悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人

文字の大きさ
2 / 70

第2話 世界樹に登る悪役令嬢

しおりを挟む
 目覚めた時に居た、テレーズさんと言うメイドさんが付き添いで、魔法学園へ。
 ルーシーは伯爵令嬢なのに、メイドさんが一人しか居ないし、そもそも誰も送り出してくれなかった。
 どうしてだろうかと思い、行きの馬車の中で聞いてみたら……ルーシーはこの家の子供ではないらしい。
 幼い頃に病気で両親を亡くし、親族をたらい回しにされ、ようやく全寮制の魔法学園に入学する年齢になったのだとか。
 さっき私が倒れていたのも、あの家の本当の子供たちに、魔法の練習と称して、攻撃魔法の実験台に……って、流石に酷すぎない!?
 ……だからルーシーは、幸せそうな主人公に突っ掛かっていたのかな?

「ルーシー様。私がお供できるのは、この学園の門までです。突然私の名前を教えて欲しいと言ったり、ご両親の事を聞いてきたり……正直不安しかありませんが、また週末に参りますので、ひとまず一週間頑張ってください」

 そう言って、テレーズさんが帰っていく。
 テレーズさんは、ルーシーが主人公にちょっかいを掛けた後、謝りに来るキャラだ。
 その際に、時々謝罪の品として、アイテムをくれたりするんだけど、私にもくれないかしら?
 パラメータアップ系のアイテムだから、結構有益なんだけどな。

「……って、よく考えたら、今は自由に何処でも行ける、めちゃくちゃ貴重な時間じゃない? もしかして、ゲーム後半にならないと行けない場所にも行けたりして」

 物は試しと、初めて来るのに、隅々まで知っている学園内を歩き、まずはルーシーの部屋へ行って荷物を置く。
 それから学園の裏門へ行って、その先にある森へ……行けた!
 普通は門で警備兵に止められて外に出られないのに、そもそも兵士さんたちが居ない。まだゲームが始まっていないからかな?

 森の奥にある世界樹は、エンディングで主人公が攻略対象に呼び出され、告白される場所なんだよね……と、それはさて置き、風魔法で空を飛び、その樹の上に行くと、主人公の最強の武器、世界樹の杖が手に入るのよね。
 世界樹の根元へやって来たので、早速……って思ったんだけど、

「魔法って、どうやって使うのっ!?」

 ゲームなら、コントローラーで選択してボタンを押すだけなんだけど、ここでの魔法の使い方が分からない。

「し、仕方ないわね。こうなったら……木登りよっ!」

 正直、魔法の使い方を学んでから来た方が楽ではあるけど、次にここへ来られるのは最短で二年後になってしまう。
 強い杖があれば、強力な魔法も使えるし、これは何としても、今手に入れておかなきゃ!

「えぃっ! ん……とぉっ!」

 ふふっ。懐かしいな。小学生の頃は、こうしてクラスの男子と一緒に木登りしたりして遊んでいたもんね。
 ……最終的に、引きこもりになって、ゲームばかりしていたけど。
 でも、今は魔法学園入学直前の十五歳の身体だから、ちょっと大きな樹だけど、これくらい……やった! 登り切った!
 何メートルあるか分からないけど、かなり高い場所まで登り、目的の……あった! 世界樹の杖だっ!
 最後の最後で落ちないよう、慎重に手を伸ばし……やった! 手に入れたわっ!
 本来、ゲーム終盤で手に入れる武器を手にして、これでかなりスキル習得イベントや、称号習得が楽になると思っていると、

『ふふっ。まさか魔法を使わずに、ここまで登って来る者が居るなんてね』

 突然、聞いた事の無い声が響き渡る。

「だ、誰ですかっ!?」
『私よ。貴女が今乗っている、世界樹よ』
「……え? えぇぇぇっ!? せ、世界樹……いえ、世界樹さんって喋るんですね!?」
『えぇ。喋るというより、魔法の力で話し掛けているんだけどね』

 知らなかった。
 これはゲームとの差異? それとも、ゲームにもあった設定なの?
 ……ううん。そもそも、ゲームの中では木登りなんて出来なかったから、やっぱりこの世界独自の現象なんだ!
 そんな事を考えていると、再び世界樹さんが話し掛けてきた。

『貴女は面白い女性ですね。もう何年もここで学園の生徒や教師を見てきましたが、私に登ろうとしたのは、貴女が初めてです』
「あ、あはは……すみません」
『それに、貴女は一度魂が入れ替わっている……のですか? 普通の人間とは何か違う気がします』
「あー、実は……」

 何となく隠し事が出来ない気がしたので、私が日本という世界に居た事や、何らかの理由でルーシーという女性に、おそらく転生してしまっている事を話す。

『なるほど。では、勝手が違って困る事も多いでしょう。これも何かの縁です。これから、私が貴女に力を貸してあげましょう』
「えっ!? 宜しいのですか?」
『はい。先程話した通り、貴女は面白そうですしね。私はユリアナ。これから、宜しくお願い致しますね』
「こ、こちらこそ、宜しくお願い致します」

 アイテム目当てで世界樹に登ったら、その世界樹にサポートして貰える事になってしまった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

【完結】そうは聖女が許さない〜魔女だと追放された伝説の聖女、神獣フェンリルとスローライフを送りたい……けど【聖水チート】で世界を浄化する〜

阿納あざみ
ファンタジー
光輝くの玉座に座るのは、嘘で塗り固められた偽りの救世主。 辺境の地に追いやられたのは、『国崩しの魔女』の烙印を押された、本物の奇跡。 滅びゆく王国に召喚されたのは、二人の女子高生。 一人は、そのカリスマ性で人々を魅了するクラスの女王。 もう一人は、その影で虐げられてきた私。 偽りの救世主は、巧みな嘘で王国の実権を掌握すると、私に宿る“本当の力”を恐れるがゆえに大罪を着せ、瘴気の魔獣が跋扈する禁忌の地――辺境へと追放した。 だが、全てを失った絶望の地でこそ、物語は真の幕を開けるのだった。 △▼△▼△▼△▼△ 女性HOTランキング5位ありがとうございます!

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

ギルドの小さな看板娘さん~実はモンスターを完全回避できちゃいます。夢はたくさんのもふもふ幻獣と暮らすことです~

うみ
ファンタジー
「魔法のリンゴあります! いかがですか!」 探索者ギルドで満面の笑みを浮かべ、元気よく魔法のリンゴを売る幼い少女チハル。 探索者たちから可愛がられ、魔法のリンゴは毎日完売御礼! 単に彼女が愛らしいから売り切れているわけではなく、魔法のリンゴはなかなかのものなのだ。 そんな彼女には「夜」の仕事もあった。それは、迷宮で迷子になった探索者をこっそり助け出すこと。 小さな彼女には秘密があった。 彼女の奏でる「魔曲」を聞いたモンスターは借りてきた猫のように大人しくなる。 魔曲の力で彼女は安全に探索者を救い出すことができるのだ。 そんな彼女の夢は「魔晶石」を集め、幻獣を喚び一緒に暮らすこと。 たくさんのもふもふ幻獣と暮らすことを夢見て今日もチハルは「魔法のリンゴ」を売りに行く。 実は彼女は人間ではなく――その正体は。 チハルを中心としたほのぼの、柔らかなおはなしをどうぞお楽しみください。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

処理中です...