ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

文字の大きさ
102 / 291

野郎達の挽歌 ~ロックウィーナ目線~(2)

しおりを挟む
「……本当に、誠実なコだよねキミは。だから好きになったんだけどね」

 キースは優美な笑みを崩さなかった。

「ロックウィーナはさ、結婚願望が有るんだよね? 恋人になる相手とは、結婚を前提にお付き合いをしたいと考えてるんじゃないの?」
「は、はい……。もういい歳ですし」

 改めて言われると照れるな。

「なら迷うのは当然だろう? 一生の問題なんだから」
「………………」
「いいんだよ、相手を選ぶことに時間をかけても。嫌がる男は自分から離れていくよ。だからキミが気に病むことも、諦めることもないんだ」

 いつもの私を安心させてくれるキースの語りだ。違うのは、熱が込められているという点。

「ゆっくりと僕を知ってくれロックウィーナ。兄ではなく、男としての僕を」

 わあぁぁぁぁ。兄的存在だったキースが上書きされていく。男へと。
 またもや意識が飛びそうになった私を現実へ引き戻したのは、無粋なノックの音だった。

「どなたです?」

 口説きモードを邪魔されたキースが不機嫌そうに応じた。

「あ、マキアです。エンも居ます。キースさんとあまりお喋りできていないので、この機会に親睦を深めたいな~なんて」
「間に合ってます」

 取り付く島も無くキースはマキアとエンの来訪を断った。しかし今度は強めに扉が叩かれた。
 舌打ちをしてキースは扉の前に立った。前髪を搔き上げて。
 あ、ヤバイ。私が止める間も無く、扉を開けたキースはマキアとエンの二人を見つめた。倒れて廊下を転がる音。若い二人は魅了の洗礼を受けたのだ。
 二人を沈めたキースは前髪を戻して私の隣に座り直した。

「はい、邪魔者は片付けたから話の続きをしようか」

 そしてフフッと笑った。

「それにしても……みんないいヤツらだよね」
「はい?」
「いやさ、普通は魅了にかかった人間はみんな、僕を押し倒して本懐を遂げようとするんだよ」
「………………」
「でも……キミもだけどさ、エリアスさんもルパートもアルも若い二人も、自分の欲求を抑え込もうと必死に悶えて戦ってくれる」
「そりゃ嫌がるキース先輩に、強引にえっちなことはしたくないですもん」
「えっちって……」

 あぎゃー。またストレートに言葉にしちゃったぁ!

「ぷふっ……。だからさ、みんないいヤツだなって」

 キースは本当に嬉しそうだった。そんな彼を見て、私も何だか嬉しくなってしまった。

「みんなキース先輩が好きなんですよ。だから私みたいに、魅了に負けない第一号になろうとしているんです」
「………………」

 キースの口元からずっと形成していた笑みが消えた。

「今の、反則……」

 だが今日一番に熱が込められていた。

「ロックウィーナ……」

 …………あれ、キースの顔が近いような。あれあれあれ? もうすぐ鼻と鼻が触れそうな距離まで彼の顔が接近してきた。

 トントントントン!
 その時、早いリズムで扉が再び叩かれた。ノックしているのはたぶんせっかちな性分の人物だ。

「……鬱陶しいな、いいところで」

 忌々し気に小さく呟いたキースは完全に男だった。彼はまた前髪を搔き上げて来訪者を撃退しに扉へ向かった。
 そこに居たのは、セクシーポーズで身体をくねらせたアルクナイトだった。
 は? 何してんの阿保魔王と私は呆気に取られた。おそらくはキースも。その隙を突いて(?)アルクナイトが叫んだ。

「我を求めよ!」

 何だかピンク色の風が吹いた気がした。飛び交うハートマークも見えた気がした。
 頭を振って幻覚をはらっていると、「あぐっ」と声を漏らしてキースがへたり込んだ。え、どうしたのと私がイスから立ち上がると、アルクナイトが後方へ吹っ飛んでいった。廊下の壁に当たったのか大きな音がした。

「???」

 訳が解らなくて私は立ち尽くした。
 扉が開けっ放しの部屋の入り口に、エリアスとルパートがヒョイと顔を出したので、彼らに状況を説明してもらおうと思った。しかし彼らも揃って壁へ吹っ飛んだ。

「ちょっとみんな大丈夫? 何してんの!? キース先輩?」
「駄目だロックウィーナ! 今の僕に触れるな!!」

 肩に触れようとした私をキースが制止した。すっごい切ない声で。

「あ、あの……」
「今は説明……する余裕が無い。へ、部屋に戻っているんだ……。くうぅっ!」
「先輩!?」
「ハ……ハァッハァッ。夕食時に……食堂で会おう。早く行け!」

 息が荒いキースに急かされて、私は自分の部屋へ戻った。男達が転がる廊下は地獄絵図のようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

処理中です...