婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人

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第6章 太陽の聖女と星の聖女

第294話 水魔法の使い方

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 妖精の杖を使い、燃えている家に一軒一軒水を飛ばしていたけど、もっと良い方法を思い付き、水を天高く登らせる。
 空に伸ばしたホースで水を撒くように操作すると、この旧聖都一帯に雨が降っているようかのようになった。

「アニエスさん! 流石です! これなら、新たに燃える家がなくなるかと!」
「ロレッタさんのおかげよ。星占いから着想を得たの」

 ロレッタさんと星占い。星占いといえば、空。という訳で、空から雨のように水を降らせる事を思い付き、広範囲に水を蒔いた。
 これなら、火が点き難くなるはずだ。
 それから暫く雨を降らせ続け、火の手が上がる事があれば、その周辺に集中的に水を蒔く。
 そしてついに、家が燃える事がなくなった。

「お姉ちゃん! みんなで炎の剣を持っている人を捕まえたよ!」
「コリン、頑張ったわね」
「お姉ちゃんのおかげだよー! お姉ちゃんが雨を降らせてくれたおかげで、火が点かずにオロオロしていたから」

 そう言って、コリンがローブでぐるぐる巻きになった男性を連れてくる。
 その隣に、この旧聖都の住人の男性が、紅い宝石があしらわれた剣を手にしているのだけど、これが火が出る剣なのだろう。

「薬師さん、コリン君。この剣はどうすれば……」
「すみません。今、まだ違う場所でこの街を……いえ、この国を守る攻防が繰り広げられているんです。私たちはそちらへ行くので、この人と剣を見張っておいてもらえませんか?」
「わ、わかった! 詳しい事は知らないが、何か大きな事が動いているんたな? 任せてくれ!」

 街の人にこの場を任せると、私たちはイナリの所へ。
 両脇を建物に囲まれた、神殿へ上がる階段へ戻ってくると、イナリの姿がない。
 その代わり、黒ずくめの人が何人か倒れていた。

「ば、化け物だ……あんなの聞いてない」
「俺たちは何てものにケンカを売っていたんた」

 倒れている人たちがブツブツ言っているけど、命に別状はなさそうだ。
 たぶんたけど、イナリが戦闘の姿……妖狐の姿になったんじゃないかな。
 それなら、風で押し戻すとか、そもそも無理だと思うし。
 ひとまず階段を登って先へ進むと……居たっ!
 人の姿のイナリとトリスタン王子が対峙しているっ!

「ちっ……やっぱり貴様は化け物だったではないか! これまでの俺にかけた濡れ衣について、公式に謝罪してもらおうか」
「ふむ。自ら選択した愚行については、我の知ったところではないな」
「何だとっ!? 貴様とアニエスのせいで、俺は地獄を見てきたんだ! だから……俺は俺の国を作るっ!」

 トリスタン王子がよくわからない事を口走っているのを無視して、イナリの元へ。

「イナリ。どういう状況なの?」
「その様子だと、街は大丈夫なようだな。……さて、アニエス。奴の手を見てみよ」
「緑色の宝石があしらわれた剣があるわね」
「うむ。こやつ、まず槍を何処かに隠しておるのだ。そして魔の力の影響か、精神支配の力も効かぬ。殺してしまうのは容易だが……」

 イナリが本気を出したからか、既に決着は着いていそうなのに、面倒な事になっているようだ。
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