29 / 30
第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女
第64話 メインディッシュ
しおりを挟む
セマルグルさんに問われた族長さんが、ゆっくりと口を開く。
「お前が……お前が娘を殺したからだっ! 娘を……エレンを返せっ!」
そう言って、族長さんが涙を流しながらセマルグルさんを睨む。
だけど、
「ん? 我がか?」
「そうだ! エレンを殺しておいて、のうのうと寝やがって! ここでオレが殺されたとしても、絶対にお前は許さない! 死んでも地獄から呪ってやる!」
「むう。なにを言っているのか、さっぱりわからないな」
セマルグルさんが訳がわからないと言った様子で困っている。
「あの、さっきから何やら騒がしいけれど、誰か私の事を呼んだ? バステトさんの魚の骨取りをずっとさせられていて、私は殆ど食べていない……って、ダークエルフのみんな!? こんな所で何をしているの?」
「何って、エレンを殺したグリフォンに、ダークエルフの呪いをかけているんだ。例え俺が死んでも、このグリフォンは絶対に……って、エレン!? い、生き返ったのか!?」
「生き返ったも何も、一度も死んだ事なんてないんだけど。まぁ、グリフォンさんたちが殺気立っていると、生きた心地はしないけど……って、あれ? 父上まで居たんだ」
「え、エレンっ! エーレーンーっ! 良かった……生きてる! 温かい! エレーンっ!」
「な、何っ!? 何なのっ!?」
族長さんはエレンさんのお父さんだったらしく、涙と鼻水を垂れ流しながら、エレンさんに抱きつく。
エレンさんが心底嫌そうに顔をしかめ……あー、思いっきり吹き飛ばされた。
「い、痛い……夢じゃないっ! エレンは生きていたんだっ!」
「父上。生きていたというか、そもそもどうして私が死んだと思ったの?」
「いや、だって……そこのグリフォンに空高くから落とされたって聞いたからさ」
「あー、あの時の話ね。あれは……確かに死ぬかと思ったわね」
聞けば、セマルグルさんがエレンさんを咥えて上空へ舞い上がり、誤って落としてしまったのを、ダークエルフの一人が見ていたらしい。
まぁあの高さから落ちれば、亡くなったと思ってしまっても仕方ないかも。
「むっ!? あの時の話か。だが、落としてしまったのはともかく、ちゃんと助けたではないか」
「メチャクチャ怖かったですけどね」
「だがあれは、そもそもお主がセシリアに無礼な態度を取ったからではないか」
「そ、それはそうですけど……」
セマルグルさんとエレンさんが、あの時の話をしていると、突然誰かのお腹がぐーっと鳴く。
「あ、そうだ! メインディッシュを出そうとしていた所だったんだ。せっかくなので、みんなで食べましょう。沢山あるから、どうぞ」
すっかり忘れかけていた鶏肉料理をオーブンから取り出すと、具現化魔法で大きなテーブルを作って、その真ん中へ。
人数分の食器も作り出すと、それぞれのお皿へ鶏肉を乗せていく。
「むぅ。我の分が減ってしまうではないか」
「そうなのじゃ。妾もセシリアの料理を食べたいのじゃ。先程の魚料理はもの凄く美味しかったのじゃ」
「まぁまぁ。これは簡単に、しかもすぐ出来るから。すぐ次を作るわね」
みんなに配り終わったら、私はすぐにおかわりを作り始める。
その一方で、鶏肉を口にしたダークエルフさんたちや、エレンさんの表情が変わった。
「こ、この味と風味は、我々のミソっ!?」
「いや、確かにミソを使っているが、それだけでは……ま、待った! この味は、まさかマヨネーズ!?」
「正解っ! 味噌とマヨネーズを混ぜた、味噌マヨネーズのソースを使った、チキンの照り焼きよ」
一応、これが私のエレンさんへの答えなんだけど……伝わったかな?
「……なんという旨さだ。まさか、ミソとマヨネーズが合うなんて、想像も出来なかった」
「私からすると、味噌もマヨネーズも、どちらも美味しい調味料なんだから、どっちを使うとかじゃなくて、どっちも使って良いと思うの」
「ぐっ……た、確かに、セシリア殿の言う通りかもしれません」
「えぇ。この料理には、味噌とマヨネーズ……どちらが欠けても作れないの。だから、みんなで仲良くしましょ?」
いがみ合わずに、手を取り合う事を選択して欲しいと伝えたけど、エレンさんが渋い顔をして固まっている。
「お主……どうするつもりなのだ? せっかくセシリアが……」
「い、いえ、もちろん仲良く致します! そう、美味しい料理があると、平和ですよねっ!」
セマルグルさんに詰め寄られたエレンさんが、若干引きつった顔で話しているのが少し引っかかるけれど、とりあえず一件落着……かな?
「お前が……お前が娘を殺したからだっ! 娘を……エレンを返せっ!」
そう言って、族長さんが涙を流しながらセマルグルさんを睨む。
だけど、
「ん? 我がか?」
「そうだ! エレンを殺しておいて、のうのうと寝やがって! ここでオレが殺されたとしても、絶対にお前は許さない! 死んでも地獄から呪ってやる!」
「むう。なにを言っているのか、さっぱりわからないな」
セマルグルさんが訳がわからないと言った様子で困っている。
「あの、さっきから何やら騒がしいけれど、誰か私の事を呼んだ? バステトさんの魚の骨取りをずっとさせられていて、私は殆ど食べていない……って、ダークエルフのみんな!? こんな所で何をしているの?」
「何って、エレンを殺したグリフォンに、ダークエルフの呪いをかけているんだ。例え俺が死んでも、このグリフォンは絶対に……って、エレン!? い、生き返ったのか!?」
「生き返ったも何も、一度も死んだ事なんてないんだけど。まぁ、グリフォンさんたちが殺気立っていると、生きた心地はしないけど……って、あれ? 父上まで居たんだ」
「え、エレンっ! エーレーンーっ! 良かった……生きてる! 温かい! エレーンっ!」
「な、何っ!? 何なのっ!?」
族長さんはエレンさんのお父さんだったらしく、涙と鼻水を垂れ流しながら、エレンさんに抱きつく。
エレンさんが心底嫌そうに顔をしかめ……あー、思いっきり吹き飛ばされた。
「い、痛い……夢じゃないっ! エレンは生きていたんだっ!」
「父上。生きていたというか、そもそもどうして私が死んだと思ったの?」
「いや、だって……そこのグリフォンに空高くから落とされたって聞いたからさ」
「あー、あの時の話ね。あれは……確かに死ぬかと思ったわね」
聞けば、セマルグルさんがエレンさんを咥えて上空へ舞い上がり、誤って落としてしまったのを、ダークエルフの一人が見ていたらしい。
まぁあの高さから落ちれば、亡くなったと思ってしまっても仕方ないかも。
「むっ!? あの時の話か。だが、落としてしまったのはともかく、ちゃんと助けたではないか」
「メチャクチャ怖かったですけどね」
「だがあれは、そもそもお主がセシリアに無礼な態度を取ったからではないか」
「そ、それはそうですけど……」
セマルグルさんとエレンさんが、あの時の話をしていると、突然誰かのお腹がぐーっと鳴く。
「あ、そうだ! メインディッシュを出そうとしていた所だったんだ。せっかくなので、みんなで食べましょう。沢山あるから、どうぞ」
すっかり忘れかけていた鶏肉料理をオーブンから取り出すと、具現化魔法で大きなテーブルを作って、その真ん中へ。
人数分の食器も作り出すと、それぞれのお皿へ鶏肉を乗せていく。
「むぅ。我の分が減ってしまうではないか」
「そうなのじゃ。妾もセシリアの料理を食べたいのじゃ。先程の魚料理はもの凄く美味しかったのじゃ」
「まぁまぁ。これは簡単に、しかもすぐ出来るから。すぐ次を作るわね」
みんなに配り終わったら、私はすぐにおかわりを作り始める。
その一方で、鶏肉を口にしたダークエルフさんたちや、エレンさんの表情が変わった。
「こ、この味と風味は、我々のミソっ!?」
「いや、確かにミソを使っているが、それだけでは……ま、待った! この味は、まさかマヨネーズ!?」
「正解っ! 味噌とマヨネーズを混ぜた、味噌マヨネーズのソースを使った、チキンの照り焼きよ」
一応、これが私のエレンさんへの答えなんだけど……伝わったかな?
「……なんという旨さだ。まさか、ミソとマヨネーズが合うなんて、想像も出来なかった」
「私からすると、味噌もマヨネーズも、どちらも美味しい調味料なんだから、どっちを使うとかじゃなくて、どっちも使って良いと思うの」
「ぐっ……た、確かに、セシリア殿の言う通りかもしれません」
「えぇ。この料理には、味噌とマヨネーズ……どちらが欠けても作れないの。だから、みんなで仲良くしましょ?」
いがみ合わずに、手を取り合う事を選択して欲しいと伝えたけど、エレンさんが渋い顔をして固まっている。
「お主……どうするつもりなのだ? せっかくセシリアが……」
「い、いえ、もちろん仲良く致します! そう、美味しい料理があると、平和ですよねっ!」
セマルグルさんに詰め寄られたエレンさんが、若干引きつった顔で話しているのが少し引っかかるけれど、とりあえず一件落着……かな?
241
あなたにおすすめの小説
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~
白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」
マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。
そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。
だが、この世には例外というものがある。
ストロング家の次女であるアールマティだ。
実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。
短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
追放悪役令嬢、辺境の荒れ地を楽園に!元夫の求婚?ざまぁ、今更遅いです!
黒崎隼人
ファンタジー
皇太子カイルから「政治的理由」で離婚を宣告され、辺境へ追放された悪役令嬢レイナ。しかし彼女は、前世の農業知識と、偶然出会った神獣フェンリルの力を得て、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。
そんな彼女の元に現れたのは、離婚したはずの元夫。「離婚は君を守るためだった」と告白し、復縁を迫るカイルだが、レイナの答えは「ノー」。
「離婚したからこそ、本当の幸せが見つかった」
これは、悪女のレッテルを貼られた令嬢が、自らの手で未来を切り拓き、元夫と「夫婦ではない」最高のパートナーシップを築く、成り上がりと新しい絆の物語。
【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!
夏芽みかん
ファンタジー
生まれながらに強大な魔力を持ち、聖女として大神殿に閉じ込められてきたレイラ。
けれど王太子に「身元不明だから」と婚約を破棄され、あっさり国外追放されてしまう。
「……え、もうお肉食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?」
追放の道中出会った剣士ステファンと狼男ライガに拾われ、冒険者デビュー。おいしいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。
一方、魔物が出るようになった王国では大司教がレイラの回収を画策。レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。
※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。
【2025.09.02 全体的にリライトしたものを、再度公開いたします。】
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~
御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。
十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。
剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。
十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。
紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。
十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。
自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。
その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。
※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。