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”乙女ゲーム”の崩壊した国
242話 蠢く悪意①(前半フェリシア視点・後半猫田視点)
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廊下でガシャン、と花瓶が割れる音がした。
花瓶の水を浴び、着古したドレスを纏って立っているのは――お義姉様。
花瓶を落とすために振りかぶっていた手を、私はゆっくりと下ろした。
感情を映さないその瞳を、間近に見つめながら、口角を上げて大きな声で話しかける。
「きゃー、お義姉様ったら。そんなに怒らないでくださいな」
私のその言葉に使用人が集まり始める。
ポタポタとドレスから水を滴らせ、無表情にこちらを見てくるお義姉様。
「そんな姿ではディディー様に失礼でしょ?お着替えされた方が良いわ――
どうせならディディー様のお好きなお色になさったら良いわ。似合わないでしょうけどね」
私は勝ち誇ったようにそのみすぼらしいお義姉様に言葉を紡ぐ。
「だって、ディディー様が会いに来たのが婚約者のお義姉様じゃないのは本当じゃないですか――
私に当たるのはやめてください」
次の私の言葉に応接室のドアが勢い良く開き、カツ、カツ、カツっと足音が私の横で止まる。私が目に涙をためて見上げるそこには、
情熱的な赤髪をなびかせるこの国の大公子息ディディー様がお姉さまを鋭い視線で睨みつけて立っていた。
「ディディー様…」
私の言葉に視線を私に向けたディディー様は甘い笑みを向け微笑んだ。
そして私の腰に手を添え引き寄せてから、再度お姉さまに視線を向けて
「私の婚約者が妹を虐げる人間だとは本当に父上の考えは理解に苦しむ。」
それだけお義姉様に言い捨てると踵を返し私と共に応接室に戻った。
そう、私の腰を抱き甘く微笑むのは、お義姉様の婚約者、大公子息ディディエ・ド・セリーヌ 様。
赤髪の美しい、この国きっての美貌を持つ大公子息、この美しい貴公子の婚約者が、
あんな灰色の髪をしたお義姉様……なんて、そんなのあり得ないわ。
あの方にふさわしいのは私の様なピンクブロンドにルビーの様な赤い瞳のヒロイン的な美少女でしょ。
突然違う世界に居るって気が付いた時意味の分からなかったけど、
うふふふふ
鏡を見た時の姿にうっとりした事だけは覚えてる。
黒髪メガネのダサい私より、ピンク色のふわふわした綿毛のような髪に
ディディー様の髪のような綺麗な赤い瞳―――
今どきの乙女ゲーム、ピンクブロンドが愛されヒロインの証!
絶対そうよ。
前の世界の、あんな口うるさい家族にギャンギャン言われながら生きなくていい、この世界最高。
私はこの世界で誰を犠牲にしても、一番幸せになってやるんだから!
だからお姉さまが邪魔なの。
本当に邪魔なの
私を差し置いて、この地を守る水の精霊王カイナール様に愛される少女なんて
神様から神託をもらうお義姉様が悪いのよ―――――
絶対、絶対、お義姉様の座を奪ってやるのだから!
私はソファーに座るディディー様に寄り添い頭を肩に預け微笑みかける。
「やだ、ディディー様は私を見ていてください。
ディディー様を一番思っているのは――」
ディディー様の手を取り私の頬に当て、手の温かさにうっとりしていると
「フェリシア、続きは?」
待てを喰らっている犬のような、熱い視線を私に向け続きを言えと催促している。
熱い視線に頬を染め、ディディー様の首に手をまわして呟く
「ディディー様を一番愛しているのは、私フェリシアですわ」
「お前は本当にかわいいな」
そう言いながら私に覆いかぶさる公子様――――
***(クレイタンの守護精霊・猫田視点)
『本当にあの者の魔力は気味の悪いまがまがしさを孕んでおる。
なぜクレイタンは何も言わんのじゃ…吾輩はいつでもあの女の首を掻っ切ってやるのに』
あの女は…この由緒あるアッセル家の入り婿だった公爵の愛人の娘。
アッセル家の正統な後継者であったクレイタンの母親が病死した後、
公爵家に後妻と連れ子として入ってきたのだ。
人間の見た目で言うととても美しいと評される姿かもしれぬが…
奴らは、親子そろって禍々しい気を発する。
この家に集っていた吾輩の妖精仲間がクレイに近づけなくなるほど気持ちの悪い存在だ。
そして、自分の愛する愛人を公爵家に招き入れることが出来た公爵は、いっそうその気持ちの悪い気を纏った親子を可愛がり、
反対に正当な後継者である、12歳というまだ子供のクレイタンに対する対応が悪くなっていった。
気持ちの悪い親子からの嫌がらせの日々…
小さなころはあんなに笑っていたクレイタンからは笑顔が消えていた。
吾輩の最愛の推しであるクレイタンのあの笑顔を奪った奴らを吾輩は許さない。
「猫くん、私は大丈夫。猫くんが居てくれるもの。」
クレイタンは屋根裏部屋の自室で窓の外を眺めながら口を開く。
その言葉に吾輩は感動し唇を噛み涙をこらえた。
「それに…たぶんもうすぐ私は解放されるわ」
最後に発した小さな言葉は吾輩の耳には入らず夜の闇にかき消された。
花瓶の水を浴び、着古したドレスを纏って立っているのは――お義姉様。
花瓶を落とすために振りかぶっていた手を、私はゆっくりと下ろした。
感情を映さないその瞳を、間近に見つめながら、口角を上げて大きな声で話しかける。
「きゃー、お義姉様ったら。そんなに怒らないでくださいな」
私のその言葉に使用人が集まり始める。
ポタポタとドレスから水を滴らせ、無表情にこちらを見てくるお義姉様。
「そんな姿ではディディー様に失礼でしょ?お着替えされた方が良いわ――
どうせならディディー様のお好きなお色になさったら良いわ。似合わないでしょうけどね」
私は勝ち誇ったようにそのみすぼらしいお義姉様に言葉を紡ぐ。
「だって、ディディー様が会いに来たのが婚約者のお義姉様じゃないのは本当じゃないですか――
私に当たるのはやめてください」
次の私の言葉に応接室のドアが勢い良く開き、カツ、カツ、カツっと足音が私の横で止まる。私が目に涙をためて見上げるそこには、
情熱的な赤髪をなびかせるこの国の大公子息ディディー様がお姉さまを鋭い視線で睨みつけて立っていた。
「ディディー様…」
私の言葉に視線を私に向けたディディー様は甘い笑みを向け微笑んだ。
そして私の腰に手を添え引き寄せてから、再度お姉さまに視線を向けて
「私の婚約者が妹を虐げる人間だとは本当に父上の考えは理解に苦しむ。」
それだけお義姉様に言い捨てると踵を返し私と共に応接室に戻った。
そう、私の腰を抱き甘く微笑むのは、お義姉様の婚約者、大公子息ディディエ・ド・セリーヌ 様。
赤髪の美しい、この国きっての美貌を持つ大公子息、この美しい貴公子の婚約者が、
あんな灰色の髪をしたお義姉様……なんて、そんなのあり得ないわ。
あの方にふさわしいのは私の様なピンクブロンドにルビーの様な赤い瞳のヒロイン的な美少女でしょ。
突然違う世界に居るって気が付いた時意味の分からなかったけど、
うふふふふ
鏡を見た時の姿にうっとりした事だけは覚えてる。
黒髪メガネのダサい私より、ピンク色のふわふわした綿毛のような髪に
ディディー様の髪のような綺麗な赤い瞳―――
今どきの乙女ゲーム、ピンクブロンドが愛されヒロインの証!
絶対そうよ。
前の世界の、あんな口うるさい家族にギャンギャン言われながら生きなくていい、この世界最高。
私はこの世界で誰を犠牲にしても、一番幸せになってやるんだから!
だからお姉さまが邪魔なの。
本当に邪魔なの
私を差し置いて、この地を守る水の精霊王カイナール様に愛される少女なんて
神様から神託をもらうお義姉様が悪いのよ―――――
絶対、絶対、お義姉様の座を奪ってやるのだから!
私はソファーに座るディディー様に寄り添い頭を肩に預け微笑みかける。
「やだ、ディディー様は私を見ていてください。
ディディー様を一番思っているのは――」
ディディー様の手を取り私の頬に当て、手の温かさにうっとりしていると
「フェリシア、続きは?」
待てを喰らっている犬のような、熱い視線を私に向け続きを言えと催促している。
熱い視線に頬を染め、ディディー様の首に手をまわして呟く
「ディディー様を一番愛しているのは、私フェリシアですわ」
「お前は本当にかわいいな」
そう言いながら私に覆いかぶさる公子様――――
***(クレイタンの守護精霊・猫田視点)
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なぜクレイタンは何も言わんのじゃ…吾輩はいつでもあの女の首を掻っ切ってやるのに』
あの女は…この由緒あるアッセル家の入り婿だった公爵の愛人の娘。
アッセル家の正統な後継者であったクレイタンの母親が病死した後、
公爵家に後妻と連れ子として入ってきたのだ。
人間の見た目で言うととても美しいと評される姿かもしれぬが…
奴らは、親子そろって禍々しい気を発する。
この家に集っていた吾輩の妖精仲間がクレイに近づけなくなるほど気持ちの悪い存在だ。
そして、自分の愛する愛人を公爵家に招き入れることが出来た公爵は、いっそうその気持ちの悪い気を纏った親子を可愛がり、
反対に正当な後継者である、12歳というまだ子供のクレイタンに対する対応が悪くなっていった。
気持ちの悪い親子からの嫌がらせの日々…
小さなころはあんなに笑っていたクレイタンからは笑顔が消えていた。
吾輩の最愛の推しであるクレイタンのあの笑顔を奪った奴らを吾輩は許さない。
「猫くん、私は大丈夫。猫くんが居てくれるもの。」
クレイタンは屋根裏部屋の自室で窓の外を眺めながら口を開く。
その言葉に吾輩は感動し唇を噛み涙をこらえた。
「それに…たぶんもうすぐ私は解放されるわ」
最後に発した小さな言葉は吾輩の耳には入らず夜の闇にかき消された。
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