ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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祝勝会(1)

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 18時半。部屋の扉を開けて廊下にうめく男達が居ないことを確認してから、私は一階へ降りて食堂に向かった。
 夕食時の食堂は冒険者に開放されていない。それ故にガランとした空間にポツポツとギルド職員が居るだけだった。
 マキアとエンが既に来ていたので、私は今夜のメニューであるビーフシチューとパンをトレーに乗せて彼らの元へ行った。

「ここ座ってもいい?」
「もちろん!」

 二人は快く私の相席を受け入れてくれた。

「二人ともキース先輩から魅了されちゃってたよね? もう大丈夫?」
「ああ~……」

 マキアが苦笑いを浮かべた。

「凄いんだね魅了って、驚いたよ。初めて経験したけど、キースさんの靴を舐めて服従したいとか思っちゃったもん」

 それ別の性癖が開発されてない?

「……俺まで術にかかるとは思わなかった。精神力の強さには自信が有ったんだが」

 あっけらかんとしたマキアとは違い、エンは落ち込んでいる様子だ。食事の為に覆面を外しているので表情が読み取れた。

「エンは魅了に興味を持っていたからさ、ある意味自分からかかりに行った状態だったんじゃないかな?」
「ああ、それは否めないな」

 そしてエンは対面に座る私をじっと見た。

「キースさんの能力は生まれついてのものだ。俺に習得はできない。だがロックウィーナ、おまえの魅了は言葉や素振りから繰り出される技だ」

 技だったんか。知らなかった。

「ぜひ俺に伝授してくれ」
「前にも言われたけど……、どうしてそんなに魅了に興味が有るの? エンは精神魔法無しでも充分に強いじゃない」

 問われてエンは目を伏せた。

「魅了できたら……殺さなくて済むかもしれない」
「殺さないって誰を……」

 あ。それはもしかして、アンダー・ドラゴンに居る兄弟子のことかな?
 エンにとってはおそらく最もプライベートな話題だ。出会って数日間の私が聞いても良いものだろうか。

「なぁ、その相手ってユーリとか言うエンの兄弟子か?」

 口ごもった私に代わり、マキアが迷うことなく尋ねた。一緒に支部移籍を決めたバディだもんね。絆は深い。

「……そうだ」
「どんな人なんだ?」

 エンは少し困ったように私を見た。

「あ、ごめん。席を外すね」

 込み入った話みたいだから、二人だけにしてあげた方がいいよね。
 立ち上がろうした私だったが、左手を上げたエンに止められた。

「違うんだ。話すと長くなるし、明るい話でもないからおまえに嫌な思いをさせるかもしれない。それでもいいなら一緒に聞いてくれ」

 あれ、私のこと信用してくれているのかな? ちょっと嬉しい。
 私が座り直したと同時にエンは話し始めた。

「俺とユーリは戦災孤児だ。路頭に迷っていたところを、おかしらに拾われて忍びの里で育てられることになった。里で生まれた他の子供達と違い、親の居ない俺とユーリは孤独を埋めたかったんだろうな、自然と仲良くなったよ。そして義兄弟の誓いを立てたんだ」

 なるほど。それから?

「………………」
「………………」

 少し待ったがエンの次の言葉が出てこなかった。マキアが不思議そうに確認した。

「……終わり?」
「ああ」

 長くなかった。
 これを長話と主張するエンは、普段どれだけ喋っていないのだろう。

「ええと、あ、うん、ユーリさんとの関係は解った。それで今はどうして離れ離れになったんだ?」

 話を広げてあげるマキアは優しい。

「俺達が仕えていた殿との……、こちらで言うところの貴族みたいな人が居たんだが、殿とのみかどの不興を買って失脚してな、財政が厳しくなって大勢の家来を雇用できなくなったんだよ。それでお頭とその家族以外の忍びに解散命令が出た」
「そうなんだ」
「………………」
「………………」
「……解散した後、ユーリさんとおまえはどうしたんだ?」

 うながさないと続きを話さない忍者。面倒臭いぞ。マキアは優しい(二度目)。
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