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新四幕 ルパートの焦り(4)
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エリアスはすっと立ち上がり、部屋のドアを開けた。
「誘ったのは私だが、今夜は自分の部屋へ戻った方がいい」
「あ、はい……」
私はぎこちない動作でベッドから立ち上がった。ギクシャク、ギクシャク、脚が上手く前へ出ない。ドアまでの二メートルをこんなにも長く感じるとは。
いつもだったらエリアスが手を引いてくれるのだが、今のエリアスは私へ触れないようにしているみたいだ。つらそうな彼の表情を見て私の心も傷んだ。
「明日はキミの良い仲間になれるように努力する。今日は悪かった」
「もう謝らないで下さい。私、驚いただけで本当に大丈夫ですから。明日のミッション頑張りましょうね。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。いい夢を」
エリアスの部屋のドアが閉じられ、私は深呼吸をした。ヤバかった。とってもヤバかった。
エリアスが理性の有る人だったから未遂で済んだけど、そうじゃなかったらキスされてたよね? いや、キスだけじゃ終わらなかったかも……。
想像したら脚が震えてきた。シャワー浴びて綺麗にしたのにまた汗が噴き出した。
もう25歳だってのに何やってんの私、情けない。
迂闊だった。夜に二人で部屋に居る時点でOK出したも同然だよね? エリアスは29歳の大人の男性なんだから、そりゃあそういう展開になるよ。我慢させてごめんなさい。
アルクナイトが寝落ちした時点ですぐに私も退室するべきだった。覚悟も無いくせにエリアスの傍に居た私が悪かったんだ。
「廊下の真ん中で何してんだ? ウィー」
声をかけられて振り返ると、シャワー帰りでホカホカ状態のルパートが歩いてくる。濡れ髪が無駄に色っぽいな、イケメンめ。でもトレーニングは終えたようだね、そこは安心。
「おい、おまえ顔が異様に赤いぞ? 熱有るのか?」
おでこを触ろうとしたルパートの右手から逃れた。今は男性とのスキンシップを避けたい気分だ。
「だいじょーぶです! 心配ご無用、めっさ元気です! 先輩こそ、早く髪を乾かさないと風邪ひいちゃいますよ」
「そ、そうか。元気ならいいんだけどよ……」
ルパートは肩に掛けたタオルで髪を拭いた。使っているシャンプーの良い香りがした。今度製造元を聞いておこう。
「ウィー、時間有るか? 少しおまえと話したいんだが」
「構いませんよ。私も先輩とはお話ししたいと思っていました」
何かを焦っているらしいルパート。その原因を取り除いておかないとミスに繋がってしまうかもしれない。自分から話したいと言ってくるあたり、頭はだいぶ冷えたようだ。
「そっか、じゃあ俺とおまえの部屋、どちらで話す?」
「えっ……と、夜に男性と二人きりになるのは、ちょっと……」
ルパートは私を性の対象として見ていないから大丈夫だろうが、さっきも大丈夫大丈夫と軽く考えて一線を越える寸前まで行ってしまった。
「おまえも漸くそういった意識が芽生えたか。良いことだ。まぁ俺は安全な男だけど、男に対して油断はするなよ」
「はい。油断大敵ムダ毛ボーボーですよね」
「……女がそういうことを言うな。だがそうなると何処で話すかな」
そこへ計ったかのようなタイミングで、少し離れた部屋のドアが開いた。出てきたのは冒険者ギルドのお兄ちゃん的存在、キースだった。
「キースさん!」
「うぉっ、どうしました?」
「悪いんだけどさ、ちぃ~っと部屋にお邪魔させてくんねぇか? ウィーと話がしたいんだが夜もふけてきたもんで、二人きりになるのはマズイかなって」
「ああなるほど、いいですよ。トイレに行ってくるので少しだけ待っていて下さいね」
キースが快諾してくれた。ありがたい。
ルパートは自分の部屋にシャワーセットを投げ入れた後、私と一緒にキースが戻るのを廊下で待った。少し時間がかかったので、ルパートが「ウンコかな?」と余計な推測をした頃に、キースが小さなポットと木製のコップを持ってやってきた。二階に在る給湯室でお茶を用意してくれたらしい。
「すみませんキース先輩。勝手に押しかけたのに……」
「いいんですよ。僕もちょうどお茶を飲みたかったから」
善い人だ。私とルパートはキースの部屋へ通された。折り畳み式のイスを借りて座った。
「で、どうしたんですかルパート」
キースからお茶を淹れたコップを受け取ったルパートは、神妙な顔つきになった。
「うん……今日のミッションでさ、ウィーがダークストーカーに襲われたんだよ。でも俺は離れた所に居て、ウィーを護ってやれなかったんだ。それを謝りたくて」
何ということでしょう、ルパートが私に深々と頭を下げた。
「ごめんな、ウィー」
「え、ちょっとやめて下さい、あれはルパート先輩のせいじゃないでしょう!? 違うんですよ、キース先輩」
その直前に人形に取り憑いたゴーストと戦っていたこと、ポルターガイスト攻撃を避ける為に私は後方へ下げられたこと、だからみんなと離れた位置に居たことをキースに説明した。
「……なるほど。それならロックウィーナの言う通り、キミのせいではありませんよルパート」
「でも俺は何もできなかった」
「それはエリアスさんや魔王様だって一緒でしょう?」
「いや、エリアスさんは剣を投げてウィーを助けるつもりだった。実際に投擲モーションに入ってた。それで自分が丸腰になることを恐れずに」
あの大剣を数十メートル投げ飛ばすつもりだったんかい! そっちの方が恐怖だよ!!
「誘ったのは私だが、今夜は自分の部屋へ戻った方がいい」
「あ、はい……」
私はぎこちない動作でベッドから立ち上がった。ギクシャク、ギクシャク、脚が上手く前へ出ない。ドアまでの二メートルをこんなにも長く感じるとは。
いつもだったらエリアスが手を引いてくれるのだが、今のエリアスは私へ触れないようにしているみたいだ。つらそうな彼の表情を見て私の心も傷んだ。
「明日はキミの良い仲間になれるように努力する。今日は悪かった」
「もう謝らないで下さい。私、驚いただけで本当に大丈夫ですから。明日のミッション頑張りましょうね。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。いい夢を」
エリアスの部屋のドアが閉じられ、私は深呼吸をした。ヤバかった。とってもヤバかった。
エリアスが理性の有る人だったから未遂で済んだけど、そうじゃなかったらキスされてたよね? いや、キスだけじゃ終わらなかったかも……。
想像したら脚が震えてきた。シャワー浴びて綺麗にしたのにまた汗が噴き出した。
もう25歳だってのに何やってんの私、情けない。
迂闊だった。夜に二人で部屋に居る時点でOK出したも同然だよね? エリアスは29歳の大人の男性なんだから、そりゃあそういう展開になるよ。我慢させてごめんなさい。
アルクナイトが寝落ちした時点ですぐに私も退室するべきだった。覚悟も無いくせにエリアスの傍に居た私が悪かったんだ。
「廊下の真ん中で何してんだ? ウィー」
声をかけられて振り返ると、シャワー帰りでホカホカ状態のルパートが歩いてくる。濡れ髪が無駄に色っぽいな、イケメンめ。でもトレーニングは終えたようだね、そこは安心。
「おい、おまえ顔が異様に赤いぞ? 熱有るのか?」
おでこを触ろうとしたルパートの右手から逃れた。今は男性とのスキンシップを避けたい気分だ。
「だいじょーぶです! 心配ご無用、めっさ元気です! 先輩こそ、早く髪を乾かさないと風邪ひいちゃいますよ」
「そ、そうか。元気ならいいんだけどよ……」
ルパートは肩に掛けたタオルで髪を拭いた。使っているシャンプーの良い香りがした。今度製造元を聞いておこう。
「ウィー、時間有るか? 少しおまえと話したいんだが」
「構いませんよ。私も先輩とはお話ししたいと思っていました」
何かを焦っているらしいルパート。その原因を取り除いておかないとミスに繋がってしまうかもしれない。自分から話したいと言ってくるあたり、頭はだいぶ冷えたようだ。
「そっか、じゃあ俺とおまえの部屋、どちらで話す?」
「えっ……と、夜に男性と二人きりになるのは、ちょっと……」
ルパートは私を性の対象として見ていないから大丈夫だろうが、さっきも大丈夫大丈夫と軽く考えて一線を越える寸前まで行ってしまった。
「おまえも漸くそういった意識が芽生えたか。良いことだ。まぁ俺は安全な男だけど、男に対して油断はするなよ」
「はい。油断大敵ムダ毛ボーボーですよね」
「……女がそういうことを言うな。だがそうなると何処で話すかな」
そこへ計ったかのようなタイミングで、少し離れた部屋のドアが開いた。出てきたのは冒険者ギルドのお兄ちゃん的存在、キースだった。
「キースさん!」
「うぉっ、どうしました?」
「悪いんだけどさ、ちぃ~っと部屋にお邪魔させてくんねぇか? ウィーと話がしたいんだが夜もふけてきたもんで、二人きりになるのはマズイかなって」
「ああなるほど、いいですよ。トイレに行ってくるので少しだけ待っていて下さいね」
キースが快諾してくれた。ありがたい。
ルパートは自分の部屋にシャワーセットを投げ入れた後、私と一緒にキースが戻るのを廊下で待った。少し時間がかかったので、ルパートが「ウンコかな?」と余計な推測をした頃に、キースが小さなポットと木製のコップを持ってやってきた。二階に在る給湯室でお茶を用意してくれたらしい。
「すみませんキース先輩。勝手に押しかけたのに……」
「いいんですよ。僕もちょうどお茶を飲みたかったから」
善い人だ。私とルパートはキースの部屋へ通された。折り畳み式のイスを借りて座った。
「で、どうしたんですかルパート」
キースからお茶を淹れたコップを受け取ったルパートは、神妙な顔つきになった。
「うん……今日のミッションでさ、ウィーがダークストーカーに襲われたんだよ。でも俺は離れた所に居て、ウィーを護ってやれなかったんだ。それを謝りたくて」
何ということでしょう、ルパートが私に深々と頭を下げた。
「ごめんな、ウィー」
「え、ちょっとやめて下さい、あれはルパート先輩のせいじゃないでしょう!? 違うんですよ、キース先輩」
その直前に人形に取り憑いたゴーストと戦っていたこと、ポルターガイスト攻撃を避ける為に私は後方へ下げられたこと、だからみんなと離れた位置に居たことをキースに説明した。
「……なるほど。それならロックウィーナの言う通り、キミのせいではありませんよルパート」
「でも俺は何もできなかった」
「それはエリアスさんや魔王様だって一緒でしょう?」
「いや、エリアスさんは剣を投げてウィーを助けるつもりだった。実際に投擲モーションに入ってた。それで自分が丸腰になることを恐れずに」
あの大剣を数十メートル投げ飛ばすつもりだったんかい! そっちの方が恐怖だよ!!
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