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8の扉 デヴァイ
今日の色
しおりを挟む「愛は 一瞬の煌めき」
………………ぅん?
キラキラしている頭の中、ぬくぬくしている布団。
ふわふわのベットの中は今日も温かく、出たくはない。
もう、春の筈なのに。
少し、寒いのはどうして………?
なんだか青春っぽいフレーズと共に、ぼんやりと目が醒めた。
私の、部屋だ。
昨日イストリアからの手紙を読んで、何処で?
うん?
ちゃんとベッドに入ったっけな………?
イマイチ記憶が、無い。
意識がはっきりしてくると、どうやら今日も私を抱える極彩色の毛色が見えてきた。
多分、この子は。
さっき迄、人だったのではないだろうか。
人の姿で抱えていて、そのまま私が目覚めると怒られると学習したのだろう。
いや、始めから解っていたとは思うのだけど。
きっと、揶揄うのを辞めたのか面倒になったのか。
この頃は起きる前に狐に戻っている。
しかしやはりモコモコとぬくぬくからは私が抜け出せずに、ベッドから追い出すことはしていない。
まだ朝が、シリーの部屋へ行っているのも大きいだろう。
決して。
寂しい、訳ではないのだけれど。
昨日しっかり地に足つけたからか、これ迄とは少し自分が違っている気がする。
落ち着いて、部屋も見れるし。
なんだか、改善点も分かる。
少し、部屋を確認して薄く、チカラを通した。
「パチン」と膜が張った様な音がして、空間が清浄になる。
少し、やはりズレていたのだろうか。
ふわふわしていた私は、気が付かなかった様だけど。
「ふぅん?目が醒めたのか。」
「あ。着替えるから。出てって。」
振り返ると人型に変化した千里が、感心した様に部屋を見渡している。
やはり変化が分かるのだろう、「廊下はどうかな」と言いつつも、部屋を出て行った。
さて。
今日は、あそこへ出掛ける日だ。
そうしてはたと、思い出したけど。
昨日、何時に行くか聞いてないな?
それなら朝食を摂りながら話を聞くしかない。
とりあえず身支度をしに、緑の扉を開いた。
足取りも軽く、青い廊下を進む。
辺りの空気が、自分と馴染んでいることを確認しながら歩く。
どうやら、今朝のアレでこのフェアバンクスの空間全体が整った様だ。
これなら、気分良く出掛けられそう。
朝食時に「とりあえず、お茶の時間に合わせて行く」というウイントフークの言葉を聞いて、少し時間があると思った私はあの部屋を目指して歩いていた。
あのイストリアからの手紙の。
「ただ、ある」ことを、実践する為にあの部屋を目指しているのだ。
「石でも握るといい」という言葉が書いてあった、あの手紙。
始めは自分の癒し石かと、思ったけれどふと思い付いたのだ。
「そうそう、あそこにも沢山あったじゃん…。フフ。」
そう、改めて心の準備をしたいのと、何か珍しい石でも、ないかと思って。
進んで、いたのだ。
あれからウイントフークに繋げてもらった廊下は、普通の青い廊下になっている。
「お前だってできるだろう?」
そう言いながらも、やってくれたウイントフークは私を何だと思っているのだろうか。
「あの人みたいに、四六時中研究してる訳じゃないんだけど………。」
ブツクサ言いながらも、角を曲がるともう扉が見えてきた。
物は何も無いが美しい青の廊下に、突然扉が現れること。
それは変わっていない。
部屋の中も、あれから変化は無いだろうか。
「失礼、します………。」
中には誰も、居ないだろうけど。
とりあえず、声を掛けて扉を開けた。
「………うん、大丈夫、かな?」
キョロキョロと部屋の中を確かめながら、長机へ向かう。
「ん?」
前回、引き出しの壁の前にある長机には沢山の丸いスフィアがあった筈だ。
色とりどりの其れ等の中から、白と黒のスフィアを選んで考えた、あの時。
………ん?
あ、そうかそれであの金色がアレで………。
うーん、ダメダメ。
落ち着くんだよ、今日は。
ブワリと自分の中の焔が舞い上がった気がして、慌てて収める。
あの人のことを考えると、趣旨がズレる。
慌てて首を振り、窓際の机に向かって歩き始めた。
そう、この部屋には、窓がある。
多分まじないだろうけれど、初めから青空が見えるこの窓は、あまりにも自然にそこにあるので今迄外を見るのを忘れていたくらいだ。
この部屋に照明は無く、充分な明かりを提供するその大きな窓は縦横に走る木枠によって小さく区切られている。
その造りから、開かないことが分かるその窓。
何か外にあるのかと思って、近づき覗いてみたが空しか見えない。
「ふーん?」
時折雲が流れる様子がとても自然で、気に留めなかった理由が分かってきた。
あまりにも、普通過ぎるのだ。
「でも、この窓のお陰でこの空間がこうなのかもね…。」
"いつまでも好きな事をして過ごしていい"
この部屋は初めからそう言っている気が、した。
自分の好きな事だけを、心ゆくまで、ボーッと。
きっとあの棚の中を漁ってもいいし、ハーブを量ってハーブティーを研究しても、いい。
勿論私が求めている、石を選んでなんとなく、座るだけでも。
「あ。」
すっかり忘れていた目的を、思い出した。
くるりと向き直り、窓の側にある机に戻ってキラリと光った何かを確かめる事にした。
さっき、遠くから見て石ではないかと思ったのだ。
「えー………どれもいいな。」
きっとメインの机であろう、その大きな文机の上には沢山のものに混じってキラキラとした石が幾つか置かれている。
キラリと虹の様に光るもの、丸みを帯びた形の複雑な模様のもの、可愛らしいピンクの半透明のもの。
沢山、ある。
でも、今日は。
「とりあえずお前の顔合わせをして、茶会の相談をするくらいだから。お前は喋らなくていいからな?」
そう、言っていたウイントフーク。
私はとりあえず、お淑やかなフリでもしておけばいいのだろう。
向こうの様子も、場所も、誰が来るのかすらも、何も分からない。
何もしなくていい、と言われても。
「なんだろう、緊張はするよね……。」
石たちを順に見ながら、どの石を持てば自分の心が落ち着きそうかシュミレーションしていく。
キラキラ…もいいけど、ちょっと今は違うな。
ピンクは癒されるけど…ちょっと今日は弱い。
この緑………は違う。
この黒っぽい………いや、ダークダーク。
明るく行こう?
えーー。
どれ?
どれだろうか。
私の、心の、真ん中に。
置いて、落ち着いて向こうで行動できるやつは………。
無意識に、目が金や黄色を探しているのだろう。
キラキラした金色の四角が重なった石、黄色と橙が混じり合った燃える様な石。
私の目が、二つの間を行き来する。
どちらにしようかな、神様の………いや、私の中の、言う通り………。
でも。
やっぱり、心の真ん中に、置くならば。
「こっちだね。」
そう呟いて、焔色の石を手に取り、バーガンディーまで真っ直ぐに歩く。
チラリと長机の上も見たけれど、コレよりもいいのは無さそうだ。
今の、私を落ち着かせるもの。
自分の中で確かめて、一つ頷きドサリとソファーに沈み込んだ。
そうして。
朝が呼びに来るまで、その石を眺めたり、ボーッとしたり、目を瞑ってうっかり眠りそうになるまで。
「ただ、ある」ことを、満喫したのである。
うむ。
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