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第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女
第64話 メインディッシュ
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セマルグルさんに問われた族長さんが、ゆっくりと口を開く。
「お前が……お前が娘を殺したからだっ! 娘を……エレンを返せっ!」
そう言って、族長さんが涙を流しながらセマルグルさんを睨む。
だけど、
「ん? 我がか?」
「そうだ! エレンを殺しておいて、のうのうと寝やがって! ここでオレが殺されたとしても、絶対にお前は許さない! 死んでも地獄から呪ってやる!」
「むう。なにを言っているのか、さっぱりわからないな」
セマルグルさんが訳がわからないと言った様子で困っている。
「あの、さっきから何やら騒がしいけれど、誰か私の事を呼んだ? バステトさんの魚の骨取りをずっとさせられていて、私は殆ど食べていない……って、ダークエルフのみんな!? こんな所で何をしているの?」
「何って、エレンを殺したグリフォンに、ダークエルフの呪いをかけているんだ。例え俺が死んでも、このグリフォンは絶対に……って、エレン!? い、生き返ったのか!?」
「生き返ったも何も、一度も死んだ事なんてないんだけど。まぁ、グリフォンさんたちが殺気立っていると、生きた心地はしないけど……って、あれ? 父上まで居たんだ」
「え、エレンっ! エーレーンーっ! 良かった……生きてる! 温かい! エレーンっ!」
「な、何っ!? 何なのっ!?」
族長さんはエレンさんのお父さんだったらしく、涙と鼻水を垂れ流しながら、エレンさんに抱きつく。
エレンさんが心底嫌そうに顔をしかめ……あー、思いっきり吹き飛ばされた。
「い、痛い……夢じゃないっ! エレンは生きていたんだっ!」
「父上。生きていたというか、そもそもどうして私が死んだと思ったの?」
「いや、だって……そこのグリフォンに空高くから落とされたって聞いたからさ」
「あー、あの時の話ね。あれは……確かに死ぬかと思ったわね」
聞けば、セマルグルさんがエレンさんを咥えて上空へ舞い上がり、誤って落としてしまったのを、ダークエルフの一人が見ていたらしい。
まぁあの高さから落ちれば、亡くなったと思ってしまっても仕方ないかも。
「むっ!? あの時の話か。だが、落としてしまったのはともかく、ちゃんと助けたではないか」
「メチャクチャ怖かったですけどね」
「だがあれは、そもそもお主がセシリアに無礼な態度を取ったからではないか」
「そ、それはそうですけど……」
セマルグルさんとエレンさんが、あの時の話をしていると、突然誰かのお腹がぐーっと鳴く。
「あ、そうだ! メインディッシュを出そうとしていた所だったんだ。せっかくなので、みんなで食べましょう。沢山あるから、どうぞ」
すっかり忘れかけていた鶏肉料理をオーブンから取り出すと、具現化魔法で大きなテーブルを作って、その真ん中へ。
人数分の食器も作り出すと、それぞれのお皿へ鶏肉を乗せていく。
「むぅ。我の分が減ってしまうではないか」
「そうなのじゃ。妾もセシリアの料理を食べたいのじゃ。先程の魚料理はもの凄く美味しかったのじゃ」
「まぁまぁ。これは簡単に、しかもすぐ出来るから。すぐ次を作るわね」
みんなに配り終わったら、私はすぐにおかわりを作り始める。
その一方で、鶏肉を口にしたダークエルフさんたちや、エレンさんの表情が変わった。
「こ、この味と風味は、我々のミソっ!?」
「いや、確かにミソを使っているが、それだけでは……ま、待った! この味は、まさかマヨネーズ!?」
「正解っ! 味噌とマヨネーズを混ぜた、味噌マヨネーズのソースを使った、チキンの照り焼きよ」
一応、これが私のエレンさんへの答えなんだけど……伝わったかな?
「……なんという旨さだ。まさか、ミソとマヨネーズが合うなんて、想像も出来なかった」
「私からすると、味噌もマヨネーズも、どちらも美味しい調味料なんだから、どっちを使うとかじゃなくて、どっちも使って良いと思うの」
「ぐっ……た、確かに、セシリア殿の言う通りかもしれません」
「えぇ。この料理には、味噌とマヨネーズ……どちらが欠けても作れないの。だから、みんなで仲良くしましょ?」
いがみ合わずに、手を取り合う事を選択して欲しいと伝えたけど、エレンさんが渋い顔をして固まっている。
「お主……どうするつもりなのだ? せっかくセシリアが……」
「い、いえ、もちろん仲良く致します! そう、美味しい料理があると、平和ですよねっ!」
セマルグルさんに詰め寄られたエレンさんが、若干引きつった顔で話しているのが少し引っかかるけれど、とりあえず一件落着……かな?
「お前が……お前が娘を殺したからだっ! 娘を……エレンを返せっ!」
そう言って、族長さんが涙を流しながらセマルグルさんを睨む。
だけど、
「ん? 我がか?」
「そうだ! エレンを殺しておいて、のうのうと寝やがって! ここでオレが殺されたとしても、絶対にお前は許さない! 死んでも地獄から呪ってやる!」
「むう。なにを言っているのか、さっぱりわからないな」
セマルグルさんが訳がわからないと言った様子で困っている。
「あの、さっきから何やら騒がしいけれど、誰か私の事を呼んだ? バステトさんの魚の骨取りをずっとさせられていて、私は殆ど食べていない……って、ダークエルフのみんな!? こんな所で何をしているの?」
「何って、エレンを殺したグリフォンに、ダークエルフの呪いをかけているんだ。例え俺が死んでも、このグリフォンは絶対に……って、エレン!? い、生き返ったのか!?」
「生き返ったも何も、一度も死んだ事なんてないんだけど。まぁ、グリフォンさんたちが殺気立っていると、生きた心地はしないけど……って、あれ? 父上まで居たんだ」
「え、エレンっ! エーレーンーっ! 良かった……生きてる! 温かい! エレーンっ!」
「な、何っ!? 何なのっ!?」
族長さんはエレンさんのお父さんだったらしく、涙と鼻水を垂れ流しながら、エレンさんに抱きつく。
エレンさんが心底嫌そうに顔をしかめ……あー、思いっきり吹き飛ばされた。
「い、痛い……夢じゃないっ! エレンは生きていたんだっ!」
「父上。生きていたというか、そもそもどうして私が死んだと思ったの?」
「いや、だって……そこのグリフォンに空高くから落とされたって聞いたからさ」
「あー、あの時の話ね。あれは……確かに死ぬかと思ったわね」
聞けば、セマルグルさんがエレンさんを咥えて上空へ舞い上がり、誤って落としてしまったのを、ダークエルフの一人が見ていたらしい。
まぁあの高さから落ちれば、亡くなったと思ってしまっても仕方ないかも。
「むっ!? あの時の話か。だが、落としてしまったのはともかく、ちゃんと助けたではないか」
「メチャクチャ怖かったですけどね」
「だがあれは、そもそもお主がセシリアに無礼な態度を取ったからではないか」
「そ、それはそうですけど……」
セマルグルさんとエレンさんが、あの時の話をしていると、突然誰かのお腹がぐーっと鳴く。
「あ、そうだ! メインディッシュを出そうとしていた所だったんだ。せっかくなので、みんなで食べましょう。沢山あるから、どうぞ」
すっかり忘れかけていた鶏肉料理をオーブンから取り出すと、具現化魔法で大きなテーブルを作って、その真ん中へ。
人数分の食器も作り出すと、それぞれのお皿へ鶏肉を乗せていく。
「むぅ。我の分が減ってしまうではないか」
「そうなのじゃ。妾もセシリアの料理を食べたいのじゃ。先程の魚料理はもの凄く美味しかったのじゃ」
「まぁまぁ。これは簡単に、しかもすぐ出来るから。すぐ次を作るわね」
みんなに配り終わったら、私はすぐにおかわりを作り始める。
その一方で、鶏肉を口にしたダークエルフさんたちや、エレンさんの表情が変わった。
「こ、この味と風味は、我々のミソっ!?」
「いや、確かにミソを使っているが、それだけでは……ま、待った! この味は、まさかマヨネーズ!?」
「正解っ! 味噌とマヨネーズを混ぜた、味噌マヨネーズのソースを使った、チキンの照り焼きよ」
一応、これが私のエレンさんへの答えなんだけど……伝わったかな?
「……なんという旨さだ。まさか、ミソとマヨネーズが合うなんて、想像も出来なかった」
「私からすると、味噌もマヨネーズも、どちらも美味しい調味料なんだから、どっちを使うとかじゃなくて、どっちも使って良いと思うの」
「ぐっ……た、確かに、セシリア殿の言う通りかもしれません」
「えぇ。この料理には、味噌とマヨネーズ……どちらが欠けても作れないの。だから、みんなで仲良くしましょ?」
いがみ合わずに、手を取り合う事を選択して欲しいと伝えたけど、エレンさんが渋い顔をして固まっている。
「お主……どうするつもりなのだ? せっかくセシリアが……」
「い、いえ、もちろん仲良く致します! そう、美味しい料理があると、平和ですよねっ!」
セマルグルさんに詰め寄られたエレンさんが、若干引きつった顔で話しているのが少し引っかかるけれど、とりあえず一件落着……かな?
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