婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人

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第6章 太陽の聖女と星の聖女

第259話 厄介な相手

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「あれ? あの人、突然動かなくなっちゃいましたね」
「そ、そうね。ね、寝不足だったんじゃないかな? 寝ているみたいだし」
「えぇ……お姉ちゃん。そんな事あるかなー?」

 目の前で私たちを探していた男性をイナリが眠らせたけど、それを知らないロレッタさんとコリンが困惑している。
 まぁ普通に考えたら、突然立ったまま眠るなんて有り得ないしね。

「それより、今の内に場所を変えましょう。仲間が戻って来てあの人を見つけたら、この辺りをくまなく調べるでしょうし」
「……あの、流石に罠ではないでしょうか?」
「僕もそう思う。いくらなんでも、変だよー」

 えぇ……二人共、動いてくれないのっ!?
 結局、物陰に隠れたまま動く事が出来ずに、先程の男性が戻って来てしまった。

「……おい、何があった」
「……」
「……これは、闇魔法か」

 えぇ……何をどうしたかは分からないけど、イナリの力に気付かれたって事なの!?
 どうしよう。確か、相手は全部で三人って言っていたよね?
 もう一人がどこに居るのか分からないけど、二人で連携されると厄介だから、ここで動きを封じておくべき?
 ……って、イナリが居ないっ!?

「えっ……これは一体!?」
「あ……もしかして!」

 そう思った時には、ロレッタさんとコリンが声を上げていた。
 すぐ目の前に男性が居るのに、声を出さない方が良いんじゃないかなと思ったんだけど……いつの間にか、その男性の姿が消えている。
 ……ううん、違う。消えたなじゃなくて、さっきまで男性が居た場所に、真っ黒な箱が置いてある。
 たぶん、これもイナリの力だ。確か、具現化魔法って言っていたっけ。
 黒い箱を出して、さっきの人を閉じ込めたんだ。

『やはり、面倒な相手だったな。精神操作だと分かるや否や、抵抗魔法を使った。ひとまず動けぬようにはしたが……早めにもう一人も無力化しておきたいな』

 精神操作の抵抗魔法!?
 よく分からないけど、イナリに厄介な相手とか、面倒な相手って言わせるのって、実は凄い事よね?
 詳細は後で聞くとして、今はイナリの言う通り、もう一人を何とかしなきゃ。

「アニエスさん。突然黒い何かが先程の男性を飲み込んでしまったのですが」
「ロレッタさん。それよりも、今はもう一人を何とかしましょう」
「そうだよー! きっとあの黒いのは大丈夫だよー。イナ……その、僕たちの味方だよー」

 ロレッタさんは仕方がないとして、コリンはイナリの力だって気付いたみたいね。
 コリンも私の意見に同意してくれるようになったので、ロレッタさんを促して場所変える。

『ふむ。もう一人は外……中庭にいるな』
「一旦、屋敷から出てみましょうか。その、広い場所の方が動き易いし、月明かりでもう少し明るいと思うし」

 さっきの場所を離れると、イナリからもう一人位置について話があったので、二人を誘導するして私たちも屋敷の外へ。
 でも最初に通った大きな扉から中庭を見渡してみたけれど、人の姿は見当たらない。

『アニエス。周囲に氷の壁を出しておくのだ。我の具現化魔法を警戒しているのだろう。絶えず場所を変えながら、こちらの様子を伺っておる』

 えっ!? 私には移動しているなんて全く分からないんだけど。
 足音とかも聞こえないし……とはいえ、イナリのアドバイスに従って氷の壁を三方向に出しておく。
 その直後、カンッと何か硬いものがぶつかる音がしたかと思うと、氷の壁の前に、黒く塗られたナイフが落ちていた。
 えぇぇぇ……どこから投げてきたのっ!?
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