ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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祝勝会(2)

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 エンは溜め息交じりに告げた。

「それが、他の仲間に俺を押し付けて、ユーリは独りでこの大陸に渡ってしまったんだ」
「え? 何で? 義兄弟の誓いを立てたほどの仲だったんだろ?」
「ああ。俺も納得ができなかった。当時16歳の俺に新天地での生活は無理だと言い張って、アイツは俺が眠っている間に出立しやがった」
「……………………」

 エン、あなたは……。マキアも私と同じことを思ったようだ。

「おまえは、ユーリさんを捜してこの土地に来たんだな」

 捜して、と言うより「求めて」。

「……そうだ。しばらくは冒険者をしながら捜して、でも見つからなくて、それでも諦め切れなくてギルドに就職した。冒険者ギルドは広く情報を取り込めるから」

 そしてエンは望んでいたユーリの情報を手に入れた。嬉しくない情報だった。これから私達が壊滅させようとしている組織、そこに彼の兄弟子は居るのだから。

「エン、おまえはユーリさんを助けたいんだな?」

 真っ直ぐ視線を合わせてきたマキアにエンは応じた。

「そうだ」
「彼は前の周回で、躊躇ためらいなくおまえを殺した男なんだぞ?」
「理解している。それでも俺にとって唯一の家族だ。助けられるなら助け、殺さなければならないのなら俺が殺す」
「エン…………!」

 もうマキアと私は何も言えなかった。エンは覚悟を決めてしまっていた。

「おっ、早いな」

 緊迫した空気を破ったのはルパートとキース、エリアスとアルクナイトの年長組だった。
 食堂に登場した彼らは食事と、そしてお酒を入れたグラスをテーブルへ運んだ。厨房の人から好意で分けて貰えたのか、つまみに相応ふさわしいチーズやナッツ類まで有る。

「へ? 先輩、これから飲むんですか?」
「約束したろ? タイムリープを破ったことを祝おうって」

 そうだったな。

「でも明日から今度は討伐隊に参加ですよ?」
「明日のことはまた明日だ。全員無事に十一日目に進めた。今はそれを喜ぼうや」
「そっか……、そうですよね」
「賛成です!」

 マキアとエンも頷いていた。アンダー・ドラゴン壊滅作戦はきっと大変なことになるだろう。でもこの仲間達とならきっと乗り越えられる。そう信じよう。

「よっしゃあ、じゃあ乾杯!」

 ルパートの音頭で皆はグラスに口を付けた。いつもよりお酒が苦く感じたのは、エンの決意を知ってしまったからだろうか。

「あ、ウィー、おまえにも伝えておくけど、俺達の間で魅了を使うのはしばらく禁止事項になったから」
「そうなんですか?」
「ああ。全員が沈んだことで、大の男が何をやっているのかと、皆がようやく冷静に物事を見られるようになれたんだ」
「犠牲は大きかったが得るものも大きかったな」

 すごく間抜けな会話をしている気がする。

「これで僕が皆さんを牽制することはできなくなりましたが、ロックウィーナに対しては、くれぐれも紳士的態度でお願いしますよ?」
「小娘をちゃっかり部屋に連れ込んだ男が何を言うか、白」

 そういえばキースの顔が大接近した瞬間が有ったな。邪魔が入らなかったらあの後どうなっていたんだろう?
 顔が火照ほてるのは恥ずかしさか、アルコールのせいなのか。

「ロックウィーナ、次の一杯は私にがせてくれ」

 お酒がなみなみと入った重そうなピッチャーを、エリアスが片手で軽く持ち上げていた。

「あ……」

 本来の私の酒量ならあと数杯はいけるのだが、今日はちょっとお酒の回りが早くなっている気がする。ハイペースで飲むとたぶん潰れるな。
 でも二杯目の段階で断るのは早いよなぁ。ぐ用意をしてくれている訳だし……。
 困っていると、エンが自分のグラスをエリアスへ近付けた。

「俺が頂きます。ロックウィーナとマキアは無理をせず、自分のペースで飲むといい」
「あ、うん」

 助けてくれたエンに心の中でありがとうを言った。私にはマキアがお酒ではなく水をそそいでくれた。

「ロックウィーナもお酒弱いみたいだね」
「うん。付き合いで飲む程度。自分から買ったりはしないな」
「俺も! 賑やかなのは好きだから、酒の席は楽しいんだけどね。いつもあんまり飲めないんだ」

 ふふっ、と私達は共感の笑みを浮かべた。
 時間のループに囚われている間は毎回命を落としていたマキアとエン。これからは友達としてずっと、彼らとこうして笑っていたい。
 私はそう切に願ったのだった。
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