婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人

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第6章 太陽の聖女と星の聖女

第260話 厄介な相手の目的

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『そこか』
「ぐはっ!」

 氷の壁にナイフが刺さりって私が驚いている間に、イナリが投げた人をどうにかしたみたい。
 どうしたのかは気になるけど、ロレッタさんがいるので聞けずにモヤモヤしていると、イナリが説明してくれた。

『アニエスの氷の壁にナイフが阻まれ、此奴が動揺したお陰で捕らえる事が出来た。礼を言う』

 捕らえたって事は、命を奪ったりした訳ではないよね?
 そんな事を考えてると、子狐姿のイナリが、ついて来いと言わんばかりに前へ歩いて行き、私たちを振り返る。

「ロレッタさん、コリン。もう大丈夫みたいだから、行ってみましょう」
「えっ!? は、はい……」

 戸惑いながらもロレッタさんが私とコリンについて来る。
 イナリについて歩いて行くと、荒れた花壇の裏に黒ずくめの男性が立っていた。
 だけど、私たちに気付いた様子はなく、茫然と虚空を眺めている。

『此奴も二人目と同じく精神操作に対する抵抗魔法を使用しておったが、先程の動揺の隙に半分意識を奪っておる。この状態はあまり長時間保てぬが、今なら何でも質問に答えるだろう』

 なるほど。ひとまず、イナリの力が効いている内に、この人たちの事を聞かないといけないという事ね。

「えっと、貴方たちが教会の揺れを起こしたの?」
「……そうだ」
「――っ!? アニエスさん、これは!?」

 この男性が棒立ちのまま、私の問いに答えているのが不思議なのだろう。
 ロレッタさんが驚いているが、いつイナリの力の効力が切れるか分からないので、今は質問を優先する。

「どうやって、あんなに大きな教会を揺らしたの?」
「火薬を使った。魔法とは違う、科学の力だ」

 ……火薬? 科学? 一体、何の事だろう。ちょっと聞いてみたい気もするけれど、後回しにしよう。

「どうしてそんな事をしたの?」
「陽動だ。警備の目を外に……我らに向ける為」
「えっ!? じゃあ、まだ教会に仲間がいるのっ!?」
「いや、既に目的は達した。全員、離脱済みだ」

 ど、どういう事!? 教会を襲う目的……まさか、太陽の聖女であるビアンカさん!?
 万が一ビアンカさんに何かあったらどうしようと考えてしまい、言葉が出ない。
 私たちはこんな事をしている場合なの!?
 急いで神水を……

『アニエスよ。落ち着くのだ。太陽の聖女の魔力は何の変化も無い。何処かへ連れて行かれたりもしれおらぬ』

 私の内心を察してくれたイナリの言葉で、少し落ち着く。
 良かった。けど……じゃあ、教会で何をしていたんだろう。

「貴方の仲間たちが教会を襲った目的は?」
「教会から、鍵を得る為だ」
「鍵? 何の?」
「太陽の神殿の宝物庫の鍵だ」

 太陽の神殿? それって、ファイアー・ドレイクによって崩壊した、前の聖都にあった神殿の事!?
 続けて質問しようとしたら……突然、男性が苦しみだした。

「うぐっ……」
『アニエスよ。精神操作の効果が切れる。完全に効果が切れてからしか掛け直しが出来ぬ故、一旦離れるのだ』
「ロレッタさん! コリン! こっちへ!」

 イナリの忠告に従って三人で離れると、イナリが男性を黒い箱で包もうとして……

『アニエス! マズい! もっと離れるのだ! 早く我の背に!』

 イナリが大きな狐の姿になると、ロレッタさんを咥えてその場に屈む。
 私がコリンと共にイナリの背に乗ると、大きく跳躍した直後、先程男性がいた場所に白い光の柱が上がった。

「あれは、以前に私たちを襲った……」
『うむ。何かあれば自爆魔法を使う、厄介な相手だ』

 あ、厄介ってそういう意味だったのか。
 夜中だというのに眩しい光が生まれ、物凄く目立っていたので、私たちはひとまず屋敷から離れる事にした。
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