ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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新二幕 冒険者ギルドを根城にする魔王ってどうよ(5)

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「あのさぁ……。俺が一生懸命説明している横で何やってんだ?」

 ルパートが恨めしそうに咎めた。

「すみません」 
「小娘が悪い」
「あの……なんでウィーは魔王様とタメ口で会話をしているんだ?」

 マスターがいぶかしんだ。

「キースもルパートも俺も、魔王様の放つ気配に圧倒されているってのに。ウィーだって戦士の訓練は受けている。魔王様の強さを肌で感じているはずだろう?」
「それ、俺も不思議に思ってた。ウィーは初対面の時から魔王様にこんな感じだったよ」

 二人から問い詰められた私は素直に答えた。

「それが……私にもよく判らないんです。どうしてだか、アルクナイトを見ても怖いと感じなくて」

 それどころか懐かしい家族に会ったような感覚におちいる。これは何なのだろう。
 見つめる私の視線から逃れるように、アルクナイトは腕組みをしてそっぽを向いた。

「そんなことよりケイシーとやら、概要を理解できたのか?」
「はぁ、時間の輪に閉じ込められていると言われても正直ピンと来ませんが……、冷静な判断を下せるルパートまでもが信じているとなると、現在世界で何かが起きているということは確かなのでしょうね」

 マスターはルパートのことを随分と買っているんだな。私よりもたった一年先輩の彼を、セスやキースを差し置いて出動班の主任にするくらいだものな。
 私はここで、マスターに重要な質問をした。

「最近アンダー・ドラゴンと言う犯罪組織が勢力を広げていますが、彼らを討伐する命令が国から、王国兵団と冒険者ギルドに出されたのではないですか?」
「!…………」

 マスターが発言した私をまじまじと見た。

「何で知っている? まだギルドの誰にも話しちゃいないんだが」
「未来で見てきたからです。ギルドはアンダー・ドラゴンの本拠地を見つけることが任務。隣町のレクセン支部と協力し合う手筈では?」
「……そうだ。レクセンから二人、人手不足のこちらへ助っ人を回してもらえるように調整している」
「その二人の職員は、マキアとエンと言う名の青年に決まるはずです」
「それも未来で知ったのか?」
「はい」

 マスターは頭をガシガシ乱暴に搔いた。ああ、少ない毛髪が絶対にダメージを受けたろーな。

「くそっ、言い当てられた! 本当に俺達は十日間を繰り返しているのか!?」

 彼の中で時間逆行が現実となった瞬間だった。アルクナイトが畳み掛けた。 

「現実を受け入れろケイシー。この問題を解決する為に、俺はおまえの部下達と手を組んでやった。後はここには居ないがエリアス・モルガナンとも共闘関係にある」
「えっ、モルガナン家は勇者の一族でしょう? 魔王様はかつての宿敵と手を取り合ったのですか?」
「非常事態だ」

 白々しい噓を息をするように吐くものだ。非常事態の前から幼馴染みだったやん。

「それだけのことが起きているのだと思い知れ、ケイシー。とりあえず今は俺様の為に部屋を用意しろ。そろそろ眠い」

 マスターは頷いた。厳しい現実と魔王の滞在を受け入れたのだ。

「……承知しました。この部屋を出て、対面の一つ左の部屋をお使い下さい。誰かリネン室に行って、必要な寝具を用意して差し上げてくれ。すまんが俺は執務室に戻る」
「はい。私が行きます」

 私はベッドから立ち上がった。流石にベッドメイクを先輩にさせるのは気が引けたから。すると、

「俺も行く。さっさと終わらせよう」

 ルパートが手伝いを申し出てくれた。

「あ、でしたら僕も……」

 独りでアルクナイトの傍に残されることを避けたがったキースも続こうとしたが、我儘な魔王に服の裾を摘《つま》まれた。

「白は残って俺の話し相手になれ」
「ええ~?」

 キースに子守りを任せて私とルパートはさっさとリネン室へ向かった。
 洗ってあった枕カバー、シーツ、ブランケットを持って対象の部屋へ引き返した。

「あの、先輩、マスターへ説明ありがとうございました」

 シーツを伸ばしながら私は礼を言った。調子に乗るかと思ったルパートは、何故か暗い口調で言った。

「……悪かったな、すぐにおまえの話を信じてやれなくて」
「え、あ、それは仕方が無いですよ。実際に体験しないとアレは……。時間逆行なんて言われても普通は疑いますって」

 朝は孤独だったが、同じ目的を持つ仲間が沢山できたので、私は精神的にだいぶ落ち着いていた。もう信じてくれなかったルパートを怒っていないし、責める気も無かった。

「それでも、エリアスさんは最初からおまえを信じようとした」

 ……そうか。ルパートはエリアスと自分を比べちゃったのか。
 慰めると余計に彼を落ち込ませそうで、私は言葉を掛けられなかった。

「……準備はできた。魔王様を呼びに行こうぜ」

 黙ったまま二人で私の部屋へ戻った。扉を開けると困り顔のキースが出迎えた。

「どうしましょう。魔王様、落ちました……」

 彼の視線が示す先を見て私は脱力した。大の字になったアルクナイトが私のベッドで爆睡していた。おーい。 
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