ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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新五幕 マキアとエンとの再会(2)

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 マキアの背中をさすりながら、比較的早く立ち直ったエンが聞いた。

「明日とはどういうことです? どうして未来の出来事が判るのですか?」

 答えたのはアルクナイトだった。

「未来を見てきたからだ。十七回もな」
「未来を……? 透視魔法か占いで?」
「いいや。この身で実際に体験してきた。お前達もそうなんだ、忘れているだけで。俺達は全員時間のループの中に囚われている」
「ループ……」

 アルクナイトは十日ごとに世界が繰り返されていること、最後は私の結婚式で締め括られていること、少女の姿をした神の存在を二人に話して聞かせた。

「もっとも、最終日に俺は別の場所に居るので、おまえ達の細かい行動については把握していない。小娘、二人に詳しく話してやれ」
「あ、うん……!」

 とてもつらい未来。でも変える為には知ってもらわなければならない。私は左右から手を繋いで励ましてくれている、エリアスとルパートにパワーを貰って頑張った。
 できるだけ丁寧に、私が持つ最終日の情報を残さず彼らに伝えた。

「……………………」
「……………………」

 聞き終わったマキアとエンは、何とも言えない表情で私を見ていた。

「いきなりこんなことを言われても信じられないよね? でも本当のことなんだ。私は二人を死なせたくない。だから、信じられなくても行動には気をつけて欲しい」
「……いや、信じますよ」

 エンが言った。

「あなたの話では、俺は首領の側近の男に殺されるんですよね? そいつも俺と同じ覆面姿で、俺が兄と慕う相手だって……。俺、その男に心当たりが有るんです。誰にも話していませんでしたが、俺には過去に同じ組織に属していた兄弟子が居るんです」
「俺も……」

 マキアは両腕で自分自身を抱きしめながら感情を吐露した。

「実はここ一週間、連続で炎に焼かれる夢を見てるんですよ」
「そういえばおまえ、夢見が悪いって言っていたな」
「うん。もしかしたら自爆して死んだっていう、前の周の記憶が引き継がれているのかもしれない」

 ……そうだったんだ。マキアは二周目でも悪夢に苦しめられていて、エンは慕っていた兄弟子と敵対することを知った。

「二人にとってはつらい未来だと思う。でも私達は変えたくて、ループを打ち破る為に仲間を増やして準備してきたの。あなた達にも協力してもらいたい。一緒に十日後へ進む為に」
「もちろんです。未来を知っているんだ、いくらでも手は打てる」
「ああ。絶対に生き延びて先へ進んでやる!」

 力強く宣言した二名を見て私は安堵した。良かった。きっと一周目とは違う流れになる。
 とても嬉しくて、エリアスとルパートに繋がれている手を握り返した。ありがとう、二人が支えてくれたおかげだよ。
 私の気持ちに呼応して、左右の男達の手に更なる力が込められた。

「……っ痛ぁぁぁぁぁぁ!!」

 それが強過ぎて、私は悲鳴を上げてしまった。テーブル対面の席に座るマキアとエンが、突然の大声に驚いてイスごと後退あとずさりした。

「すまないロックウィーナ、力加減を誤った!」
「わりぃ! おまえってば思っていたより華奢きゃしゃなんだな」

 ほぼ同時にエリアスとルパートが詫びてきて、そして「ん?」という顔になった。

「ちょっと待てルパート、おまえも彼女と手を繋いでいたのか?」
「そう言うアンタもか? テーブルの下でコッソリと何やってるんだよ、このムッツリが!」
「人に難癖をつけられる立場か? 私は心細そうなロックウィーナを元気づけようとしただけだ」
「俺だって」

 二人は火花を散らし合った後、今度は私を非難してきた。

「おまえも隙が多いぞウィー、何でエリアスさんの手も握ってんだよ!? そこは俺だけにしろよ、ビッチちゃんか!?」
「いいや私の手を取るべきだ。今度からルパートが手を伸ばしてきても叩き落とせ!」
「だから痛い、痛いですってば! 二人とも一旦手を放して!」

 喧嘩中も二人は手を握ったままだった。

「ウィーが痛がってるだろ、放せよ!」
「おまえこそだ、彼女を苦しめるな!」

 ガコン。

 何故か空中に金ダライが二個出現し、それぞれがルパートとエリアスの頭にクリーンヒットして消えた。

「いてっ」
「くそっ……、このツッコミ方法はアルだな!」

 ようやく二人の手が離れた。やれやれ。アルクナイトがいつも以上に見下す視線で男二人をねめつけた。

「馬鹿者どもが。真面目な会議中に何をしている? 小娘にセクハラをかますな」
「セクハラじゃなくて、エールを送っただけだから」
「そうそう」

 アルクナイトは全員に見せつけるように溜め息を吐いた。

「面倒臭い馬鹿だ。白、おまえの瞳で魅了してやれ」

 名指しされたキースはニッコニコの笑顔で、しかし低い声でこたえた。

「本当に困った人達ですよねぇ……。魔王様に言われたように、二人を僕のとりこにしてしまいましょうか。そうすればロックウィーナへの被害が無くなりますからねぇ」
「すみませんでしたぁ!!」

 ルパートが慌てて謝ったが、今周ではまだ魅了の瞳の恐ろしさを知らないエリアスは余裕だった。

「ではルパート、おまえはロックウィーナ争奪戦から降りる、それでいいんだな?」

 そんなエリアスに片手で前髪を上げたキースが近付いた。

「エリアスさん、僕をよく見て下さい……」
「は? …………………………………………。ぐっはぁぁ!!」

 キースと見つめ合うこと八秒間、エリアスはイスから落ちて会議室の床を転げ回った。あーあ、となる私達。
 そして何が起きているか理解できずに怯えているマキアとエン。きっとこのチームで大丈夫かな? とかも思ってる。
 大丈夫、大丈夫。私は心の中で呟いた。戦闘力については問題無いから。うん、それだけは大丈夫。太鼓判。
 私はマキアとエンを安心させようと笑顔を向けたが、上手く笑えたかイマイチ自信が持てなかった。
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