王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒

文字の大きさ
23 / 43
聖女時代

来る時は連絡してね

しおりを挟む
「コルネリウス王子殿下の馬車を見たけど、今日は誰の約束日だ?」

「いや、俺は聞いてない」

「そもそも今日は、約束日だったか? 連絡事項になかったと思うが……」

 婚約者候補とコルネリウスのお茶会は見習いにも伝達されている。
 以前までは約束日以外のコルネリウスの訪問はなかった。
 最近はやたら頻繁に訪れるコルネリウス。
 その目的は、教会に出入りする者は薄々気づいている。
 噂の確認に来たわけではないが、偶然通りがかり私も目撃してしまう。 

「こんなところの掃除も、聖女候補の仕事なのか?」

「あっ、コルネリウスさん。ここの掃除は聖女候補の担当じゃなく、教会の見習いさんの担当だよ。この時期は頻繁に掃除しないと、どうしても落ち葉が気になっちゃうの」

「それでソミールが掃除するように頼まれたのか?」  

「頼まれたなんて、私が勝手にしてるだけだよ」

「自主的に掃除なんて、聖女候補に選ばれる者は違うな」

「皆は私みたいに考えなしで動いたりしないだけ。私と違って、聖女様のように洗練されているもの」

「令嬢は……確かに、掃除はしないな」

「あの……私が勝手に掃除しちゃったのを誰にも言わないでね。聖女らしくないって、また怒られちゃうから……」

「怒られる……この程度でか?」

「聖女様は常に気品? を持って行動しないといけないって……候補の私も『聖女の品位を陥れるような行動はしてはいけない』って言われてるの」

「……分かった、誰にも話したりはしない」

「ありがとう。今日は誰に会いに来たの?」

「司祭に色々と確認することがあってきた」

「そっか。遅れちゃうから、行って」

 司祭に挨拶へと向かうコルネリウスを見送るソミール。
 姿が見えなくなると、その場を離れ見習いに掃除道具を片付けるよう指示する。

「よくもまぁ、あんな嘘が次から次へと出てくるものね」

 ソミールが自主的に掃除することはないし、掃除しても楽な場所ばかりを率先して行う。
 確かに『聖女の品位を陥れるような行動をしてはいけない』と話はした。
 それは、挨拶での仕草。
 掃除をしてはいけないなんて意味ではない。
 都合よく解釈し、コルネリウスへの評価を上げるために利用しないでほしい。

「神様は、私たちを見ていてくれていますよね?」

 ソミールの行動に対して能力の高さを見せつけられると、信仰心が揺らいでいく。
 これが、私たちに与えられた試練なのだろうか?

「負の感情に囚われてはいけない……ふぅ………」

 負の感情を吐き出し、自身のやるべきことに集中する。
 コルネリウスは婚約者候補で聖女候補たちとは対面せず、王宮へ戻ったと聞く。
 『やはり』と思ったが、頭を振り払い忘れることにする。

「ソミール嬢と話していると、時間があっという間だな」

 約束日で訪れたとしても、必ずソミールとの時間を得ている。
 そんな二人を見せつけられ、候補としての時間を過ごしても穏やかさを取り繕うのが精いっぱい。
 コルネリウスの心ここにあらずなのは、嫌でも分かる。
 約束日の時間になっても訪れないのも、最近では日常に。

「申し訳ない。遅れてしまった」

「ごめんね。少し話してたら盛り上がっちゃって、約束の時間が過ぎているのに気つかなかった」

 コルネリウスは約束の時間に遅刻して現れ、ソミールと共に二人で謝罪に訪れる。
 その光景が、候補者たちの神経を避け撫でしているのが分かっていない。
 彼は何しに教会へ訪れているのか、分かっているのだろうか?
 
「いえ。問題ありませんよ」

 そんなことを思っていても、表情には出さない。

「では、ソミール嬢行ってくる」

「はい、行ってらっしゃい」

 そこは、「フローレンス嬢、行こうか?」じゃないの?
 どこまでも、ソミール優先なのね。
 そんな始まりのお茶会なので、頼める雰囲気にはならず時間を確認すればソミールとの時間の方が長いのではないかと思えてならない。
 教会関係者がいくら口を閉じても、偶然訪れた人間から噂は広まっていく。
 聖女候補は、一般開放区の通路は使わないことになっている。
 でないと、参拝客に声をかけられその日の予定が熟せなくなる。
 見習いと聖女候補は、解放区にある通路は使わない。

「なぁ、君が最近の能力が発覚した聖女候補かな?」

「はい、そうです」

「私は侯爵のイリノエと申します。貴方の後見人になりたいと思っております」

「後見人ですか?」

「後見人と言っても、君を屋敷で囲い込み親戚筋と婚姻させるなどと思っているわけじゃないんだ」

「……では、何が目的ですか?」

「身分は平民だろう? 他の候補者と違い、なにかと不便があるんじゃないのか? 教会は平等に配給はするも、それは貴族前提だろう? 不都合があっても我慢しているのではないか? 我々のために祈ってくれているのに、困っているのなら何か支援が出来ないかと思って声を掛けさせてもらった。迷惑かな?」

「それは嬉しいです。平等に配給といっても、私は平民ですから……侯爵様の申し出は迷惑ではないです」

「私は君を支援したいと思っている。支援を必要とする時は、私を頼ってくれ」

「はい、ありがとうございます。イリノエ侯爵様」

「いつでもお待ちしておりますよ」

 ソミールはイリノエとの会話をコルネリウスに報告。 
 今日のコルネリウスは、司祭に確認する話があるということで教会に訪問をしたはず。
 今は、ソミールと二人でお茶会をしている。

「イリノエ侯爵様にお世話になってもいいのかな?」

「イリノエ侯爵か……彼は、これまで犯罪に関わったことはない。過去に聖女候補を何名か引き入れたことはあるが、聖女候補を輩出していないだろう。野心はあるが、悪意ある人間ではない。聖女を強く欲する貴族ではある。なので、支援が必要だった時は彼を頼っても問題ないだろう。彼に不審な動きがあった場合は言ってくれ、私が対処するし支援も王宮から拠出するから安心してくれ」

「相談に乗ってくれて、ありがとう」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

結婚式をボイコットした王女

椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。 しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。 ※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※ 1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。 1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!  って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!  父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。  アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。  最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。

さようなら、私の初恋

しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」 物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。 だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。 「あんな女、落とすまでのゲームだよ」

もしも願いが叶うなら

豆狸
恋愛
みんな地獄へ落ちますようにって…… ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

聖女の妹、『灰色女』の私

ルーシャオ
恋愛
オールヴァン公爵家令嬢かつ聖女アリシアを妹に持つ『私』は、魔力を持たない『灰色女(グレイッシュ)』として蔑まれていた。醜聞を避けるため仕方なく出席した妹の就任式から早々に帰宅しようとしたところ、道に座り込む老婆を見つける。その老婆は同じ『灰色女』であり、『私』の運命を変える呪文をつぶやいた。 『私』は次第にマナの流れが見えるようになり、知らなかったことをどんどんと知っていく。そして、聖女へ、オールヴァン公爵家へ、この国へ、差別する人々へ——復讐を決意した。 一方で、なぜか縁談の来なかった『私』と結婚したいという王城騎士団副団長アイメルが現れる。拒否できない結婚だと思っていたが、妙にアイメルは親身になってくれる。一体なぜ?

処理中です...