれでいいだろうが……」
「え、首領との戦いも有るんですか?」

 ルパートが表情を引き締めた。

「いいや、もっと大きな存在、神との対決が有るかもしれない。俺達は神が用意したシナリオの筋を、書き換えようとしているんだからな」
「あ……」

 そうかも。少女の怒りを買ってしまいそうだ。
 彼女自身からは強者がまとうオーラを感じられなかったけど、神の力でこの世界の強い戦士を操って、世界を乱す私達へ刺客として放つかもしれないんだ。
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