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”乙女ゲーム”の崩壊した国
243話 蠢く悪意②(クレイ視点)
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朝日が昇る前、まだ森の動物たちも目覚めぬ早朝。
私は祈りのため、公爵家の護衛を一人伴い、精霊の森の祈りの泉へと辿り着いた。
秋の冷気の中、祈りのための薄衣を纏い、
今日も神聖なる精霊の泉に身を浸し、静かに祈りを捧げる――
そのはずだった。
でも今日はもう駄目だった。
身が竦む季節、精霊の泉の水が、栄養も行き届かぬ痩せた身体から、容赦なく体温を奪っていく。
祈ろうとしても言葉も出ない。
心の悲鳴をもう無視することが出来なくて…
泉にぽたりと水滴が落ち波紋が広がる。
私のお母様が亡くなってから、私の瞳に映る世界は色を無くした。
実父からの無関心
お義母様の暴言と暴力
義妹からの嫌がらせ
私に嫌悪の瞳を向ける婚約者
今の私の自由な時間は、この泉で祈る時間だけ…
行き帰りも、公爵家の護衛という名の監視に連れられ家と泉の行き来だけ…
ポタリ、ポタリ、と涙が落ち波紋が広がって重なって…
祈りの時の様に手を組み
目を閉じて涙を流した
今日は、隠していたお母さまの形見のネックレスが妹に見つかってしまって、
「こんな古臭いネックレスなんかを、後生大事に持ってるなんて気味の悪い事。
誰からも愛されていないお姉さまに、新しいアクセサリーを下さる方なんて居ないのでしょうけどね。
そんな古臭いモノを付けていたら我が家の恥だわ」
そう言って私の目の前で踏み壊してしまった。
ポタリ、ポタリ、ポタリと…涙は止まらず溢れてくる…
この泉から出るとまたあの家に帰らなければならない…
苦しくて、
辛くて、
消えたくて
岸から五メートルほど離れた泉の中で、祈るように弱音を吐露する…
母が病に倒れたその日から、この泉の浄化の祈りを11歳の時から私が代わりにやってきた。
~泉では、祈りの言葉で身体を満たし、魔力を染め上げ祈るのよ~
生前母が私に掛けてくれた言葉。
その言葉の通り、精霊王カイナール様に私の魔力で泉の浄化の願いを込めて
5年間続けてきた……
毎日してきた事なのに…
今日は…祈りの言葉が口から出ず…代わりに瞳から雫が止めどなく溢れてしまう…
お母さまが亡くなったあの日の様に辛くて………
猫くんが傍で怒ってくれて、励ましてくれても…もう頑張れない私が居る。
壊されないように、奪われないように――
必死で隠していた、私の支え。
その一つが、また消えた。
頑張れない私が、祈りではない言葉を紡いだ
精霊王カイナール様
わたくしは消えてしまいたい。
そんな無責任な事を言う私目をお許しください…
精霊の泉を浄化するお役目を次の代へ紡げないことをお許しください…
私はもう、ここに存在する支えすら失ったのです…
何一つお母さまを思い出す形見さえ私には残っていないのです
精霊王カイナール様、私は…
あの家ではもう生きていけない…いえ
この国では―――生きていけない――――
祈りを捧げるたび、泉は淡く金色に輝く。
けれど今日は違った。
祈りではなく、弱音を吐露しただけなのに――
泉は深く、深く青く染まり、
やがて白く、強い光を放ち始めた。
あまりにも強い光に私は目を閉じた。
突然、身を切るような冷たい水の中に居た私の身体は、暖かな何かに包まれていた。
そして私に優しい声がかけられた。
『目を開けてごらん。
クレイ・アッセル。我が愛し子よ』
その優しい声音に私はゆっくりと瞼を上げた。
私の目の前にはキラキラと光を背後に従えた美しく輝く男性の姿があった。
「せ……精霊…王様?」
私のたどたどしい言葉に、微笑みを浮かべ目の前の男性は頷いてから、私の頬を撫でた。
『うむ。代々愛し子からは、そう呼ばれておる…が…そうだな』
精霊王様は言いかけて、少し考えるように口元へ手を当てた。
そして、先ほどよりも柔らかな微笑みを、私へと向けられた。
『我はそなたには…カイナールと呼んで欲しい』
「カ…カイナール…様?」
私がオウム返しの様に名前を呼ぶと、光を携えた精霊王カイナール様は先ほどよりも美しく輝くような笑顔を私に向けてくれた。
『我が愛し子よ。そう呼ぶと良い』
「あ、あの…わ、私の事…も…クレイと呼んでください」
私は名前を読んだだけで嬉しそうに笑顔をくれるカイナール様に…私は胸元の衣をぎゅっと握り、不躾にもお願いをしていた。
「もう…わ、私の名前を、よ…呼んでくれる人が居ないのです。ダメでしょうか…」
『クレイでよいか?』
久々に猫くん以外から、私は自分の名前を聞いた…
「は…い…っうぅうう」
私は顔を手で覆い下を向いて泣いた…そんな私をカイナール様は、優しく抱きしめて背中を優しくさすってくれた。
『我慢強い子だ…こんなになるまで弱音も吐かず…
頑張っていたんだな…
クレイがこんなに心を痛めているのにだれも、寄り添わなんだと言う事だな』
カイナール様はぽつりぽつりと思い出すように私をあやしながら話はじめた。
『数百年前にこの国の若き王に願われこの国を守護してきたが…
今のあの者の血脈は愚か者に成り下がったという事だな…』
残念そうに大きなため息を漏らすと、カイナール様は私の名前を呼び頭を撫でてくれた。
私は祈りのため、公爵家の護衛を一人伴い、精霊の森の祈りの泉へと辿り着いた。
秋の冷気の中、祈りのための薄衣を纏い、
今日も神聖なる精霊の泉に身を浸し、静かに祈りを捧げる――
そのはずだった。
でも今日はもう駄目だった。
身が竦む季節、精霊の泉の水が、栄養も行き届かぬ痩せた身体から、容赦なく体温を奪っていく。
祈ろうとしても言葉も出ない。
心の悲鳴をもう無視することが出来なくて…
泉にぽたりと水滴が落ち波紋が広がる。
私のお母様が亡くなってから、私の瞳に映る世界は色を無くした。
実父からの無関心
お義母様の暴言と暴力
義妹からの嫌がらせ
私に嫌悪の瞳を向ける婚約者
今の私の自由な時間は、この泉で祈る時間だけ…
行き帰りも、公爵家の護衛という名の監視に連れられ家と泉の行き来だけ…
ポタリ、ポタリ、と涙が落ち波紋が広がって重なって…
祈りの時の様に手を組み
目を閉じて涙を流した
今日は、隠していたお母さまの形見のネックレスが妹に見つかってしまって、
「こんな古臭いネックレスなんかを、後生大事に持ってるなんて気味の悪い事。
誰からも愛されていないお姉さまに、新しいアクセサリーを下さる方なんて居ないのでしょうけどね。
そんな古臭いモノを付けていたら我が家の恥だわ」
そう言って私の目の前で踏み壊してしまった。
ポタリ、ポタリ、ポタリと…涙は止まらず溢れてくる…
この泉から出るとまたあの家に帰らなければならない…
苦しくて、
辛くて、
消えたくて
岸から五メートルほど離れた泉の中で、祈るように弱音を吐露する…
母が病に倒れたその日から、この泉の浄化の祈りを11歳の時から私が代わりにやってきた。
~泉では、祈りの言葉で身体を満たし、魔力を染め上げ祈るのよ~
生前母が私に掛けてくれた言葉。
その言葉の通り、精霊王カイナール様に私の魔力で泉の浄化の願いを込めて
5年間続けてきた……
毎日してきた事なのに…
今日は…祈りの言葉が口から出ず…代わりに瞳から雫が止めどなく溢れてしまう…
お母さまが亡くなったあの日の様に辛くて………
猫くんが傍で怒ってくれて、励ましてくれても…もう頑張れない私が居る。
壊されないように、奪われないように――
必死で隠していた、私の支え。
その一つが、また消えた。
頑張れない私が、祈りではない言葉を紡いだ
精霊王カイナール様
わたくしは消えてしまいたい。
そんな無責任な事を言う私目をお許しください…
精霊の泉を浄化するお役目を次の代へ紡げないことをお許しください…
私はもう、ここに存在する支えすら失ったのです…
何一つお母さまを思い出す形見さえ私には残っていないのです
精霊王カイナール様、私は…
あの家ではもう生きていけない…いえ
この国では―――生きていけない――――
祈りを捧げるたび、泉は淡く金色に輝く。
けれど今日は違った。
祈りではなく、弱音を吐露しただけなのに――
泉は深く、深く青く染まり、
やがて白く、強い光を放ち始めた。
あまりにも強い光に私は目を閉じた。
突然、身を切るような冷たい水の中に居た私の身体は、暖かな何かに包まれていた。
そして私に優しい声がかけられた。
『目を開けてごらん。
クレイ・アッセル。我が愛し子よ』
その優しい声音に私はゆっくりと瞼を上げた。
私の目の前にはキラキラと光を背後に従えた美しく輝く男性の姿があった。
「せ……精霊…王様?」
私のたどたどしい言葉に、微笑みを浮かべ目の前の男性は頷いてから、私の頬を撫でた。
『うむ。代々愛し子からは、そう呼ばれておる…が…そうだな』
精霊王様は言いかけて、少し考えるように口元へ手を当てた。
そして、先ほどよりも柔らかな微笑みを、私へと向けられた。
『我はそなたには…カイナールと呼んで欲しい』
「カ…カイナール…様?」
私がオウム返しの様に名前を呼ぶと、光を携えた精霊王カイナール様は先ほどよりも美しく輝くような笑顔を私に向けてくれた。
『我が愛し子よ。そう呼ぶと良い』
「あ、あの…わ、私の事…も…クレイと呼んでください」
私は名前を読んだだけで嬉しそうに笑顔をくれるカイナール様に…私は胸元の衣をぎゅっと握り、不躾にもお願いをしていた。
「もう…わ、私の名前を、よ…呼んでくれる人が居ないのです。ダメでしょうか…」
『クレイでよいか?』
久々に猫くん以外から、私は自分の名前を聞いた…
「は…い…っうぅうう」
私は顔を手で覆い下を向いて泣いた…そんな私をカイナール様は、優しく抱きしめて背中を優しくさすってくれた。
『我慢強い子だ…こんなになるまで弱音も吐かず…
頑張っていたんだな…
クレイがこんなに心を痛めているのにだれも、寄り添わなんだと言う事だな』
カイナール様はぽつりぽつりと思い出すように私をあやしながら話はじめた。
『数百年前にこの国の若き王に願われこの国を守護してきたが…
今のあの者の血脈は愚か者に成り下がったという事だな…』
残念そうに大きなため息を漏らすと、カイナール様は私の名前を呼び頭を撫でてくれた。
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