ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

文字の大きさ
122 / 291

合宿中は恋のフラグが乱立する!?(6)

しおりを挟む
「でもロックウィーナは恋人候補が四人も居ていいなぁ……」

 ふぅと色っぽい溜め息を吐いたマリナへミラがツッコんだ。

「アンタにだって告白してきた男は何人も居たじゃん。全員フッてたけど」

 マリナは枕代わりのタオルに顔を突っ伏した。

「彼らじゃ駄目よぉ。全員年下で、まだ役職に就いていないペーペーだもの」
「年上じゃなきゃ嫌なん?」
「と言うより、落ち着きの有る男性が好きなの。若い男の子達はヤルことが第一の目的でしょ? 私が望むのは結婚を前提とした真剣交際だから。生活のことを考えたらある程度の地位と収入も必要よね」
「あー確かに。私の前の彼も猿みたいだったよ。逢うたび迫ってきてさー。他にすること無いのかって感じ」
「でしょ? そういうお付き合いはもう卒業したの」

 おおお。二人は私と経験値が全然違う。やっぱり二十代後半ともなると経験済みの人の方が圧倒的に多いよね。
 処女であることを恥じる必要は無いと思うけど、周りが経験有りだと焦っちゃうなぁ。私はようやくさっきファーストキスを済ませたばかりで…………。

(ルパートとキス!!!!)

 ぼんっと、一気に顔が熱くなった。頭へ急激に血が回ったのだろう。隠す為にマリナ同様、丸めたタオルに顔を突っ込んだ。

「どした? ロックウィーナ」
「……疲れて眠くなっちゃった。ごめん、お先に寝る」
「長時間移動だもんねー。私も腰が痛くなったよ」
「明日も明後日も荷馬車に乗るんだもんね。私達も寝ましょうか」

 結局みんな寝やすい格好に着替えて早めの就寝となった。

(うわぁぁぁ。私あの人とキスしたんだ)

 言い出しっぺの私だったが当然すぐに眠れる訳がなかった。ルパートとの初キスを思い出してはジタバタ暴れそうになった。一人当たりのスペースが狭いテント内だったので迷惑にならないように耐えた。

(ごめんって、切ない感じで囁かれて……それから……。うきゃあぁぁぁ)

 全然嫌じゃなかった。むしろ身体がフワフワして気持ち良かった。怖かったけど。
 ……そう。嫌じゃなかったんだよ、私は。でもルパートは気に入らなかったみたいだね。

(…………あんな態度を取ることないじゃない)

 危険回避行動のように私から離れたルパート。あれには本気でへこんだ。その直前のキスが素敵だっただけに余計に。

 私のファーストキス体験は苦い記憶となりそうだ…………。


☆☆☆


 朝。日が昇り活動時間となった。
 朝食は水と乾パンだけなので調理の必要が無かった。私はテント撤去を手伝ってから、女兵士達に礼を言って自分の馬車へ戻ることにした。

「⁉」

 と思ったら、女性兵士エリアから少し離れた場所にルパートがたたずんでいた。うげ。今は絶対に会いたくない相手だ。
 奴は落ち着き無くキョロキョロ周囲を見回していた。ルービック団長でも捜しているのかな? 私は関わり合いにならないように足を速めた。

「ウィー!」

 しかし何てことだ、駆け寄ってきたルパートに腕を掴まれてしまった。

「会えて良かった。出発前に話がしたかったんだ」

 あれ? ルパートが捜していたのは私だったの?

「ちょっとこっちへ来てくれ」

 待ち伏せ魔は昨夜のように私を大樹の陰へ連れていった。当然私は警戒して奴を睨みつけた。対峙するルパートは思い詰めた表情をしていた。

「……………………」

 話がしたいと主張したくせに、ルパートは中々話を切り出さなかった。

「……出発準備をしなければなりません。業務連絡なら早くして下さい」
「…………ごめん」

 ルパートは小さな声で謝罪を述べた。

「夕べのこと…………怒ってるよな?」

 当たり前じゃボケェ! でも認めることが悔しかった私は余裕ぶった態度を取った。

「ああ……アレ? もーいいですよ。犬に噛まれたとでも思って忘れることにします」

 私の腕を掴む彼の手に力が込められた。痛い。

「俺は……忘れない!」

 へ?

「おまえにとって嫌な記憶になったかもしれないが、俺は絶対に忘れない」
「……………………」
「でも無理矢理したことについては悪かった。おまえの気持ちを考えずに、俺の気持ちだけを押し付けた」

 何だか話が噛み合っていない気がしたので、私はその点を指摘してみた。

「あの……嫌だったのは先輩の方でしょう?」
「え? 何で?」
「私とキスしたものの、何か違うってガッカリしたんでしょう?」
「…………は?」

 ルパートは数秒間停止していた。それから強い口調で否定した。

「どうしてそうなった! 惚れてる女と初めてキスできたんだぞ!? 嫌な訳ないだろーが!!」

 大きな声を出してしまった彼は慌てて周りを窺った。樹の陰に隠れているとはいえ昼間は人通りが多い。近くに立つ一般兵がこちらを見てニヤニヤしていた。確実に今の聞かれていたな。
 ルパートは声を潜めて私へ念押しした。

「とにかく、俺はキスできて嬉しかった。嫌だなんてとんでもない勘違いだ」
「嬉しかったんですか……? 私とのキスが?」

 確認した私へ彼は苦笑した。

「当たり前だろ」

 ……本当に? 私は納得できなかった。

「だって、キスの後に先輩は私から飛び退きました! アレは犬のウンコを踏みそうになった人の動きでした! 必死だった!」
「何て例えを持ち出してくるんだ、おまえは」
「それに舌打ちまでしたじゃないですか!」
「舌打ち? ああそれは…………欲望に負けた自分に対してだよ」

 え?

「夕べはさ、おまえと二人でゆっくり話そうと思って逢いに行ったんだ。それだけのつもりだったのに、俺はおまえにキスしちゃっただろ? 我慢できなかった自分に対してイラついたんだよ」

 そうだったの? 色気が無い私に呆れたんじゃなかったの?

「じゃ、じゃあ、直前の必死の飛び退きは?」
「それは…………、ああもう!」

 ルパートは左手で自身の頭を抱えた。何だ何だ。

「……あのままくっ付いていたら、我慢できなくなりそうだったから」
「? 我慢できなくてキスしたんでしょう?」
「その先!」
「先?」

 はて。首を傾げた私へ、ルパートは赤い顔で打ち明けた。

「おまえを抱きたくなったんだよ。最後までしたくなったんだ。だから離れた」
「!!!!!!!!」

 ドゴーン。頭の中で活火山が噴火した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜

いろは
恋愛
20歳ラノベ好きの喪女の春香。いつもの週末の様にラノベを深夜まで読み寝落ちし目覚めたら森の中に。よく読むラノベの様な異世界に転移した。 突然狼に襲われ助けてくれたのは赤髪の超男前。 この男性は公爵家嫡男で公爵家に保護してもらい帰り方を探す事に。 転移した先は女神の嫉妬により男しか生まれない国。どうやら異世界から来た春香は”迷い人”と呼ばれこの国の王子が探しているらしい。”迷い人”である事を隠し困惑しながらも順応しようと奮闘する物語。 ※”小説家になろう”で書いた話を改編・追記しました。あちらでは完結しています。よければ覗いてみて下さい

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...