婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人

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第6章 太陽の聖女と星の聖女

第236話 イナリとロレッタ

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 あの魔剣と同等の武器……そんなものが出て来たら、せっかく魔の力を封印したところなのに、再び封印し直さなくてはならなくなる。
 魔剣の時は、モニカちゃんが前の火の聖女の封印を使う事が出来たけど、今度も同じように上手くいくとは限らない。
 だから、南西にあるという魔の武器が使われる前に止めないと!
 そう思った直後、くぅっと誰かのお腹が鳴る。

「えーっと、今のはコリン……かな?」
「え? お姉ちゃん。違うよー?」
「じゃあ……」

 子狐姿のイナリに目をやると、無言で首を振られてしまった。
 もちろん私でもない……と思っていたら、恥ずかしそうにロレッタさんが頭を下げる。

「す、すみません。今のは私です。気にしないでください」
「と、とりあえず食事にしましょうか。大変な話だというのはわかりましたが、正確な場所もわからないですし、今すぐ何かが起こる訳でもなさそうですから。ロレッタさんも是非食べて行ってください」
「いえ、流石にそれは……」

 と、ロレッタさんが断ろうとしたところで、再びお腹が鳴ったので、やっぱり食べてもらう事にした。
 イナリが凄い魔力を持つ人だって言っていたけど、別に今は敵対している訳でもないし、タリアナでの件はもう水に流した話だしね。
 という訳で、久々にフランセーズの食材を使った、ポトフを作る事にした。
 野菜たっぷりで優しい味だし、温かくて、お肉も入っているからイナリも食べてくれるはず。
 煮込んでいる間にさっき買ったパンをカットして……出来上がりっ!

「お待たせしましたー!」
「わぁ! お姉ちゃん、美味しそう!」
「本当にすみません。い、いただきます……美味しいっ! しかも、食べると不思議と疲れが消えました! いえ、それどころか力が湧いてくるような……アニエスさんのお料理は凄いのですね!」

 あ……いつも通り、神水で作っているから、ロレッタさんが凄く元気になった。
 いやまぁ、それ自体は良い事なんだけど、ただでさえ魔力が凄いロレッタさんの魔力が倍になってしまって大丈夫なのかな?
 そう思った瞬間、イナリの鋭い視線を感じる。
 や、やっぱりダメだったって事!?
 そういえば、ロレッタさんはイナリの魔力を感じて、近くに居ると言っていた。
 もしかして、ロレッタさんが神水を飲んだ事で、イナリが子狐姿になっている事が見抜かれちゃったとか!?
 その直後に、イナリが念話で話し掛けてくる。

『アニエスよ……』

 ど、どうしよう。でも、水魔法の効果を解除する方法なんてわからないんだけど!
 とりあえず、イナリの指示に従うしかなち思って、無言でイナリの目を見つめていると……

『我はもっと肉が欲しいのだが。あと、野菜は減らしてくれると助かる』

 ご飯の話なのっ!?
 ロレッタさんの魔力が増えた事で、何か大変な事になるとかじゃないの!?
 けど、イナリがいつも通りなので大丈夫なのだろうと思っていたら、今度はロレッタさんから視線を感じる。
 そうだ! イナリは火の国の女王のヤルミラさんが、念話を使っているのを感じ取っていた。
 もしかして、イナリが念話を使っている事に気付いたの!?

「ろ、ロレッタさん。何か……」
「はい。非常に言い難い事なのですが……」
「な、何でしょう」
「お、おかわりをお願いします」

 そう言って、ロレッタさんが空になった器を申し訳なさそうに差し出してきた。
 うん。私が勝手にいろいろと考え過ぎていたみたい。
 ご飯はみんなで楽しく食べましょうか。
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