婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人

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第6章 太陽の聖女と星の聖女

第285話 尋問

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「なっ!? あの距離をどうやって……」
「それよりこの男、我らを片腕で軽々と……」
「そんな事はどうでもよい。お前たちが、神殿から盗みを働いた賊で間違いないな?」

 イナリが二人の黒ずくめの腕を、それぞれ片手で捻り上げる。
 関節がそれ以上曲がらないってくらいに曲げられているけど、逃げられないようにしているだけで、折ったりした訳では無さそうで良かった。
 だけど黒ずくめの二人は、イナリの質問に答えず、口を噤む。

「ふむ。我が手を出さずにいてやっている内に話した方が身のためだぞ? 二人いるのだから、片方は殺しても問題ないのだから」
「――っ!?」
「こ、殺したければ殺すがよい。我らはその程度の覚悟など、とっくに出来ている」

 片方の男性は血の気が引いていたけれど、もう一方の男性は顔色を変えずに平然としている。
 その様子を見たセルジオさんが、イナリの許へ。

「すまないが、その二人は我々騎士団に任せてくれないか?」
「……ふむ。本来の役割の者たちへ任せるとするが……時間がない事は理解しているのか?」
「あぁ、大丈夫だ。我らポートガの騎士団は、賊の口を割らせる訓練もしているからな」
「そうか。分かっているなら構わない。手短に頼む」

 イナリがセルジオさんたちに黒ずくめの二人を引き渡し、騎士団の方たちが村の奥へと向かって行く。

「アニエスさん。これから、少々手荒い事をします。すみませんが、こちらでお待ち願います」
「えっと……ちゃんと言うべき事を話したら、このポーションを飲ませてあげてください」
「アニエスさんはお優しいのですね。投獄したら、飲ませるようにしますね」

 そう言って、セルジオさんが騎士さんたちが向かった方へと走って行く。
 向こうで何が起こっているのか想像したくもないけど、魔の力が関わっているので、止める事も出来ず……コリンやイナリ達と無言のまま待つ事に。
 暫くすると、セルジオさんが急いで戻ってきた。

「お待たせしました。急いで移動します!」
「あの、どちらへ……」
「詳しくは馬車の中で! あの二人は囮です! 奴らは海へ向かおうとしていなかったんです!」

 どういう事だろうかと思いながらも、セルジオさんの言う通り馬車へ乗ると、北に向かって走り出す。

「えっと、囮というのは?」
「すみません、やられました。賊が逃げるのであれば、海だと思い込んでいた逆を突かれ、陸路でイスパナへ逃げる計画だそうです」
「それは間違いないのでしょうか」
「えぇ。詳しい事は言えませんが、確実に真実を引き出す方法を使っていますので」

 セルジオさんの言う方法がどんなのは分からないけれど、一つ言える事がある。
 騎士団の詰所に連れて行かれ、それぞれ話を聞かれる事になった時、早めにセルジオさんが私の言い分を聞いてくれて本当に良かった。
 盗まれたものの事を本当に知らない私たちが、無理矢理何かを聞きだされるような事をすれば、間違いなくイナリが怒っていたはずだから。

「それで……魔槍を盗んだ目的は何だったのだ? 当然聞いたのだろう?」
「あぁ。随分と大きすぎる話で、何と言って良いか分からないが……奴らは自分たちの国を作ろうとしているようだ」
「国っ!? 一体何を考えて……」

 イナリの質問に対するセルジオさんの言葉を聞いて、思わず叫んでしまったけど……トリスタン王子は本当に何をする気なのよっ!
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