11 / 43
聖女時代
言えないから秘密
しおりを挟む
「バルツァル公爵令嬢、おかえりなさい」
コルテーゼの屋敷に戻ると、侯爵は私たちの帰りを待ってくれていた。
「ただいま戻りました」
「ご無事でなによりです。どうでしたか?」
「とても綺麗な光景でした……あの花は……時期を見て報告と仰った侯爵の判断は正しいです」
「管理や、こちらの調査が終わり次第と思っております」
「はい、それが良いかと」
「教会の方へはどうしますか?」
「そうですね。頻繁にコルテーゼ領を訪れるようになれば、司祭様に報告しなければなりませんが……今回は、侯爵の判断に従います」
「……ありがとうございます。司祭様には調査中のため、報告はお待ちくださいと連絡させていただきます」
「わかりました」
「バルツァル令嬢は、今後の予定は? 明日お戻りに?」
「はい。その予定です」
「そうですか。ルードヴィックも近々王都に向かいますので、調査結果や王宮への報告日など決まりましたら息子が教会を訪ねると思います」
「分かりました」
私が王都に戻るというと、夫人から沢山の物を渡される。
「これはね、領地特産のワインよ。それでこれが、美味しいって言ってくれたクッキーよ。道中で食べて。それで、これがフローレンス様に似合いそうで購入してしまったアクセサリー。それと……」
あまりの量の贈り物に困惑。
領地のワインやクッキーまでは遠慮なくもらえるのだが、次第に高級なものが準備されていく。
夫人にはルードヴィックしか子供はおらず、私を娘のように思ったのかもしれない。
だけど、これは貰い過ぎだ。
「侯爵夫人、こんなには頂けません」
「気にしないで、今回の件はこれでも足りないくらいなんだから」
『伝説の花』を発表すれば、かなりの価値を生むだろう。
まだ、秘密の段階。
「フローラ、貰ってほしい。母はもう一度君が来ると聞いてから準備をしていたんだ」
「そうなんですか? それでは……ありがたく頂きたいと思います。大切にします」
もう一台の馬車に夫人からの贈り物を運び入れている間、ルードヴィックが隣に立つ。
「俺も、もうすぐ王都に行くから」
「そうみたいですね」
「ん? 父に聞いたのか?」
「はい」
「父はなんて?」
「ルードヴィック様が調査結果を教えてくださると」
「それだけか?」
「はい」
「そうか……フローラは……聖女になるのか?」
「それは分かりません」
「なりたいのか?」
「……よくわかりません。ですが、指名されればお受けいたします」
「……そっか……」
全ての荷物を運び終え準備が整う。
「本日も滞在させていただきありがとうございます」
「……またな」
「はい。また」
王都に戻って数日後。
ルードヴィックが教会に訪れた。
「もう、調査を終えたのですか?」
「いや、今日は王都に来た報告だ」
「そうですか。しばらくはこちらですか?」
「あぁ。そのつもりでいる」
その後、彼はあの花の報告に何度か訪れる。
彼が何度も教会に訪れるので、他の候補者に質問される。
「あの方、もしかしてフローレンス様の婚約者ですか?」
「違います」
「コルテーゼ侯爵令息ですよね?」
「スカルノ様は知り合いなんですか?」
「お話ししたことはありませんが、社交会では評判ですよね。あの方はまだ婚約しておりませんから、婚約が殺到していると聞きます」
「そうなんですね」
「それで……お二人はどういう関係ですか?」
「各地の教会訪問でお会いし挨拶しました」
「……各地の教会訪問……」
聖女候補は休みの日に何をしているかなど話さない。
お互い触れないでいる。
聞けば教えてくれるのだろうが、私たちには『聖女』と『王妃』という立場が関わっているので互いの情報共有はほとんどない。
伝説の花の存在を知られるより、各地の教会を訪問を知られる方が重要度は違う。
それでも先輩二人がどんな慈善活動をしているのか噂などで耳に入る。
スカルノは貧困層へ食料配布をしていて、デルフィーナは孤児院で子供たちに将来の就職先などの相談に乗っている。
ファビオラは王都の景観をよくするために花壇を増やし掃除をする者を雇い、ラヴィニアは王都の騎士を激励している。
一・二年目の聖女候補は、生活に慣れることを優先。
三年目の聖女候補は、自身が何をすればいいのかを見つめる期間。
四年目から活動を始める。
コルテーゼの屋敷に戻ると、侯爵は私たちの帰りを待ってくれていた。
「ただいま戻りました」
「ご無事でなによりです。どうでしたか?」
「とても綺麗な光景でした……あの花は……時期を見て報告と仰った侯爵の判断は正しいです」
「管理や、こちらの調査が終わり次第と思っております」
「はい、それが良いかと」
「教会の方へはどうしますか?」
「そうですね。頻繁にコルテーゼ領を訪れるようになれば、司祭様に報告しなければなりませんが……今回は、侯爵の判断に従います」
「……ありがとうございます。司祭様には調査中のため、報告はお待ちくださいと連絡させていただきます」
「わかりました」
「バルツァル令嬢は、今後の予定は? 明日お戻りに?」
「はい。その予定です」
「そうですか。ルードヴィックも近々王都に向かいますので、調査結果や王宮への報告日など決まりましたら息子が教会を訪ねると思います」
「分かりました」
私が王都に戻るというと、夫人から沢山の物を渡される。
「これはね、領地特産のワインよ。それでこれが、美味しいって言ってくれたクッキーよ。道中で食べて。それで、これがフローレンス様に似合いそうで購入してしまったアクセサリー。それと……」
あまりの量の贈り物に困惑。
領地のワインやクッキーまでは遠慮なくもらえるのだが、次第に高級なものが準備されていく。
夫人にはルードヴィックしか子供はおらず、私を娘のように思ったのかもしれない。
だけど、これは貰い過ぎだ。
「侯爵夫人、こんなには頂けません」
「気にしないで、今回の件はこれでも足りないくらいなんだから」
『伝説の花』を発表すれば、かなりの価値を生むだろう。
まだ、秘密の段階。
「フローラ、貰ってほしい。母はもう一度君が来ると聞いてから準備をしていたんだ」
「そうなんですか? それでは……ありがたく頂きたいと思います。大切にします」
もう一台の馬車に夫人からの贈り物を運び入れている間、ルードヴィックが隣に立つ。
「俺も、もうすぐ王都に行くから」
「そうみたいですね」
「ん? 父に聞いたのか?」
「はい」
「父はなんて?」
「ルードヴィック様が調査結果を教えてくださると」
「それだけか?」
「はい」
「そうか……フローラは……聖女になるのか?」
「それは分かりません」
「なりたいのか?」
「……よくわかりません。ですが、指名されればお受けいたします」
「……そっか……」
全ての荷物を運び終え準備が整う。
「本日も滞在させていただきありがとうございます」
「……またな」
「はい。また」
王都に戻って数日後。
ルードヴィックが教会に訪れた。
「もう、調査を終えたのですか?」
「いや、今日は王都に来た報告だ」
「そうですか。しばらくはこちらですか?」
「あぁ。そのつもりでいる」
その後、彼はあの花の報告に何度か訪れる。
彼が何度も教会に訪れるので、他の候補者に質問される。
「あの方、もしかしてフローレンス様の婚約者ですか?」
「違います」
「コルテーゼ侯爵令息ですよね?」
「スカルノ様は知り合いなんですか?」
「お話ししたことはありませんが、社交会では評判ですよね。あの方はまだ婚約しておりませんから、婚約が殺到していると聞きます」
「そうなんですね」
「それで……お二人はどういう関係ですか?」
「各地の教会訪問でお会いし挨拶しました」
「……各地の教会訪問……」
聖女候補は休みの日に何をしているかなど話さない。
お互い触れないでいる。
聞けば教えてくれるのだろうが、私たちには『聖女』と『王妃』という立場が関わっているので互いの情報共有はほとんどない。
伝説の花の存在を知られるより、各地の教会を訪問を知られる方が重要度は違う。
それでも先輩二人がどんな慈善活動をしているのか噂などで耳に入る。
スカルノは貧困層へ食料配布をしていて、デルフィーナは孤児院で子供たちに将来の就職先などの相談に乗っている。
ファビオラは王都の景観をよくするために花壇を増やし掃除をする者を雇い、ラヴィニアは王都の騎士を激励している。
一・二年目の聖女候補は、生活に慣れることを優先。
三年目の聖女候補は、自身が何をすればいいのかを見つめる期間。
四年目から活動を始める。
77
あなたにおすすめの小説
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか契約聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
番外編(編集済み)と、外伝(新作)アップしました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。
結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
さようなら、私の初恋
しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」
物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。
だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。
「あんな女、落とすまでのゲームだよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる