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新二幕 冒険者ギルドを根城にする魔王ってどうよ(4)
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☆☆☆
「なぁ俺、顔赤かったりするか……?」
ルパートが眉をハの字にした情けない顔で尋ねてきた。実際は頬が紅潮した恋する乙女の風貌だったが、落ち着かせる為に優しく言った。
「大丈夫、ほぼ平常に戻っていますよ」
「良かった……」
安堵の溜め息を吐いたルパートであったが、息を漏らす仕草すら色っぽい。キースの魅了は恐ろしい技である。
「小娘、おまえは完全に素に戻ったようだな」
「私は見つめ合った訳ではなく、うっかりキース先輩の瞳を覗き込んでしまっただけだから。そういえばアルクナイトは魅了の瞳についても知っていたのね?」
「前の周回で、酒場でエリーが白に魅了されるところを見た」
「えっ、私達が酒盛りした夜のこと? あそこにもアンタ居たの? その外見でよく酒場に入られたね?」
「小金を店主に渡したら入店できた。エリーの観察日記をつけることが俺のルーティンワークだからな」
どんだけ好きなんよ。そりゃエリアスさん、家出してでもアルクナイトから逃れようとするわ。あと買収されて子供を酒場に入れた店主は捕まれ。
「ふう~~~~」
ルパートが私の横に座り直し、ベッドの上で深呼吸した。だいぶ自分を取り戻せたようだ。そのタイミングでキースと、彼に連れられてギルドマスターが部屋に入ってきた。
「……っ!」
マスターはアルクナイトを一瞥してすぐに表情を引き締めた。彼が只者ではないと感知したのだ。しかし身構えなかった。相手に戦う意思が無いことも瞬時に見抜いたようだ。流石は世界に名を轟かせた冒険者だっただけはある。
「こいつは……驚いたな。キースの言っていたことは事実だったようだ。よもや本物の魔王様にお目にかかる日が来るとは思わなかったよ」
「いかにも。我こそが魔王アルクナイトである」
アルクナイトはイスに座ったままマスターに名乗った。脚を組み替えて偉そうだった。
「貴様がこの冒険者ギルドの責任者か?」
「……ケイシーと申します。宿泊するお部屋が必要だとか?」
「そうだ。適した部屋を速やかに提供せよ。叶わぬ場合はこの小娘と同衾することになる」
「それは駄目、絶対!」
復活したルパートが、青少年を犯罪から護るスローガンのような口調で止めた。
「マスター、魔王様は300歳以上だ」
「正確に言うと482歳だ」
「……そんな大人の男を、ウィーと同じベッドで寝させる訳にはいかないだろ?」
「エリーと違って子種を仕込むつもりは無いぞ?」
ばっ、馬鹿! 何てこと言うのよ! また顔が火照ってしまう。
「こういう卑猥なことを平気で言っちゃうお人なんだ。別の部屋で寝かせないと」
「そもそも、どうして魔王様の宿を冒険者ギルドが世話することになったんだ?」
マスターが冷静なツッコミを入れた。
「ふん、白に聞いていないのか。宿屋が満杯だからだ」
「そこではなく、どういった経緯で魔王様はウチの従業員と知り合ったのですか?」
ああ、まただよ。時間逆行してからエリアス、ルパート、キース、ずっと誰かに状況を説明し続けてきた。今度はマスターか。仕方が無いこととはいえ非常に面倒臭い。
私はルパートを上目遣いで見た。
「……俺に説明しろってか?」
「私よりも先輩の方が断然説明が上手いので。……駄目ですか?」
「ま、まぁしょうがねぇな。俺に任せておけ」
ルパートは鼻の頭を指で掻いてから、マスターへ時間逆行の長~い説明を始めた。何て乗せられ易い男なんだろう。でもそうか、こうやって甘えればルパートは動いてくれるのか。ちょっとズルい気もするけど、いつもは私が彼の使いっ走りをやらされているのだから、たまにはいいよね。
ルパートが事情を話している最中、アルクナイトがまた余計な茶々を入れて邪魔しそうになったので、机の引き出しに入れておいた飴玉をあげた。騒々しいお子様を黙らせるにはお菓子作戦が一番だ。
「ぶはっ」
しかし次の瞬間アルクナイトは盛大に噴き出した。唾液と言う名の魔王汁を私の顔面に噴射して。
「ぎゃあっ、何すんの!?」
「おまえが悪い! ソーダ味かと思ったらハッカじゃないか!」
アルクナイトは手の平に吐き出した水色の飴玉を忌々し気に睨んだ。私はそれを紙でくるんだ後に、再び飴の入った缶を彼に差し出した。
「ごめんごめん。もう一つ好きなの選んでいいから」
「ふん、口直しだ」
橙色の飴玉を選んだ魔王は、それを口の中でコロコロ転がして、数秒後にまた噴いた。
「今度は紅茶味か! オレンジ味だと思ったのに!」
「紅茶嫌いだった?」
「そうではなく、思っていたものと違う味がすると人は驚くものなんだ! 缶にフルーツのイラストが描いてあるから普通はオレンジだと思うだろ!?」
「あ、これ中身補充し直したやつだから。缶のイラスト関係無いよ」
「何だそれ、客をおちょくるトラップか!?」
「なぁ俺、顔赤かったりするか……?」
ルパートが眉をハの字にした情けない顔で尋ねてきた。実際は頬が紅潮した恋する乙女の風貌だったが、落ち着かせる為に優しく言った。
「大丈夫、ほぼ平常に戻っていますよ」
「良かった……」
安堵の溜め息を吐いたルパートであったが、息を漏らす仕草すら色っぽい。キースの魅了は恐ろしい技である。
「小娘、おまえは完全に素に戻ったようだな」
「私は見つめ合った訳ではなく、うっかりキース先輩の瞳を覗き込んでしまっただけだから。そういえばアルクナイトは魅了の瞳についても知っていたのね?」
「前の周回で、酒場でエリーが白に魅了されるところを見た」
「えっ、私達が酒盛りした夜のこと? あそこにもアンタ居たの? その外見でよく酒場に入られたね?」
「小金を店主に渡したら入店できた。エリーの観察日記をつけることが俺のルーティンワークだからな」
どんだけ好きなんよ。そりゃエリアスさん、家出してでもアルクナイトから逃れようとするわ。あと買収されて子供を酒場に入れた店主は捕まれ。
「ふう~~~~」
ルパートが私の横に座り直し、ベッドの上で深呼吸した。だいぶ自分を取り戻せたようだ。そのタイミングでキースと、彼に連れられてギルドマスターが部屋に入ってきた。
「……っ!」
マスターはアルクナイトを一瞥してすぐに表情を引き締めた。彼が只者ではないと感知したのだ。しかし身構えなかった。相手に戦う意思が無いことも瞬時に見抜いたようだ。流石は世界に名を轟かせた冒険者だっただけはある。
「こいつは……驚いたな。キースの言っていたことは事実だったようだ。よもや本物の魔王様にお目にかかる日が来るとは思わなかったよ」
「いかにも。我こそが魔王アルクナイトである」
アルクナイトはイスに座ったままマスターに名乗った。脚を組み替えて偉そうだった。
「貴様がこの冒険者ギルドの責任者か?」
「……ケイシーと申します。宿泊するお部屋が必要だとか?」
「そうだ。適した部屋を速やかに提供せよ。叶わぬ場合はこの小娘と同衾することになる」
「それは駄目、絶対!」
復活したルパートが、青少年を犯罪から護るスローガンのような口調で止めた。
「マスター、魔王様は300歳以上だ」
「正確に言うと482歳だ」
「……そんな大人の男を、ウィーと同じベッドで寝させる訳にはいかないだろ?」
「エリーと違って子種を仕込むつもりは無いぞ?」
ばっ、馬鹿! 何てこと言うのよ! また顔が火照ってしまう。
「こういう卑猥なことを平気で言っちゃうお人なんだ。別の部屋で寝かせないと」
「そもそも、どうして魔王様の宿を冒険者ギルドが世話することになったんだ?」
マスターが冷静なツッコミを入れた。
「ふん、白に聞いていないのか。宿屋が満杯だからだ」
「そこではなく、どういった経緯で魔王様はウチの従業員と知り合ったのですか?」
ああ、まただよ。時間逆行してからエリアス、ルパート、キース、ずっと誰かに状況を説明し続けてきた。今度はマスターか。仕方が無いこととはいえ非常に面倒臭い。
私はルパートを上目遣いで見た。
「……俺に説明しろってか?」
「私よりも先輩の方が断然説明が上手いので。……駄目ですか?」
「ま、まぁしょうがねぇな。俺に任せておけ」
ルパートは鼻の頭を指で掻いてから、マスターへ時間逆行の長~い説明を始めた。何て乗せられ易い男なんだろう。でもそうか、こうやって甘えればルパートは動いてくれるのか。ちょっとズルい気もするけど、いつもは私が彼の使いっ走りをやらされているのだから、たまにはいいよね。
ルパートが事情を話している最中、アルクナイトがまた余計な茶々を入れて邪魔しそうになったので、机の引き出しに入れておいた飴玉をあげた。騒々しいお子様を黙らせるにはお菓子作戦が一番だ。
「ぶはっ」
しかし次の瞬間アルクナイトは盛大に噴き出した。唾液と言う名の魔王汁を私の顔面に噴射して。
「ぎゃあっ、何すんの!?」
「おまえが悪い! ソーダ味かと思ったらハッカじゃないか!」
アルクナイトは手の平に吐き出した水色の飴玉を忌々し気に睨んだ。私はそれを紙でくるんだ後に、再び飴の入った缶を彼に差し出した。
「ごめんごめん。もう一つ好きなの選んでいいから」
「ふん、口直しだ」
橙色の飴玉を選んだ魔王は、それを口の中でコロコロ転がして、数秒後にまた噴いた。
「今度は紅茶味か! オレンジ味だと思ったのに!」
「紅茶嫌いだった?」
「そうではなく、思っていたものと違う味がすると人は驚くものなんだ! 缶にフルーツのイラストが描いてあるから普通はオレンジだと思うだろ!?」
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