安全第一異世界生活

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イルグリット王国 魔道具編

165話 彼らが去った後 【ガンゾウ工房 編】

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休みの工房ではいつもの光景が繰り広げられている。今日も娘のシンと弟子のマルの口喧嘩から賑やかさが広がる

「マルは、理想論ばかりで市民の暮らしを解ってないニャ」

「なんだと!!我がこの生活に溶け込めてないと言うのか!!」

「現実が分かれば変わるのかニャ…爺!!昨日の手間賃ちょうだいニャ!!」

「お前!!師匠に失礼だろうが!!」

バタバタと走り出す二人を見送りリビングで俺はお茶を飲む。平和な優しい時間。
今のこの時間を迎えれた事に感謝を

16年前フリムストに出向したとたん俺たちの生活は、思い描いていたよりもはるかに悪く、フリムストに着いた途端、強制的に男女に分けられ男は6人と5人で分けられ、共同生活になり、俺は妻と離された。妻は産後すぐに参加したためかなり体調が悪かったため一緒に行ったもう一人の女性技師と共にまだましな生活だったらしい。ご飯も生活もまるで強制労働施設にでもいるようで不快だった。
俺たちは技術支援に来たと何度も訴えたが、聞き入れてもらえず、流れ作業の様に同じような魔道具を作らされる毎日。それは俺たち職人には耐え難く辛いものであった。
特に友人のゴンザレスは黒髪と言うのもあって、フリムストの連中には辛く当たられていた。イルグリット王国には無かった黒に対する差別も受け入れがたいものであった、そんな状態がどのくらい続いたのか、皆が精神的にも、肉体的にも不安定になり始めて居た頃に、美しい顔立ちの少年が目の下に隈を作って、あまり体調の良くない様子で従者や護衛を連れて俺たちが居る建物にやって来たかと思うと、顔を顰めた。

その顔を見て幼くても俺たちを見下すのかとそう敵対心が沸いた時、少年は小声で「なんて事を…」そう小さくつぶやいた言葉を獣人の俺は聞き逃さなかった。そうして隣に立つ自分のお付きの人間に指示を出し、録画用魔道石を用意させ建物の隅から隅を録画し俺たちの生活の場、環境の悪さを映像に収め、悲痛な顔をして首を振った。

その後少年はこの建物の責任者、魔道具技師の私たちの担当の者を呼び、大きな声で責任者達を叱責した。

「この方たちは隣国の客人である。お前は客人にこのような劣悪な環境で何をさすと言うのか!すべてを映像石に納めさせてもらった。国際問題になった時責任が誰に行くか、考えてみるがいい!!」

いつも俺たちを見下しさげすんでいた男はひれ伏し、その少年に跪いたが少年はすぐさま自分の護衛たちにその男を捉えさせた。俺たちは即座に違う建物に移された。一人一部屋で、奇麗で十分プライバシーが守られる部屋。ふかふかのベッド、シャワーも毎日浴びれる。食堂があり十分な量の食事が提供されると聞き、何もかも違う待遇に俺たちは面食らった。大きな広間に集められた俺たちの前に、護衛に守られながら再度少年が現れた。その少年は先ほどよりも体調が悪そうでふらつきながらも、周りに支えられ俺たちの前に立った。その時初めて少年の身分を知った。

「私はこの国の第一王子ウィルフレッド・レミア・フリムスト である。わが国の不手際で皆様には大変な苦痛を強いてしまい申し訳なかった、この館は私が母から譲り受けた館である。今日からこの館がイルグリット王国の魔道具師の皆さまの家となります。詳しい事はこの館を管理するこの者に聞いていただければ。要望がある場合もこの者に言ってください。
それから皆様の技術を我が国の民に教えていただきたく、30人ほど生徒を用意しました。1日朝8時から夕方6時までの10時間の拘束時間その間休憩が3度入ります。そちらの詳細は担当のこの者に聞いてください。もし何かありましたら担当者に。私が目を常に光らせて居れればいいのですが、何分勉強中の身、いたらない点はご容赦を。私の権限でできることは限られてしまいますが、少しでもお力になれればと思います」

そう言って少年は出て行った。俺たちは唖然として彼を見ていた…後日担当者と話しているときに聞いた話。
ウィルフレッド殿下はまだ10歳だった。あんなにしっかりと自分の目で見て、判断する能力がある10歳児に俺は感心してしまった。
正妃の産んだ第一子。ウィルフレッド殿下は、後押しに正妃の生家公爵家がついている彼は、王太子に内定しているという。
ただ国王様から嫌がらせの様に10歳の子供が処理できないような課題を出されているという…目の下の隈と体調の悪さはそのせいだったのかと納得した。

「あの方は、噂であなた達の話を聞き、出された課題を寝る間も惜しんでやり遂げて、あの日視察に行ったのです。王は口うるさい王妃と王子を毛嫌いしておりますから…あなた方の件、王は二人に知られたくなかったのでしょう。
王子と王妃様の知る所となった今、公爵家の権力を使いお守りします。体調が悪い方は私に知らせてください。神官を呼びますので」

俺たちは誰一人掛けることなく帰還できたのも、あの時目の下に大きなクマを作ってでも動いてくれた10歳の少年のおかげである事を俺は一生忘れない。
彼は確かに俺たちを16年間拘束した国の王太子ではあるが、その間ずっと俺たちを守ってくれていた恩人だと使節団皆知っているから。
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