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新四幕 ルパートの焦り(3)
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エリアスは私をじっと見つめた。
「ロックウィーナ、私もキミと同じだ。生涯を共にする伴侶には心から愛した相手を望む。家を出たのはアルのストーキングから逃れる為だったが、今では広い世界を知れて良かったと思う。何と言ってもロックウィーナ、キミという素晴らしい女性と知り合えた」
それ口説いてますか? 口説いてますよね? 生涯の相手と前置きした上で私と会えて良かっただなんて、遠まわしにもう一度プロポーズしてますよね? 魔王隣りに居るけど。
「確かに世界は広い。エリー、小娘としりとり勝負をしてみろ。常識が覆るぞ」
アルクナイトが無粋な突っ込みを入れて場を白けさせた。エリアスは渋い表情となったが、心臓がバックンバックン跳ねていた私は助かったという気分。勇者にアプローチされても魔王が居る限りは危険な展開にならなくて済みそうだ。
と安心したのも束の間、アルクナイトはその数分後に寝落ちした。お子ちゃまか。エリアスはその魔王をひょいと肩に担ぎ上げると、
「コイツの部屋に放り投げてくる。すぐに戻る」
そう言って部屋を出ていった。そして本当にすぐ戻ってきた。
「お待たせした」
してないです。あっという間でした。宣告通り放り投げてきたんだな。まぁ魔王なら多少乱暴に扱っても壊れたりしないだろう。
エリアスは私の隣りへ腰を下ろした。彼の重みでベッドのスプリングが大きく軋んだ。まだ引っ越してきたばかりなのでエリアスの部屋にはベッドしか置いてない。だから私達はベッドに座って話していた。
(あれ……?)
窓は野営用の敷布をカーテン代わりにして塞いである。密閉された空間に私を好きなエリアスと二人きり。しかもベッドの上。
これって美味しく頂いてもらう為の舞台装置が揃っていませんか?
「ロックウィーナ、今日は危険な目に遭わせてすまない」
伏し目となったエリアスが私の肩を抱いてきた。今度はそっと、優しい力加減で。また心臓がうるさく鳴り響いた。
「キミに怪我が無くて良かった。リーベルトに感謝しないと。だが本来なら私が護らなければいけなかったんだ」
「そんな、それは私の弱さが原因です」
「キミは良い動きをしていた。充分に強い。……だがそれは、あくまでも女性としてなんだ」
「………………」
「決して馬鹿にしている訳ではない。女性と男性とでは骨格も、筋肉の付き方も違う。同じように鍛えたら男の方が強くなるのは当然のことなんだ」
「はい。それは解っています……」
必死に鍛錬を積んでも、私ではエリアスの大剣を振り回すことは永久にできないだろう。
……いやアレ、男の人でも基本できないよね? 振るだけならともかく、一振りでトロールの胴体切断て普通じゃないよね? 無理無理。真似したら肩関節が外れるよ。エリアスが規格外なんだよね?
「あの、エリアスさん」
「……ん?」
エリアスは澄んだ青い瞳で私を見ている。
「私ね、最初は出動班に入るの嫌だったんですよ。リーベルトみたいに受付の仕事がしたかったんです。華が無いからって弾かれちゃいましたけど」
「採用係は見る目が無いな。キミには雪の上に咲いた花のような芯の強い美しさが有る。疲れた冒険者達にとって癒しの存在になっただろうに」
「あはは、ありがとうございます。でもですね、今の私、回収の仕事をけっこう気に入ってるんです。キツイし、モンスターは怖いし、相棒の先輩はウンコだしで大変なんですけどね……」
あ、エリアスの前でウンコって言っちゃった! お願い、ここはスルーして!
「やり甲斐も感じてるんですよ。放っておいたら死んじゃってた人を助けられたり、間に合わなくて死んじゃった人も……遺品を回収できたら、その人が完全に忘れ去られることを防げるから」
「ロックウィーナ……」
エリアスが抱いた私の肩を更に引き寄せた。二人の身体がめちゃくちゃ密着した。ひゃあ。だ、大丈夫、一周目でもハグはされた。それ以上のことはされてないから。
「キミのその志はとても尊い。本音を言うと危険な仕事を辞めて欲しいと思う。だが……キミにそのつもりは無いんだね?」
「はい」
「私がキミにしてやれることは有るか?」
私は笑顔で答えた。
「有ります。私をうんと鍛えて下さい。簡単にやられないように」
「ロックウィーナ……!」
ドサッ。
「!!!」
私はエリアスにベッドの上に押し倒されていた。にゃあ。
真剣な眼差しのエリアスの顔が接近してくる。
これは……もしかしなくてもキス!? 大丈夫じゃなかったよ! ど、どどどどーしよう!?
(駄目だ、怖い!)
心の準備ができていなかった私は、目をギュッと瞑って顔を横へ背けた。身体も震えていたと思う。
「あっ……、すまない、ロックウィーナ!」
すぐ近くでエリアスの焦る声が聞こえた。瞼を開けると、思った以上に至近距離にエリアスの顔が有った。キスされるまであと五センチでした。お互いの息が掛かる。心臓が逝きそう。
「キミを傷付けてしまうところだった。未熟な私を許して欲しい」
エリアスは私の上半身を優しく抱き起した。鼻血出そう。
「怖がらせたな。本当にすまない」
本気で怖かった。真面目な話をしている最中に押し倒されるとは思わなかった。これがルパートの言っていた男の性衝動か。
「ダッ……大丈夫デス」
声が裏返った私は動揺をエリアスに見抜かれた。彼は頭を左右に振った。
「全然大丈夫じゃないよな。すまない」
何度も謝るエリアスへ笑顔を向けて安心させてあげたいのだが、身体中が強張っていて上手く筋肉を動かせなかった。
「ロックウィーナ、私もキミと同じだ。生涯を共にする伴侶には心から愛した相手を望む。家を出たのはアルのストーキングから逃れる為だったが、今では広い世界を知れて良かったと思う。何と言ってもロックウィーナ、キミという素晴らしい女性と知り合えた」
それ口説いてますか? 口説いてますよね? 生涯の相手と前置きした上で私と会えて良かっただなんて、遠まわしにもう一度プロポーズしてますよね? 魔王隣りに居るけど。
「確かに世界は広い。エリー、小娘としりとり勝負をしてみろ。常識が覆るぞ」
アルクナイトが無粋な突っ込みを入れて場を白けさせた。エリアスは渋い表情となったが、心臓がバックンバックン跳ねていた私は助かったという気分。勇者にアプローチされても魔王が居る限りは危険な展開にならなくて済みそうだ。
と安心したのも束の間、アルクナイトはその数分後に寝落ちした。お子ちゃまか。エリアスはその魔王をひょいと肩に担ぎ上げると、
「コイツの部屋に放り投げてくる。すぐに戻る」
そう言って部屋を出ていった。そして本当にすぐ戻ってきた。
「お待たせした」
してないです。あっという間でした。宣告通り放り投げてきたんだな。まぁ魔王なら多少乱暴に扱っても壊れたりしないだろう。
エリアスは私の隣りへ腰を下ろした。彼の重みでベッドのスプリングが大きく軋んだ。まだ引っ越してきたばかりなのでエリアスの部屋にはベッドしか置いてない。だから私達はベッドに座って話していた。
(あれ……?)
窓は野営用の敷布をカーテン代わりにして塞いである。密閉された空間に私を好きなエリアスと二人きり。しかもベッドの上。
これって美味しく頂いてもらう為の舞台装置が揃っていませんか?
「ロックウィーナ、今日は危険な目に遭わせてすまない」
伏し目となったエリアスが私の肩を抱いてきた。今度はそっと、優しい力加減で。また心臓がうるさく鳴り響いた。
「キミに怪我が無くて良かった。リーベルトに感謝しないと。だが本来なら私が護らなければいけなかったんだ」
「そんな、それは私の弱さが原因です」
「キミは良い動きをしていた。充分に強い。……だがそれは、あくまでも女性としてなんだ」
「………………」
「決して馬鹿にしている訳ではない。女性と男性とでは骨格も、筋肉の付き方も違う。同じように鍛えたら男の方が強くなるのは当然のことなんだ」
「はい。それは解っています……」
必死に鍛錬を積んでも、私ではエリアスの大剣を振り回すことは永久にできないだろう。
……いやアレ、男の人でも基本できないよね? 振るだけならともかく、一振りでトロールの胴体切断て普通じゃないよね? 無理無理。真似したら肩関節が外れるよ。エリアスが規格外なんだよね?
「あの、エリアスさん」
「……ん?」
エリアスは澄んだ青い瞳で私を見ている。
「私ね、最初は出動班に入るの嫌だったんですよ。リーベルトみたいに受付の仕事がしたかったんです。華が無いからって弾かれちゃいましたけど」
「採用係は見る目が無いな。キミには雪の上に咲いた花のような芯の強い美しさが有る。疲れた冒険者達にとって癒しの存在になっただろうに」
「あはは、ありがとうございます。でもですね、今の私、回収の仕事をけっこう気に入ってるんです。キツイし、モンスターは怖いし、相棒の先輩はウンコだしで大変なんですけどね……」
あ、エリアスの前でウンコって言っちゃった! お願い、ここはスルーして!
「やり甲斐も感じてるんですよ。放っておいたら死んじゃってた人を助けられたり、間に合わなくて死んじゃった人も……遺品を回収できたら、その人が完全に忘れ去られることを防げるから」
「ロックウィーナ……」
エリアスが抱いた私の肩を更に引き寄せた。二人の身体がめちゃくちゃ密着した。ひゃあ。だ、大丈夫、一周目でもハグはされた。それ以上のことはされてないから。
「キミのその志はとても尊い。本音を言うと危険な仕事を辞めて欲しいと思う。だが……キミにそのつもりは無いんだね?」
「はい」
「私がキミにしてやれることは有るか?」
私は笑顔で答えた。
「有ります。私をうんと鍛えて下さい。簡単にやられないように」
「ロックウィーナ……!」
ドサッ。
「!!!」
私はエリアスにベッドの上に押し倒されていた。にゃあ。
真剣な眼差しのエリアスの顔が接近してくる。
これは……もしかしなくてもキス!? 大丈夫じゃなかったよ! ど、どどどどーしよう!?
(駄目だ、怖い!)
心の準備ができていなかった私は、目をギュッと瞑って顔を横へ背けた。身体も震えていたと思う。
「あっ……、すまない、ロックウィーナ!」
すぐ近くでエリアスの焦る声が聞こえた。瞼を開けると、思った以上に至近距離にエリアスの顔が有った。キスされるまであと五センチでした。お互いの息が掛かる。心臓が逝きそう。
「キミを傷付けてしまうところだった。未熟な私を許して欲しい」
エリアスは私の上半身を優しく抱き起した。鼻血出そう。
「怖がらせたな。本当にすまない」
本気で怖かった。真面目な話をしている最中に押し倒されるとは思わなかった。これがルパートの言っていた男の性衝動か。
「ダッ……大丈夫デス」
声が裏返った私は動揺をエリアスに見抜かれた。彼は頭を左右に振った。
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何度も謝るエリアスへ笑顔を向けて安心させてあげたいのだが、身体中が強張っていて上手く筋肉を動かせなかった。
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