28 / 30
第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女
第63話 フルボッコ
しおりを挟む
「セマルグルさん。そろそろ、止めてあげて」
「む? ふむ……どうしたものか」
「デザート作ってあげるから」
「むぅ……仕方がない。セシリアに免じてそろそろ許してやるが、今後二度と恩を仇で返すような事をせぬようにな!」
最後にセマルグルさんがタックルして、攻撃魔法を放った人がゴロゴロゴロと、遠くへ転がって行く。
だ、大丈夫かな? ……あ、フラフラだけど、起き上がった。なんだかんだ言って、セマルグルさんはちゃんと手加減してくれていたみたいね。
「あ、あの、この度は我らの族長が申し訳ありませんでしたっ!」
「うむ、分かれば良いのだ」
「は、はいっ!」
周りに居た人たちがセマルグルさんに謝り、一部の人が吹き飛ばされた人の許へと駆け寄って行く。
「先程から何なのじゃ? せっかくのセシリアの旨い魚がマズくなるではないか」
「おかーさん!? おさかなをたべてる、ばあいじゃないよっ! おねーちゃんが、へんなひとに、かこまれてたんだからっ!」
セマルグルさんのおかげか、マヘス君も威嚇を止め、男の子の姿に戻って居た。
というか、バステトさんは今の今まで、魚料理を食べていたのね。
まぁ作った私としては、嬉しいんだけどさ。
「変な人……むっ!? この匂い……お主らは、昨晩この家に向かって攻撃していた奴らではないかっ! 今度は直接攻撃かっ! マヘスとセシリアに指一本触れてみよ! 絶対に許さぬのじゃっ!」
「え? バステトさん、どういう事!?」
「昨日の夜、マヘスを探して周囲を走っていたら、こ奴らが向こうから矢を射ったり、魔法を放ったりしておったのじゃ。なので、敵だと認め、反省させておったのじゃが……どうやら我の説教が足りなかったようなのじゃ!」
そう言って、バステトさんが猫の姿になり、ひたすら爪でひっかいていく。
「ま、待って! 実際、私たちは何の被害も受けて無いから……」
「そういう問題ではないのじゃ! そもそもマヘスやセシリアに危害を加えようとしている時点で許せぬのじゃ! 成敗なのじゃっ!」
とりあえず、あの光魔法を使っていないあたり、命を奪うような事は考えていないみたいだけど……さっき、血まみれだったのはバステトさんに爪で引っかかれたからだったのね。
「お、お待ちくださいっ! 聖女様、どうかこの御方たちを止めていただけないでしょうか!」
「あの、私はさっきから止めようとしているんだけど……」
「我らはダークエルフの民です。名前こそ、闇っぽく思えますが、決して悪しき存在ではないのです! ただ、昨晩の事は向こうの族長からの命令でして、仕方なく従わされたのです! 我々に聖女様やグリフォン様へ攻撃する意思はございません!」
あ、さっきの人って族長だったんだ。
なるほど。上司からの命令に逆らえない気持ちはよく分かる。
私も日本で働いていた時、私の意見なんて一切聞いてもらえずに、何度も何度も異動させられて大変だったからね。
なので、何とかバステトさんに止めてもらうようにお願いしようとしたんだけど、
「なるほど。つまり、先程の者が全ての元凶か」
セマルグルさんが怒りながら空を飛び……今度は族長さんの後ろから思いっきり体当たりをして、私の傍へ族長さんが吹っ飛んで来た。
「さぁセシリアに謝るのだ。そして、どうしてこのような事をしたのかを正直に話すのだ」
逃げ出さないようにするためなのか、セマルグルさんが族長さんの背後に。ヴォーロスとマヘス君が私を守るように正面に居て、バステトさんがいつでも飛び掛かれる……といった感じで構える。
だ、大丈夫かな? 流石にこの状況でさっきみたいに変な事はしないよね?
攻撃された理由は私も知りたいので、ちょっとドキドキしながら、族長さんが口を開くのを待つ事にした。
「む? ふむ……どうしたものか」
「デザート作ってあげるから」
「むぅ……仕方がない。セシリアに免じてそろそろ許してやるが、今後二度と恩を仇で返すような事をせぬようにな!」
最後にセマルグルさんがタックルして、攻撃魔法を放った人がゴロゴロゴロと、遠くへ転がって行く。
だ、大丈夫かな? ……あ、フラフラだけど、起き上がった。なんだかんだ言って、セマルグルさんはちゃんと手加減してくれていたみたいね。
「あ、あの、この度は我らの族長が申し訳ありませんでしたっ!」
「うむ、分かれば良いのだ」
「は、はいっ!」
周りに居た人たちがセマルグルさんに謝り、一部の人が吹き飛ばされた人の許へと駆け寄って行く。
「先程から何なのじゃ? せっかくのセシリアの旨い魚がマズくなるではないか」
「おかーさん!? おさかなをたべてる、ばあいじゃないよっ! おねーちゃんが、へんなひとに、かこまれてたんだからっ!」
セマルグルさんのおかげか、マヘス君も威嚇を止め、男の子の姿に戻って居た。
というか、バステトさんは今の今まで、魚料理を食べていたのね。
まぁ作った私としては、嬉しいんだけどさ。
「変な人……むっ!? この匂い……お主らは、昨晩この家に向かって攻撃していた奴らではないかっ! 今度は直接攻撃かっ! マヘスとセシリアに指一本触れてみよ! 絶対に許さぬのじゃっ!」
「え? バステトさん、どういう事!?」
「昨日の夜、マヘスを探して周囲を走っていたら、こ奴らが向こうから矢を射ったり、魔法を放ったりしておったのじゃ。なので、敵だと認め、反省させておったのじゃが……どうやら我の説教が足りなかったようなのじゃ!」
そう言って、バステトさんが猫の姿になり、ひたすら爪でひっかいていく。
「ま、待って! 実際、私たちは何の被害も受けて無いから……」
「そういう問題ではないのじゃ! そもそもマヘスやセシリアに危害を加えようとしている時点で許せぬのじゃ! 成敗なのじゃっ!」
とりあえず、あの光魔法を使っていないあたり、命を奪うような事は考えていないみたいだけど……さっき、血まみれだったのはバステトさんに爪で引っかかれたからだったのね。
「お、お待ちくださいっ! 聖女様、どうかこの御方たちを止めていただけないでしょうか!」
「あの、私はさっきから止めようとしているんだけど……」
「我らはダークエルフの民です。名前こそ、闇っぽく思えますが、決して悪しき存在ではないのです! ただ、昨晩の事は向こうの族長からの命令でして、仕方なく従わされたのです! 我々に聖女様やグリフォン様へ攻撃する意思はございません!」
あ、さっきの人って族長だったんだ。
なるほど。上司からの命令に逆らえない気持ちはよく分かる。
私も日本で働いていた時、私の意見なんて一切聞いてもらえずに、何度も何度も異動させられて大変だったからね。
なので、何とかバステトさんに止めてもらうようにお願いしようとしたんだけど、
「なるほど。つまり、先程の者が全ての元凶か」
セマルグルさんが怒りながら空を飛び……今度は族長さんの後ろから思いっきり体当たりをして、私の傍へ族長さんが吹っ飛んで来た。
「さぁセシリアに謝るのだ。そして、どうしてこのような事をしたのかを正直に話すのだ」
逃げ出さないようにするためなのか、セマルグルさんが族長さんの背後に。ヴォーロスとマヘス君が私を守るように正面に居て、バステトさんがいつでも飛び掛かれる……といった感じで構える。
だ、大丈夫かな? 流石にこの状況でさっきみたいに変な事はしないよね?
攻撃された理由は私も知りたいので、ちょっとドキドキしながら、族長さんが口を開くのを待つ事にした。
235
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?
向原 行人
ファンタジー
第三王子が趣味で行っている冒険のパーティに所属するマッパー兼食事係の私、アニエスは突然パーティを追放されてしまった。
というのも、新しい食事係の少女をスカウトしたそうで、水魔法しか使えない私とは違い、複数の魔法が使えるのだとか。
私も、好きでもない王子から勝手に婚約者呼ばわりされていたし、追放されたのはありがたいかも。
だけど私が唯一使える水魔法が、実は「飲むと数時間の間、能力を倍増する」効果が得られる神水だったらしく、その効果を失った王子のパーティは、一気に転落していく。
戻ってきて欲しいって言われても、既にモフモフ妖狐や、新しい仲間たちと幸せな日々を過ごしてますから。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
婚約破棄されたので聖獣育てて田舎に帰ったら、なぜか世界の中心になっていました
かしおり
恋愛
「アメリア・ヴァルディア。君との婚約は、ここで破棄する」
王太子ロウェルの冷酷な言葉と共に、彼は“平民出身の聖女”ノエルの手を取った。
だが侯爵令嬢アメリアは、悲しむどころか——
「では、実家に帰らせていただきますね」
そう言い残し、静かにその場を後にした。
向かった先は、聖獣たちが棲まう辺境の地。
かつて彼女が命を救った聖獣“ヴィル”が待つ、誰も知らぬ聖域だった。
魔物の侵攻、暴走する偽聖女、崩壊寸前の王都——
そして頼る者すらいなくなった王太子が頭を垂れたとき、
アメリアは静かに告げる。
「もう遅いわ。今さら後悔しても……ヴィルが許してくれないもの」
聖獣たちと共に、新たな居場所で幸せに生きようとする彼女に、
世界の運命すら引き寄せられていく——
ざまぁもふもふ癒し満載!
婚約破棄から始まる、爽快&優しい異世界スローライフファンタジー!
追放された悪役令嬢、規格外魔力でもふもふ聖獣を手懐け隣国の王子に溺愛される
黒崎隼人
ファンタジー
「ようやく、この息苦しい生活から解放される!」
無実の罪で婚約破棄され、国外追放を言い渡された公爵令嬢エレオノーラ。しかし彼女は、悲しむどころか心の中で歓喜の声をあげていた。完璧な淑女の仮面の下に隠していたのは、国一番と謳われた祖母譲りの規格外な魔力。追放先の「魔の森」で力を解放した彼女の周りには、伝説の聖獣グリフォンをはじめ、可愛いもふもふ達が次々と集まってきて……!?
自由気ままなスローライフを満喫する元悪役令嬢と、彼女のありのままの姿に惹かれた「氷の王子」。二人の出会いが、やがて二つの国の運命を大きく動かすことになる。
窮屈な世界から解き放たれた少女が、本当の自分と最高の幸せを見つける、溺愛と逆転の異世界ファンタジー、ここに開幕!
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する
鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】
余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。
いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。
一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。
しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。
俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。
追放悪役令嬢、辺境の荒れ地を楽園に!元夫の求婚?ざまぁ、今更遅いです!
黒崎隼人
ファンタジー
皇太子カイルから「政治的理由」で離婚を宣告され、辺境へ追放された悪役令嬢レイナ。しかし彼女は、前世の農業知識と、偶然出会った神獣フェンリルの力を得て、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。
そんな彼女の元に現れたのは、離婚したはずの元夫。「離婚は君を守るためだった」と告白し、復縁を迫るカイルだが、レイナの答えは「ノー」。
「離婚したからこそ、本当の幸せが見つかった」
これは、悪女のレッテルを貼られた令嬢が、自らの手で未来を切り拓き、元夫と「夫婦ではない」最高のパートナーシップを築く、成り上がりと新しい絆の物語。
転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。
桜城恋詠
ファンタジー
聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。
異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。
彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。
迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。
「絶対、誰にも渡さない」
「君を深く愛している」
「あなたは私の、最愛の娘よ」
公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。
そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?
命乞いをしたって、もう遅い。
あなたたちは絶対に、許さないんだから!
☆ ☆ ☆
★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。
こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。
※9/28 誤字修正
役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く
腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」
――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。
癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。
居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。
しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。
小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。