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新四幕 ルパートの焦り(5)
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「魔王様だって飛んでおまえの元へ行くつもりだった。リーベルトが撃たなかったとしても、たぶん間に合っていただろう」
「リーベルト?」
キースが首を傾げた。
「キースさんなら話してもいいだろう。受付嬢のリリアナはな、実は男だ」
「え!?」
「五年くらい前に俺とウィーが保護した金持ちの少年が居たろ? リーベルトって名前の」
「え、ええ。ギルドまで連れてきましたよね。家に帰るのを嫌がって大泣きしていた記憶が有ります」
「リリアナはソイツだ。助けてくれたウィーに恩返しがしたくて、女装してギルドに潜り込んでいたんだ。マスターもグルな」
「えええええ~~!?」
キースが仰け反った。
「ちょっと何ですかそれ! ここは良家の子息が働くような職場じゃないですよ? しかも女装なんて。ケイシーは何故そんなことを許可したんです!?」
「多額の寄付を受けたらしい。それで新品の魔道ボイラーに交換できたとか何とか」
「ああ、それなら仕方が無いですね」
キースは簡単に納得した。利益と実用性を優先させる傾向が有るようだ。
「で、リリアナ……じゃなくてリーベルトが銃でダークストーカーを撃ったんだよ。……俺だけウィーが危ない時に何もできなかった」
「だからって、先輩が悪い訳じゃないでしょう?」
「でもさ……一生おまえのことを護るのは、俺の役目だって思っていたから……」
らしくもなく落ち込むルパートを見て私は納得した。彼の様子がおかしかった理由はこれか。
ま、最大の要因はエリアスの出現なんだろうな。妹分の私を護るつもりでいたのに、その役割を強くて精神的にも大人のエリアスに奪われそうになって、ルパートは焦ってしまったのだろう。
私のことは気にせず、自分の人生を楽しめばいいのに。もう一度恋をしてみたりしてさ。
私は悩めるルパートの気持ちを軽くしようと、わざとおちゃらけて言った。
「あはは先輩、一生護るってそれ、まるでプロポーズの文言ですよ」
「………………」
「………………」
どうしたことだろう、ルパートとキースが同時に固まった。
「二人とも……何か?」
「………………」
押し黙ったルパートを気にしながら、キースが区切りながらゆっくり述べた。
「ロックウィーナ……。まるで、ではなく、ルパートは今、あなたにプロポーズしたのだと思いますよ?」
「へ?」
ルパートが私に求婚を?
「無い無いそれは無い。ですよね、ルパート先輩」
ルパートへ視線を移して私はたまげた。奴は顔、更には耳まで真っ赤に染め上げていた。
「ど、どうしたんですか先輩! またキース先輩に魅了されたんですか!?」
「いやあの、ロックウィーナ、好きな相手に告白した後は照れるものなのですよ」
「へっ? 照れてる? ルパート先輩が? 好きな相手? 私が?」
大量の疑問符が私の頭上に浮かんだ。
「違~~~~う!!!!」
ここでやっとルパートが発言した。と言うか吠えた。
「そんなはずは無い! 俺の好意は兄妹愛だ! そうだよな、ウィー!?」
知らんがな。私に聞くなや。
「自分の感情なんですから、自分の言葉に自信を持って下さいよ」
「そうなんだけど……俺……」
語尾がまた弱々しくなった。ルパート、あなた変だよ。
「いやいや、ルパートはロックウィーナを女性として好いているのでしょう?」
「キース先輩、それ誤解ですよ。ルパート先輩に私は昔、異性として見られないってフラれましたもん」
「えっ……、ルパートがあなたをフッのですか? あなたがルパートをフッたのではなくて?」
このやり取り一周目もやったなぁ。やれやれ。私はキースに六年前、初恋の相手だったルパートに告白してブロークンハートしたことを説明した。
「えええええ……、噓でしょう? ルパートがロックウィーナにちょっかいをかけるのは、完全に男の独占欲からの行動だと思っていました。いや、絶対にそうでしょう? でなかったら一生護るなんて発想になりませんよ」
「俺……俺は……」
「ちょっと先輩、しっかりして下さい。私はあなたの妹分なんでしょう? それで悪い虫が付かないように、周りの男性達を牽制してきたんですよね? 完全に余計なお世話でしたけど」
「そのはずなんだ……でも」
「でも?」
「俺、自分の気持ちが解らなくなってきた…………」
ルパートはがっくりと項垂れた。
「ルパート、他人から言われないと自分の心も解らないんですか?」
キースは呆れた口調だった。
「……キミがセスと一緒に、ロックウィーナに群がる男連中を蹴散らしていることは知っていました」
「………………」
「でもやり過ぎですよね? ロックウィーナが自由に恋愛することを妨げてしまっている。セスについては正座させて一時間ほど説教しました」
セスは出動班の中では一番の年長者なのだが、力関係はキースの方が上のようだ。ちょこんと座ってしかられて、しょんぼりしている髭面のオッサンの絵が脳裏に浮かんだ。
「俺には何も言ってこなかったじゃないか」
「ええ。セスのは完全にお節介な父性愛でしたが、キミの場合は男として、真剣にロックウィーナを愛した上での行動だと思ったからです」
お茶のコップを落としそうになったルパートへ、キースは逆に尋ねた。
「そうじゃないんですか? 蹴散らした男性の中には、セスがアイツならいいんじゃないかと評価した、まともな人も何人か居たそうじゃないですか。キミの想いが兄妹愛であるのなら、セスと一緒にそこで引き下がっていたはずでしょう?」
「………………」
「でもキミはそういう相手に限って、必要以上に厳しく接したんですよね? 二度とロックウィーナの近くへ寄らないよう脅したでしょう? 自分のライバルになると危惧したからではないですか?」
「………………」
え? え? キースは何を言っているの? そしてルパートは何故反論しないの?
「ルパート、キミが恋愛に慎重なのはどうしてですか?」
「……昔、親友に恋人を寝取られたからだよ」
「それは……つらい体験でしたね」
同情したのか、キースは声音を和らげた。
「キミはそれから、恋愛事から遠ざかりたいと思ったのではないですか?」
「……思ったさ。だからウィーに告白された時は過剰に反応して、酷い言葉で傷付けちまった」
キースが頭を横に振った。
「キミは……恋をしても、それを恋だと認めたくないだけなんだと思います」
「リーベルト?」
キースが首を傾げた。
「キースさんなら話してもいいだろう。受付嬢のリリアナはな、実は男だ」
「え!?」
「五年くらい前に俺とウィーが保護した金持ちの少年が居たろ? リーベルトって名前の」
「え、ええ。ギルドまで連れてきましたよね。家に帰るのを嫌がって大泣きしていた記憶が有ります」
「リリアナはソイツだ。助けてくれたウィーに恩返しがしたくて、女装してギルドに潜り込んでいたんだ。マスターもグルな」
「えええええ~~!?」
キースが仰け反った。
「ちょっと何ですかそれ! ここは良家の子息が働くような職場じゃないですよ? しかも女装なんて。ケイシーは何故そんなことを許可したんです!?」
「多額の寄付を受けたらしい。それで新品の魔道ボイラーに交換できたとか何とか」
「ああ、それなら仕方が無いですね」
キースは簡単に納得した。利益と実用性を優先させる傾向が有るようだ。
「で、リリアナ……じゃなくてリーベルトが銃でダークストーカーを撃ったんだよ。……俺だけウィーが危ない時に何もできなかった」
「だからって、先輩が悪い訳じゃないでしょう?」
「でもさ……一生おまえのことを護るのは、俺の役目だって思っていたから……」
らしくもなく落ち込むルパートを見て私は納得した。彼の様子がおかしかった理由はこれか。
ま、最大の要因はエリアスの出現なんだろうな。妹分の私を護るつもりでいたのに、その役割を強くて精神的にも大人のエリアスに奪われそうになって、ルパートは焦ってしまったのだろう。
私のことは気にせず、自分の人生を楽しめばいいのに。もう一度恋をしてみたりしてさ。
私は悩めるルパートの気持ちを軽くしようと、わざとおちゃらけて言った。
「あはは先輩、一生護るってそれ、まるでプロポーズの文言ですよ」
「………………」
「………………」
どうしたことだろう、ルパートとキースが同時に固まった。
「二人とも……何か?」
「………………」
押し黙ったルパートを気にしながら、キースが区切りながらゆっくり述べた。
「ロックウィーナ……。まるで、ではなく、ルパートは今、あなたにプロポーズしたのだと思いますよ?」
「へ?」
ルパートが私に求婚を?
「無い無いそれは無い。ですよね、ルパート先輩」
ルパートへ視線を移して私はたまげた。奴は顔、更には耳まで真っ赤に染め上げていた。
「ど、どうしたんですか先輩! またキース先輩に魅了されたんですか!?」
「いやあの、ロックウィーナ、好きな相手に告白した後は照れるものなのですよ」
「へっ? 照れてる? ルパート先輩が? 好きな相手? 私が?」
大量の疑問符が私の頭上に浮かんだ。
「違~~~~う!!!!」
ここでやっとルパートが発言した。と言うか吠えた。
「そんなはずは無い! 俺の好意は兄妹愛だ! そうだよな、ウィー!?」
知らんがな。私に聞くなや。
「自分の感情なんですから、自分の言葉に自信を持って下さいよ」
「そうなんだけど……俺……」
語尾がまた弱々しくなった。ルパート、あなた変だよ。
「いやいや、ルパートはロックウィーナを女性として好いているのでしょう?」
「キース先輩、それ誤解ですよ。ルパート先輩に私は昔、異性として見られないってフラれましたもん」
「えっ……、ルパートがあなたをフッのですか? あなたがルパートをフッたのではなくて?」
このやり取り一周目もやったなぁ。やれやれ。私はキースに六年前、初恋の相手だったルパートに告白してブロークンハートしたことを説明した。
「えええええ……、噓でしょう? ルパートがロックウィーナにちょっかいをかけるのは、完全に男の独占欲からの行動だと思っていました。いや、絶対にそうでしょう? でなかったら一生護るなんて発想になりませんよ」
「俺……俺は……」
「ちょっと先輩、しっかりして下さい。私はあなたの妹分なんでしょう? それで悪い虫が付かないように、周りの男性達を牽制してきたんですよね? 完全に余計なお世話でしたけど」
「そのはずなんだ……でも」
「でも?」
「俺、自分の気持ちが解らなくなってきた…………」
ルパートはがっくりと項垂れた。
「ルパート、他人から言われないと自分の心も解らないんですか?」
キースは呆れた口調だった。
「……キミがセスと一緒に、ロックウィーナに群がる男連中を蹴散らしていることは知っていました」
「………………」
「でもやり過ぎですよね? ロックウィーナが自由に恋愛することを妨げてしまっている。セスについては正座させて一時間ほど説教しました」
セスは出動班の中では一番の年長者なのだが、力関係はキースの方が上のようだ。ちょこんと座ってしかられて、しょんぼりしている髭面のオッサンの絵が脳裏に浮かんだ。
「俺には何も言ってこなかったじゃないか」
「ええ。セスのは完全にお節介な父性愛でしたが、キミの場合は男として、真剣にロックウィーナを愛した上での行動だと思ったからです」
お茶のコップを落としそうになったルパートへ、キースは逆に尋ねた。
「そうじゃないんですか? 蹴散らした男性の中には、セスがアイツならいいんじゃないかと評価した、まともな人も何人か居たそうじゃないですか。キミの想いが兄妹愛であるのなら、セスと一緒にそこで引き下がっていたはずでしょう?」
「………………」
「でもキミはそういう相手に限って、必要以上に厳しく接したんですよね? 二度とロックウィーナの近くへ寄らないよう脅したでしょう? 自分のライバルになると危惧したからではないですか?」
「………………」
え? え? キースは何を言っているの? そしてルパートは何故反論しないの?
「ルパート、キミが恋愛に慎重なのはどうしてですか?」
「……昔、親友に恋人を寝取られたからだよ」
「それは……つらい体験でしたね」
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「キミはそれから、恋愛事から遠ざかりたいと思ったのではないですか?」
「……思ったさ。だからウィーに告白された時は過剰に反応して、酷い言葉で傷付けちまった」
キースが頭を横に振った。
「キミは……恋をしても、それを恋だと認めたくないだけなんだと思います」
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